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234.どっちがいいですかー

 夕方までのんびり街を回って宿に戻ると、コングラが待っていた。

 「親方が、飯の時間にちょいとお話があるって言ってたっす」という誘いに従い、宿そばの食堂に向かう。昨日の晩も今朝も食ったから、飯が結構うまいのは分かってるんだよね。ちょいと高いらしいけれど。


「皆の衆、こっちですぜ」

「おー」


 ジランドが先に席を取っていてくれたので、そこに全員で座る。衝立で区切られたテーブル席で、あんまり人の邪魔は入らなそうだ。


「今夜は俺が出しまっさ。お呼び立てしたんですから、当然ですが」

「いいのか?」

「高いですわよ」


 すでにいくつか並んでいる料理を前に、ジランドはそんなことを言ってくれた。でも、物価上がってるって聞いてるし、大丈夫かな。ファルンも気にしてるし……と思ってたら、しれっと答えが帰ってくる。


「お気になさらず。マール教から補助金出てますし、なんでも神都サブラナよりはまだ安いそうで」

「マジか」

「神都サブラナは神を崇めるための都ですから、人の生活に必要なものはすべて外で作られたものを仕入れると聞きます。それも、質の高いものを」

「……なるほど」


 ファルン、解説ありがとう。そりゃ値段上がるわ。

 都会は物価が高い、ってのはあっちの世界の話だったけど、こっちでもそうなんだねえ。

 それはそれとして、飯はさっさと食おう。ジランドが呼んだんなら、なんか用事があるんだろうし。それも、人のいる場所で話できるってことはマーダ教絡みじゃないってことだろうしな。


『いただきまーす』


 ここらへんはあんまり元の世界と変わりなくて、ホッとしながら飯を食う。鶏肉と野菜の煮物に固めのパン、干し魚とピクルス。煮物が根菜とかも入ってがっつりしてるので、腹には貯まる。

 あとウサギ兄妹が鶏肉と干し魚だけ外せば食えるメニューなのは、さすがベテラン御者だなと思うよ。


「あー。今日のうちに決めたいことがありまして」


 パンが固いんで、煮物のスープにつけてもぐもぐ食ってると、ジランドが切り出してきた。今日のうち、ってことは峠関係か。


「峠行くときに乗る牛車なんすけど、小さいのしかないんだそうで。うちだと六人なんで、三人ずつ二台に分乗っす」

「コングラも動かせますから、そちらは心配ないですぜ」


 あ、そうなんだ。

 いつも乗ってるジランドたちの牛車はそれなりに大きくて、背中に翼のあるシーラを乗せるとちょっときついけどまだ何とか余裕はある。けど、明日乗るレンタルのやつはそうじゃないってことか。


「まあ、観光登山用ですし」

「道も狭いでしょうし、このほうが安全ということですのね」

「致し方あるまいな。転がり落ちたりしたら大変だ」


 カーライル、ファルン、シーラ。大人たちの意見はあっさり、それでいいということで一致してる。いや、そうでないと歩いていく羽目になりかねないんだろうけれど。

 ん、そうなるとジランドの用事って。


「で、分乗なんで、誰と誰が一緒に乗るかなんですが」

「私はコータちゃんと一緒がいいです」

「自分もです」

「即答!?」


 カーライル、シーラ、めっちゃ早っ。さすがのジランドが目をまんまるにしてるし、あと口から鶏肉落ちかけてるし。

 ……いやまあ、この中では俺が一番軽くてシーラが一番重いから、一緒に乗ると二台の牛車で重さがうまく分けられるかな、とは何となく思った。


「そうすると、わたくしとアムレクさん、ミンミカさんということになりますわね」

「あ、ぼくはいいよー」

「しょうがないです。コータちゃまのせもたれ、こんかいはシーラさまにかわるですよ!」

「うむ、自分に任せよ」

「どういう納得の仕方だ……まあいいが」


 他三名も、実にあっさり納得しやがった。ジランドが顔引きつらせてるじゃねえか、お前ら。

 まあ、そういうことならいいかな。あと、少しは俺たちが飯代持ったほうが良くないか、この場。

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