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実は異世界の神様だったらしい俺。それも邪神で少女神  作者: 山吹弓美
十四:メイヒャーディナルの峠
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242.さがしびとはどんなひと

「ああ、スティ姐さんかい」


 さっきの虎姉ちゃんについて、知ってそうな人を探してみた。いつもこの駐車場近くで串焼きの屋台を出してるっていう小柄な兄ちゃんに聞いてみると、あっさり教えてくれる。そっか、スティって呼ばれてるのか。


「スティさん、とおっしゃるのですか?」

「愛称さ。実際のところは何ていうのか、オイラも知らないんだけどな」


 この兄ちゃん、どうやらネズミらしい。台の上に乗って、炭火で焼いてる串を手早くひっくり返していくさまがとっても手慣れてる。

 あと、横で一口大に切ったじゃがいもをふかしてる。メニュー見たらじゃがバターらしい。いい匂いだねえ、うん。


「いつの頃からか、この辺で見かけるようになってな。危険なところで注意はちゃんとしてくれるし、オイラみたいなチビのことも守ってくれるんだ。ほんと、助かってるよ」

「まもってくれるんですか。すてきですね」

「うん、素敵な姐さんだ」


 おおう、立場弱めの獣人男ってことでかアムレクと意気投合してる。ネズミとウサギで、話しやすいのかもしれないな。


「あとな。ここらの魔物は大概、姐さんがしばき倒してくれたんだ。だから連中、おとなしいもんさ」

「『しばき』倒したのですか? 掃討したのではなく」

「ぶっ飛ばして降参させた、って言ってたかな。魔物でもなあ、いなくなると草食の獣に森食い荒らされたりするんだよ」


 兄ちゃんのその台詞には、さすがにシーラもびっくりしたようだ。魔物を殺したのではなく、降参させて手懐けたってことらしい。

 んで、森食い荒らすって……ああ、食物連鎖か。自然界でそのトップに立っているのが、少なくともこの近辺では魔物ってことなんだな。肉食獣があんまりいない環境、ってことなんだろう。だから、魔物がいないと草食獣が増えすぎて大変なことになる、と。

 ……あれ?


「あれ? 最近、近くの集落が魔物に襲われたって話がありましたけど」

「ああ、あれなあ」


 カーライルが、俺が思い浮かべた同じことを口にしてくれた。ネズミの兄ちゃんはふかした芋を大きな葉っぱの上に移して、そこにバターを乗っける。おおうじゃがバター、めちゃくちゃいい香りじゃねえか。

 で、その後声量を落として、答えを言葉にした。人にはあんまり聞かれたくない話、みたいだな。


「畑荒らすような魔物なんてこの辺にはほとんどいないから、よそから来たんじゃないかって話なんだけど。オイラも詳しくは知らんわ」

「なるほど。お話ありがとうございます」


 確かに、よそから魔物が来て畑荒らしていった、なんて観光地で噂になったら大変だよな。客が減ったら収入激減だろう、特にこの兄ちゃんとかは。

 さて、情報にはそれなりの代価が必要である。その代価は、今コングラが目の前で払ってくれた。


「こっちの串焼きを六本と、じゃがバター三つ」

「毎度ありー」


 串焼き六本はまあ分かるとして、じゃがバター三つって多いな。と思ってたら手渡されたうちの二つを、コングラはアムレクとミンミカにそのままスライドした。ああ、草食組用か。なるほど。


「これはそっちの二人に。肉よりゃこっちのほうが食いやすいっしょ」

「ありがとうですー」

「じゃがいもほかほか、うれしいです」

「でしょー。あとひとつはコータちゃん、食べたそうだったんでどうぞ」

「わ、ありがとうございますー」


 くそう、気づかれてたか。いやでも、このバターの匂いマジで美味そうなんだもん。

 ほら、、俺たちの後ろにもお客さんがぞろっと並んでるし。急いで離れるぞ、ここ。

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