259.この先どうなることだろう
「あのう、コータ様」
話を聞いていた中で、シーラがそっと手を上げた。はい、ルシーラットくん、何かな。
「囚われていた僧侶の中で万が一こちらに投降すると申し出があった場合は、いかがなされますか」
「あ、そりゃ俺が何とかする。さすがに僧侶だとさ、ちょっと怪しいもんな」
うん、さすがにそれはそのまま受け入れるのは無理。なので、俺が気を吹き込んで下僕にしちまうのが一番問題がないだろう。もしその中にシーラみたいな元こっち側の人物がいれば、もやを引きずり出すこともできるしな。
「まあ、わたくしにもさらにお仲間ができるのですね」
「この中だと、俺の下僕なのはお前だけだもんな。ファルン」
「はあい」
そうなんだよねえ。
今一緒に旅してるメンバーで、俺の『配下』じゃなくて『下僕』なのはファルンただ一人。まあ、他にも下僕はいるんだけど旅には連れてきてないよなあ。ネッサとか今何やってんのかな、あのどえむ村長。
「そういえばコータ様、結構あちこちで僧侶を下僕にしておられますね」
「便利なんだよなあ、マール教の教会ネットワーク。必要な情報はすぐ手に入るし、ファルンがある意味身分証明になってくれてるから向こうも疑わないし」
カーライルに言われて、そのメリットをざっと挙げる。デメリットといえば数増やすことでマール教側に俺のことがバレる可能性が増える、くらいだけど一応、バレたら忘れろって命令してあるからなあ。その命令、どこまで利くのかはわからないけどさ。
あと、僧侶を下僕にするのは全員女性だからやりやすい、ってのもある。
「個人的に女の子しか吸いたくないんでアレなんだけど、おかげでマール教に食い込める」
「ぼく、おすですよ」
「だからお前は吸ってねえだろうが、アムレク。グレコロンは最大級の例外だ」
ほんと、最大級の例外。何しろ、奴自身が俺と同じ能力持ちだったからな。こっちが吹き込まなけりゃ、逆に俺があいつの下僕にされて……って、邪神が人間の下僕にされるもんなのかね?
「僭越ながら、コータ様が女性を狙うことになっていて正直ほっといたしました」
唐突に、ルッタがそんなことを言ってきた。スティも横で、うんうんと頷いている。おい、何でだ。
「俺といたしましても、コータ様が殿方と夜を共にされていた頃はそのー」
「……うるさかった、とかいう?」
『はい』
あ、二人揃って大きく頷かれた。あとジランド、コングラ、我慢しきれず吹き出したの見えてるからな。
とはいえ、ほんとごめんなさい、まるっきり覚えてないけど。
「こ、今後は気をつける」
「まあ、いまのコータちゃまはこんなにちっちゃくてかわいいですし、こうびとかだいじょうぶだとおもうですけど!」
「交尾言うなよな。確かに変わりゃしねえが」
思わず突っ込んではみたものの、違いはないんだよなあと微妙に納得する。そりゃ、ミンミカにすれば交尾イコール夜の営みだもんなあ。まあ、要するにやってるわけだし。
とはいえ、今の俺に男をベッドに連れ込む趣味はねえ。そこだけははっきりしてるからな、お前ら。




