263.北のお城のニューフェイス
「ただいま戻りました」
早速飛び出していったルッタが戻ったのは、十日ほど経ってからだった。どこまで回ったのか知らないけど、結構早いなと思う。
俺の前にひざまずいて、手っ取り早く報告をしてくれる。
「報告書は後々上げさせていただきますが。我が鳥人族が利用しておりました砦が三つほど、すぐにでも利用可能な状態でございました」
「あ、マジ?」
「はい。現在でもコータ様を奉じている鳥人たちが、密かに手入れをしてくれておりましたので」
「そりゃありがたいな」
そっか、今でもマーダ教側にいてくれてる鳥人の皆のおかげなのか。機会を見てお礼なり何なり、ちゃんとしてやらないとな。
ところでルッタ、後ろにちょこんとかしこまっている小柄な黒髪黒翼の子はどちらさんだ?
「それと、我が配下にと望む一族がおりましたので、代表してこの者を連れてまいりました」
「フレイナと申します。燕でございます」
「へえ。フレイナか、燕なら飛ぶのは早いんだろうな」
「はい! 我が一族は手紙などの情報を届ける役目を、アルニムア・マーダ様より仰せつかっております!」
めちゃくちゃ明るい声で、そのフレイナという少女は胸を張った。うん、さすがにぺたんこだな、俺とどっこいで。
それはともかく、ネットどころか電話も無線もない世界でそういう役目の一族がいる、ってのはありがたいな。しかも、その役目言いつけたの昔の俺かよ。偉いな、俺。
「今はコータと呼んでもらっているんで、お前もそう呼んでくれ。いいな、フレイナ」
「はい、ありがとうございます」
「それと、手紙届ける役目なんならちょうどいい。今後はお前と、お前の一族に働いてもらうことになると思う。頼むよ」
「はいっ!」
あ、ものすごーく目をきらきらさせてる。一応俺の配下ってことになるわけだし、その俺から直接頼むとか言われたら……嬉しいんだろうな、うん。
「あ、あの」
「ん?」
フレイナは、まだなにかほしいのか何なのか。ひどく期待に満ちた目でこっちを見ている。はて、何じゃこれは、とルッタに視線を向けてみる。お前が連れてきたんだから、考えてることくらい翻訳しやがれ。
「……その。フレイナは、ぜひコータ様に精気をお捧げしたいと」
「そっちかよ」
「は、はい。ぜひっ」
翻訳されてがくっと顎が落ちた。えーと、要するに一族代表して俺に吸われに来たわけですかこの娘っ子は。
そんなにわくわくされても、単に疲れるだけだぞ? いやまあ、向こうからご飯が来てくれたってことで遠慮する必要はないか。
どっちみち、必要なのは必要だし。
「……分かった。後で部屋に来てくれ」
「ありがとうございますっ!」
「それまでは客間で休んでいてくれ。ルッタも休め。カーライル、案内を」
「は、承知いたしました」
実はしっかり俺の横にいたカーライルに、二人の案内を頼む。
俺を復活させてくれた神官だし、なんだかんだで保護者っぽいしということでこういうお役目をお願いしている。うっかり野郎が何かしてこようとしたら、時間稼ぎにはなるしな。……シーラだと室内壊しそうだから、うん。
にしても、フレイナか。燕っつーより雀じゃね? あのキャラ。




