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271.一つが終わって次の地へ

 一晩お世話になった後、俺たちは狼獣人の集落を後にすることになった。

 集落の外れ、最初にゾミルたちが迎えに来てくれたところまで、今日はゼルミーシャも見送りに来てくれた。あまり無理するなよ、と思うんだけどまあ、他の狼さんが背負ってきてくれたみたいだからいいか。


「では、引き取りに来ていただけ次第、ゾミルを我らとの連絡役としてお預けいたします。何用かございますれば、ぜひ使うてくだされ」

「ありがとう。協力に感謝するよ、ゼルミーシャ」

「いえ。前の戦より長き時を経て、また我らが神にお仕えできることを光栄に思います」


 族長ゼルミーシャがそんなことを言うってことは、少なくともこの狼獣人の集落では俺が帰ってくるのを待っていてくれたってことか。一応期待されてるんなら、俺も頑張らないとな。最低限、俺を信仰してるからって迫害されることがないように、くらいは。


「ゾミル、これよりはコータ様のため、身を粉にして働くのですよ。良いですね」

「はい、もちろんです族長。ワタシはコータ様の狼でございますから」


 そうして、付き添いというかここまで自分を背負ってきてくれた娘に対する指示と、それへの返答。

 ……何ていうかさ、こっちの世界ってこういう人多くね?




 ゾミルに気を吹き込んで下僕にした瞬間、彼女は足元にひざまずいて言ったんだよね。


「ワタシ、ゾミルはコータ様に誠心誠意お仕えいたします。狼ですが、犬とお呼びください」

「えー」


 自分で犬って言っちゃってる通り、尻尾が飼い主さんラブーみたいな感じでぱったぱったと振られている。

 うん、露骨に犬なんだけど見た目。でも、犬って呼ぶのはおかしいので一応、反論しておこう。


「いや、他に犬獣人いるだろ。ややこしくなるから狼は狼を名乗ってください」

「はい、コータ様がそうおっしゃるのであれば」


 即答かよ。いやいいんだけど。

 で、その晩は結局狼娘をモフりつつおやすみなさい、と。さすがにこの世界に来てだいぶ経ってるから匂いとかも慣れてるし、もふっとしがみついても特に問題はなかった。




 まあ、そういうこともあってゾミルは、俺の配下兼狼獣人集落との連絡役として北方城に入ることになった。他にも数名、狼獣人を連れて行く許可を族長からもらっている。一人じゃやっぱり大変そうだし、この子じゃなあ。

 ただ、この後俺たちは別の用事もあるのでひとまず、ゾミルたちは俺たちが戻ってくるまでここで待機なり準備なりをしてもらうことにしている。城に移るってことは生活拠点をそっちに移すってこと、つまりは引っ越しだからな。

 というわけで、俺たちはひとまず狼獣人の集落を離れた。ここからは、ミンミカと二人スティの背中に乗って移動することになっている。シーラは飛べるから、万が一何かあっても大丈夫だろうしさ。


「さすが、コータちゃまですねっ。ゾミルさん、すっかりコータちゃまラブラブですもん」

「うーん……」


 しかしラブラブて、言い方ってものがあるだろうミンミカさんや。いや、下僕だ何だ言われるよりは平和的な言い方だけど。


「効果あるのは分かってたんだけど、たまに変な方向に行くやつがいるんだよなあ」

「そういえばネッサ村長、あの後どうなったのでしょうね」


 並んで歩いているシーラが、一番変な方向に行っちゃったやつの名前を出してくる。やっぱり、お前さんでもそこ思い出すよな。


「ネッサ村長?」

「どんなひとですかー?」

「ファルンやシーラ、カーライルなら知ってる。後で聞いてみてくれ」

「承知しました」

「わっかりましたー」


 真面目な顔で頷いてくれたスティとミンミカだけど、実際に彼女の話聞いたらどう思うことやら。だってなあ、どえすとみせかけてどえむ、なおばちゃんの話だもんなあ。

 ぶっちゃけ、ゾミルはあれよりまし、と言うだけの話でさ。

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