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実は異世界の神様だったらしい俺。それも邪神で少女神  作者: 山吹弓美
十四:メイヒャーディナルの峠
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251.鳥と虎、ガチ勝負

「おおおおお!」

「がふっ!」


 再び、二人がぶつかる。今度はルッタの速度も上がっており、スティの腹に剣が見事に直撃した。

 あ、いや直撃じゃねえや。脇腹かすったところを、スティが肘で固定しやがったんだ。

 当然、彼女もそれで終わるわけではなく。


「がおう!」

「ぎゃあ!」


 剣を固められたことで距離を取れないルッタの、その肩口にがぶりと噛み付く。虎なだけに、牙の鋭さは洒落にならない。

 しかしこれで、お互いに離れることができなくなったな。どうすんだ、あれ。


「離せ、ケダモノめが!」

「がっ!」


 ルッタが頭突きをスティの顎に入れる。思わず口を開けてしまったところで腹を蹴り飛ばし、ルッタが何とか距離をとった。

 ただ、その勢いで剣を離してしまったようだな。足元に転がったそいつを思いっきり遠くに蹴り飛ばし、スティは再び身構える。

 さっきかすった脇腹から血がだらだら流れ出してるのを見て、つい俺はその名前を呼びかけた。


「スて……っ」


 むぐ。

 もふっとした手で口をふさがれる。これは白いもふもふだから、ミンミカの手か。


「コータちゃま、しーです」

「ご、ごめん」


 ひそひそ声でしー、と言われて思わず謝る。そうだよな、一対一のガチ勝負中だもんな。変に名前呼んで反応されたら、それが隙になるか。

 で、ふとファルンがこちらを見ているのに気がついた。視線が合うと彼女は、いつも持ってる杖を軽く掲げて見せる。

 そういやあの杖、怪我治せるんだったよな。軽度のものなら速攻で塞がる、って言ってたっけ。


「……あれ、大丈夫か」

「ある程度まで塞げれば、後は何とかなりますわ」


 ミンミカ同様ひそひそ、と声を交わす。そっか、中度の怪我が軽度に、重度の怪我が中度には治せるわけだな。

 なら、なんとかなるか。何とかなってくれ、頼む。


「貴様ら邪神の徒を、正しい道に戻すが我らが役目!」

「おう、元からこの道が正しいのだよ!」


 とか言ってる間にルッタとスティはまたぶつかってる。ルッタが剣なくしてステゴロ勝負になってるせいもあり、微妙にスティの方が優勢に見える。つーか虎と猛禽のどつき合いってなんだろうな、うん。


「なれば一度生をやめ、正しく生まれ直してくるがいい!」

「貴様こそ、おとなしく正しい道に戻れよなあ!」


 どがばきぼこぼこ、なんて擬音じゃ追いつかないレベルで殴り合っている。てか、何か微妙に足元悪くなってないか、大丈夫かあの二人?

 ……あ。


「がっ!」

「ぎゃあっ!」


 ずる、と音がした気がする。そのまま、二人がもつれ合いながら向こうに見えなくなっていく様子がはっきり見えて。

 しまった、ここ山の中だから急斜面とかそういうの、当然あって然るべきじゃねえか。

 ほっとくわけには行かないな、と俺はシーラの腕をぐいっと引っ張った。


「シーラ!」

「はっ!?」

「追え! 急げ!」

「は、はいっ!」


 端的に命じる。シーラは勢いに飲まれてくれて、腕につかまった俺を抱っこしつつルッタとスティが消えていった方に飛び込んでいった。

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