235.ゆっくり山道を
翌朝、牛車で峠詣りということで軽めの朝食をとった俺たちは、昨夜の打ち合わせどおり二台の牛車に分乗することになった。
で、俺と同乗することになっている二人と御者やってくれるジランドなんだけど。
「コータちゃんはこちらに。大丈夫です、私がついておりますから」
「自分が背もたれを務めますので、危ないことはないと思いますが」
「背もたれはともかく、ちっちゃい子なんで気をつけてやってくださいよ。お二人とも」
すっかり保護者だよな、お前ら。いや、被保護者が言うのも何だけど。
「コータちゃま、こわいとおもったらシーラさまにしっかりしがみつくですよ。だいじょうぶですから」
「カーライルさんも、あぶなくなったらがんばってください!」
「あらあら二人とも、ジランドさんが牛車を操ってくださるのですから大丈夫ですわよ」
「ちょっとファルンさあん、俺だってちゃんと御者やれるんすからねー!」
別組はまた、違う意味で保護者なんだか何なんだか。いや、軽口言い合えるような仲だしいいんだけどさ。
それとファルン、コングラはジランドの弟子なんだから信じてやれ。今の言い方じゃ、自分たちはコングラの操縦する牛車だから危なっかしいって言ってるようなもんだぞ。
一応そう突っ込んだら、ファルンは「そういうつもりではありませんでした、本当に申し訳ありません!」って深々と頭を下げてたからいいんだけど。コングラも、それでいいみたいだし。
「それじゃあ、行きますぜ。揺れますから気をつけてくださいよ」
「はーい」
で、乗り込んだ牛車は結構頑丈に作られてたんだが、確かに小さめだった。客を乗せるためのものなので、外装のシンプルな茶色の塗装と合わせた内装の壁紙やカーペットなんかはそこそこきれいだけどね。
最大で客を五人乗せられるらしいんだけど、基準が羽も角もない人間らしくシーラが乗ると狭い。まあ、俺はそのシーラの膝の上なんだが。
クルンゴサの街を出て、がたことと分かりやすい山道を進んでいく。他の街と結ばれている街道とは違い、路面がでこぼこしててほんとに揺れるなあ。他にもいくつか峠に向かう牛車があるので、進みは結構ゆっくりなんだけど。
なお、ミンミカと違ってシーラはしっかりした部分鎧を着込んでるから、もふっとした背もたれには程遠い。ただ、なんというか信頼感は半端ねえ。俺を保持してくれてる腕が、筋肉あるけど柔らかめだからかね。このへんは外見ロリっ子の特権、特権。
ただ、会話はそんな平和なもんじゃなかったけど。主に、魔物を仲間にしたいっていう俺の考えに関してだから。
「魔物、ですか」
「皆さんがた、そのようなことをお話しされていたのですか」
「うん。ぶっちゃけ俺たち、まだまだ戦力乏しいしなあ」
女性部屋で話してたんで、カーライルとジランドはこの話を今初めて聞くわけだ。で、その感想がこれ。
あんまり否定的な口調じゃないのは、ちょっとほっとしたかな。特に、仲間というか身内を失っているカーライルは。
「この世界は、特にヒトに関してはマール教がほぼ支配しているようなものですからね。こちらの言うことを聞いてくれる魔物であれば、味方として引き入れたほうが得策かと思われます」
「んまあ、俺だってそういうんが牛車引いてくれたらちょっと楽しいかな、とか思いますがね」
そうして二人とも、結構面白い意見をくれた。ジランドは御者台に乗ってるからうまくばれないように代名詞使ってるけど、要は牛の魔物に牛車引いて欲しいってことらしい。
ああ、確かにでっかい牛がでっかい牛車引いてどどどどど、って土煙上げながら突っ走る光景があったら俺も見てみたい。乗ってる側かもしれないけど。




