240.拝みどころはそこかいな
「ん?」
よく見ると、へこんだ崖の真ん中あたりに何か突起のようなものが見える。出っ張ってるというよりは、何かが突き刺さっているようだ。
「カーライルお兄ちゃん、あれ何ですかー?」
「どれですか?」
「あのへこんだとこの真ん中らへん、小ちゃく飛び出てるのがあります」
思わず声を出したところでカーライルが即座に反応してくれたので、位置を教える。彼もしばらくその場所をガン見して、それから結論を出してくれた。
「ああ、剣が突き立っていますね。あれは」
「は?」
マジかよ、と思ってもう一度しっかり見てみる。確かに、柄があって鍔があって、と剣に見えなくもないけれど、この位置からだと誤差の範囲だぞ。どこかにあるはずの説明板を探したほうが、絶対早い。
「コータちゃん。あれですが、勇者の剣が突き刺さっているそうです」
その説明板を見てきてくれたシーラが、教えてくれる。うわあ、やっぱり剣なのか。というか、勇者の剣ってことはメイヒャーディナルがぶん回していたそのものってことだよね。
「おそらく、さっきの岩を真っ二つにしたものではないでしょうか」
「なんでアレで岩真っ二つができるんですかね」
「神のご加護、じゃないっすかねえ」
ファルンの推測も多分間違いはないんだろうが、それ以上にジランドの疑問とコングラの答えがなんというかな。ほんと便利だよ、神のご加護ってやつは。俺、今んとこそんなのできないのになあ……ずるいぞ、サブラナ・マール。
胸の中だけで悪態ついていたところで、ふと思い出した。ここ、確かご来光拝みに来る人いたんだよなあ。どこから見えるんだろう、日の出。
「そういえば、日の出を拝むってどこなんでしょう?」
「あそこみたいですよ、コータちゃま」
「ん」
この疑問には、ミンミカが答えてくれた。腕伸ばして指してる方向に目を向けると、あらまあ。
山の五合目より上くらいが、べこっとへこんでいるというか円形にえぐれている。あれだ、アクション漫画で気功とかで吹っ飛んだ跡みたいな感じに……マジでそうだったりしてな。
「うわあ、なんか綺麗に吹き飛んでますね……」
「なんでも、戦士クルンガが獣王ぶん殴るついでにふっとばした跡だそうですよ」
「……あ、さいでっか」
ふっとばした、だから多分大真面目に気功なり何なりが出たんだろうな。マジか。
というか、ここでその名前が出てきたな。メイヒャーディナルと一緒に、バングデスタのことボッコにしやがったわけか。何という肉体言語だお前ら。
「やまごと、ぶんなぐられちゃったんですね……」
「で、そこからお日様が昇ってくるのを拝む、と」
アムレクがぽかーんと山を眺め、カーライルが呆れたように言葉を吐き出した。まあ、気持ちはわかる。
しかしまあ、ご来光ポイントがメイヒャーディナルの作った場所じゃないわけだ。地元がクルンガ派ってことも、これは影響あるんだろうな。




