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024.ご飯を食べてひとやすみ

 お昼になったので、食堂のひとつをシーラが選んでくれてそこに入った。『ひととき酒場』……酒場って書いてあるだろ、と思ったけど居酒屋みたいなもんか。


「こちらの煮込み料理が、自分には合ったものですから」

「来られたことがあるのですね、シーラ」


 ちょっと照れた感じで店選びの理由を教えてくれたシーラに、ファルンがにこにこしながら頷いた。そこへウエイトレスさんが「いらっしゃいませ」と来てくれる。ファルンに視線が行ってるから、僧侶ということですっ飛んで来たのかもしれない。

 ちょうど空いていたので、半個室みたいな席に案内された。これなら、あまり周囲に気を使うことはないな。


「僧侶様とそのお連れ様でしたら、こちらの静かなお席にどうぞ」

「ありがとうございますー」


 うん、やっぱりファルンのおかげか。マール教、すっかりこの世界で幅きかせまくってるなあ。

 邪神としては大変複雑な気分である。すっかり邪神に慣れてるのはどうだろうなあ、俺。

 で、注文は適当にいろいろと。お昼で若い僧侶で俺イコールお子様連れということで酒はなし、肉焼いたのとかシーラおすすめの煮込み料理とか温野菜とかがテーブルに並んだ。


「いただきます」

「いただきまーす」


 この世界ではいただきます、と簡素に始めるのが普通らしい。ブランナ曰く「美味しいものを美味しいうちにいただくのが、サブラナ・マール様の慈悲に報いることなのですよ」とか何とか。ダラダラ祈るよりはまあ、いいわな。

 主食のパンをもぐもぐといただきつつ、シーラの好きな煮込み料理を一口。おお。


「おいしー」

「お口に合いましたか。それはよかった」

「ちょっとぴりっと来るけど、これがいい感じ」


 あ、シーラめっちゃ嬉しそうな顔してる。そりゃそうか、自分のおすすめ気に入ってくれたんだもんな。

 カーライルは肉をもりもり食べて、ファルンは温野菜メイン。でも、煮込み料理はみんなそれぞれ取り分けてあっという間になくなってるし。

 にしてもこれ、いわゆる家で食う料理だよなあと思ってたら、ファルンが「スラントは、家庭料理が美味しいと伺いました」と言ってきた。


「ここは、基本的に観光などで来るところではないですから。自分はナーリアに向かう前に寄っただけですし」

「そうか。確かにこう言っちゃなんだけど、あまり見るものなさそうだし」


 まあ、見るものないからこう、いろいろ……あれ。


「そういや、エンデバルのあれってどうなってるんだ?」

「あ、手配書を頂いてありますよ」


 不意に思い出したところで、ファルンがいそいそと手配書を出してきてくれた。全員で、その紙を覗き込む。


 描かれた邪教徒、つまり俺の信者は三名。一人が人間で一人が獣人、もう一人が鳥人族と書いてあるな。

 人間の信徒は見るからに悪いやつですよ、という顔で鼻筋と右の頬に傷跡。獣人はふさふさ犬耳の右先端に切れ目が入ってる。

 鳥人はシーラよりも鳥っぽい、というかくちばしがある。種族の中でも、こういうところ違うらしい。あと目の上の羽がかなり太く、黒々と描かれてる。モノクロだから、色までは分からねえ。

 似顔絵は細めの筆で描かれてて、特徴も同じ筆で記されている模様。書類とかは羽ペンで書いてるようだから、筆記用具の使い分けしてるんだな。

 紙も地図に使われてる厚手のじゃなくて……これ、パピルスっぽいやつか。大昔に世界史の授業かなんかで見たような、そんな感じ。


「……これで分かるのか?」


 なお、その絵を見た俺の第一印象はこれだった。もう少しリアルに描いてるかな、と思ったんだが、シュールな漫画っぽい感じの絵なんだよね。ただ。その分特徴は分かりやすいけど。


「似顔絵というよりは、特徴を明記している参考絵という感じですね」

「そっくりな肖像画を描ける画家は、貴族やマール教大本山のお抱えになっていますから」


 カーライルの感想と、それからファルンの言葉がその答えとして返ってきた。

 そっか。似てる顔を描くというよりは、その人物の特徴をはっきり見せるように描いてるわけね。

 にしても、この世界って貴族がいるのか。まあ、ナーリアみたいなど田舎に領主とか、そういうのが住んでるわけじゃないだろうしな。

 村長のネッサが名代みたいなもんなんだろうか。領主がいるとしてだけど。

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