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実は異世界の神様だったらしい俺。それも邪神で少女神  作者: 山吹弓美
十四:メイヒャーディナルの峠
254/432

253.一体どれだけぶっこんだ

「んぐっ!? んふ、んんんんんっ」

「動くな。ここは崖の途中、危ないぞ」

「んふっ」


 まあ、いきなりキスされたらもがくよな、ルッタ。もっとも、スティがしっかり固定してくれたから大丈夫っぽいけれど。

 で、そのまま軽く吸ってみるとすぐに見つかった、白いもやの感触。そいつをしっかり歯で噛んで、そのまま外へ引きずり出す。


「んぐうううっ!」

「うわ!」

「ふへっ?」

「っ!」


 自分の口から変なモン引きずり出されたルッタはともかく、スティや俺やシーラまで驚いたよ。

 いやだって、本来これで出てくるのは白いもやなんだけど、今回は何かまだらにグレーに染まってる上に量がやたら多い。ぶっちゃけ、俺が包み込まれてもおかしくないレベル。

 ルッタの中にどんだけ流し込みやがったマール教! とか叫んでる場合じゃねえ、このもや何とかしないと!


「……バングデスタ様!」

「ルシーラット、任せる!」

「はっ!」


 と、俺がおたおたしてる間にシーラが剣を抜いた。俺の身体は……あ、首根っこスティに掴まれてるわ、俺のほうが猫みたいだ。

 で、スティから任されたシーラは、必死に上に逃げようとするグレーのもやをあっさり追い抜いた。そうして、上から冷たい目で見下ろす。


「アルタイラ様に無礼を働いた罪、己の消滅で贖え」


 そのまま急降下、ながーく伸びたもやを上から下まで縦に真っ二つ、に切り裂いた。

 もやは一瞬だけその場に固まった後、上からザラザラという感じで消えていった。まるでなんか、砂がこぼれ落ちてくる感じ……なのを、シーラが翼を思いっきり羽ばたかせて消し飛ばす。


「失せろ、下衆が」

「どんだけ入ってたんだろ」

「……さあ」


 思わずぼそっと呟いた俺に、スティは首をひねっただけ。まあ、お前さんもついさっきまで似たような立場だったもんなあ。分からないか、そりゃ。

 それはともかく、これでルッタ大丈夫かな、と思ったんだけど。


「あが、ががが……」

「アルタイラ様!」

「アルタイラ!」

「え? あれ、おい!」


 スティの腹の上で、ルッタは顔を青ざめさせて全身ビクビクと痙攣していた。いや、俺もや引っ張り出しただけで何もしてないぞ?

 つか、何があった?


「コータ様、あなた様の精気を!」

「ん?」


 その俺の疑問に答えたのは、やっぱりスティだった。


「先ほどのアレのせいで、アルタイラの体内の精気がかなり減少しておりましょう。体力も下がっていると思われますが、先ほどまで憑依していたサブラナ・マールの力も影響している可能性がございます」

「それで俺か。分かった」


 あーあーあー、要は違う意味で死にかけてるわけな。んで、精気が足りてない以上吹き込む必要があるわけだ。

 それができるのは当然、俺であるからして。


「んだこら、死ぬんじゃねえぞ? アルタイラ」


 一度大きく息を吸い込んでから、俺は再び彼女の唇に食らいついた。今度は、俺の精気を吹き込むために。

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