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023.ここの人にもごあいさつ

 ともかく、しばらくはエンデバルに行けそうもないということが分かったところで。

 ファルンがここのマール教教会に顔を出すというので、ついていくことにした。もちろん、シーラとカーライルも一緒である。


「ファルン様、ですね」

「はい。ナーリアより修行の旅に出まして、まずはこちらに寄らせていただきました」


 身分証明になるものは、首から下げてる紋章のペンダントだった。裏に名前が刻んであるとのこと。

 スラントの教会は、さすがにちゃんと教会っぽい建物だった。いやまあ、とんがった屋根で中に入ったらすぐ礼拝室っていうの? 正面にマール教の紋章がでーんと据えられててその前に長椅子が並んでいるって、分かりやすく教会っぽいだろ。

 もっともスラントの場合、ナーリアみたいな木の小屋がぽつぽつ建っているような村とは違って木造でももっとしっかりした、二階建ての建物だったりするし。その中で、基礎が石でしっかり作られている教会は何というか、優先されてるって感じかな。


「修行に出られたのですね。良い旅になることを我らが神に祈りましょう」

「ありがとうございます」


 この教会を預かっている僧侶さんは、ふっくらした小柄なおばちゃんだった。純粋に、サブラナ・マールを信仰してるんだろうなあというのが何となく分かる。俺が俺の身体から叩き出されてからものすごく時間が経っているんだろうし、マール教の信者も大体がそういう人たちなんだろな。

 だからって、おとなしく屈服するつもりはございませんが。


「こちらの方々は?」


 俺たちに視線を移して、僧侶さんが尋ねてきた。まず口を開いたのは、シーラ。


「マーダ教がぞろ動いているということもありまして、自分は護衛を兼ねて同行しておりますシーラと申します」

「私はカーライル、と申します。……その、この子とともにマーダ教にさらわれてきまして」

「コータです。お家に帰りたいんです」

「まあまあまあ。なんという……」


 カーライルと俺は、ボロを出さないためにあまり詳しく言わないことにしてある。シーラは嘘ついてないけど、俺とカーライルはしょうがねえよな、事情が事情だし。

 つっても、僧侶さんにはそんな事情は分からない。嘘を本当だと思って、俺たちを哀れんでくれる。後、俺のロリっ子芝居、自分では気持ち悪いんだけど効果あるんだな。僧侶さん、ゆっくりと頭をなでてくれた。


「でも大丈夫ですよ。お二方の上にも、我らが神の御慈悲は降り注いでいます」

「御慈悲に感謝します」

「ありがとうございます」


 僧侶さんの言葉にカーライルが答え、俺はそれに追随する感じで言葉を重ねる。保護者の真似する子ども、みたいな感じだから違和感はなかろう。

 実際、こっちの世界のこと知らないというか覚えてない俺は、ある意味お子様だしなあ。




 顔見世を済ませて町中を歩きながら、ふとファルンに聞いてみた。


「教会ってさ、他の教会にこういう人が行きますよって連絡とかしないのか?」

「それはないですわね。わたくしに同行しているということで、旅をすることが修行の一環とみなされますから」


 会社の出張とかだとさ、先方に連絡入るだろっていうか相互にメンツとか日程とか決めるための連絡は欠かせないもんだろ。通信手段に乏しいこの世界じゃそうそう連絡とかもできないだろうけど……って、そういう問題じゃないのか。

 シーラがちらりとカーライルに視線を向けて、小さくため息をついた。


「つまり、さらわれてきた誰かさんは、故郷を自力で探して帰れと」

「そうなります」

「地図はありますから、方向は分かりますが」


 変なところ大雑把だな、マール教。ま、おかげで助かってるようなもんだが。あとカーライルの言ったとおり、教会に地図があるのはそういうことでもあったわけね。

 もっとも、ファルンが修行の旅に出てるということは身分証明を見せれば分かるから、それ見せた人にはある程度のバックアップはあるってことか。


「修行に出てる僧侶って、どのくらいいるんだ?」

「詳しいことは知りませんけど、数十名というところでしょうか」

「へえ」


 多いのか少ないのか、それはさすがに分からない。世界全体でマール教の僧侶がどれだけいるか、カウントしてられないしな。

 ただ、全世界にいるわけだから……修行中の人のリスト作成、やるとしたら面倒くさいだろうなあ。


「大教会でしたらリストはあるかもしれませんが、全国のものをまとめたものはないかと。先程のわたくしのように身分証明を見せればいいので、教会側で把握しているということはないでしょうね」

「ふうむ」


 身分証明の偽造、ってのは考えてないのかね。罰則が厳しいとか、そういうことなら分かるけど。偽僧侶は見つけ次第処分しろ、なんて……ああ、俺の逆パターンとかありそうだなあ。怖いから、考えるのやめておこう。


「村や町の住民にしてもそうですね。各々の長のところにリストはあると思いますが、全国で把握しているものではないです」

「おお、なるほど」

「ですから、コータちゃんやカーライル殿についても問題はございません。ご安心を」


 シーラはまず説明してくれた後、俺たちの部分についてはひそひそと小声で伝えてくれた。ちゃん付けなのは、もしかして誰かに聞こえても大丈夫なように、だな。ありがとう。

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