224.四天王ってどんなやつ
ジランドたちは、牛車の外で寝るんだという。で、俺は優先的に牛車の中で休ませてもらえるのでシーラと一緒に中に入った。
ミンミカやファルンも中に入れたほうがいいんだが、何しろそう広いもんじゃないからって遠慮された。まあ、全員牛車の側にはいるはずなんで大丈夫だと思うけど。
「シーラ、ごめんな」
「は?」
シーラと二人っきりになったところで、俺は切り出した。突然の台詞に彼女が目を丸くするのは想定内、ちゃんと理由も言わないとな。
「なぜ、コータ様が自分に謝罪など」
「俺がもうちょっと強かったらさ、さっさとルッタを正気に戻してやれたのに」
そういうことだ。
ルッタがアルタイラなのであれば、シーラやレイダと同じようにあの白いもやっぽい何かを飲み込まされていることになる。
それを俺が吸い出せば、ルッタは翼王アルタイラに戻る。直属の部下だったシーラと、ガチバトルなんてこともしなくてよかったんだ。
「……いえ」
そこまで吐き出した俺の言葉を聞き終えてから、けれどシーラは首を振った。
「自分がルッタ殿より強くなっていれば、簡単に解決した問題です。おそらく、アルタイラ様として覚醒すればもっとお強い」
「さすが、四天王って呼ばれるだけのことはあるな」
えーと。
今のルッタの状態で、シーラより多分少し強いくらい。アルタイラに戻ったら、あれよりもっと強くなるってか。さすが俺の四天王。
それで、シーラは今のルッタより強くなっていれば、叩きのめして俺のところに連れてくることができた、って言ってるのか。
「……って、レイダもそのくらい強いのか?」
「恐らくは」
四天王で、俺が今実際を知ってるのはネレイデシア、ことレイダしかいない。あのタコ姉ちゃん、実はそんなに強かったりするんだろうか。
「以前にも申し上げたと思いますが、自分はネレイデシア様の戦を見たことはほとんどありません。ですが、海の中では無敵とも言える存在であり、故にかつてのアルニムア・マーダ様は海の戦を全面的に任せておられました」
「そっか」
俺が全面的に任せてた、っていうことならよほど強かったか、指揮官としてちゃんと働いていたってことになる。
実際に戦っていた者の数はそれこそシャレにならんくらいだろうから、めっちゃ強い指揮官として戦ってたわけかな。
特に海の中なんて、俺たちじゃどうしようもないことも多いし。
「てことは、空の戦いはやっぱりアルタイラに?」
「はい。自分も『剣の翼』と呼ばれる剣士として、アルタイラ様のもとで存分に戦わせていただきました」
やっぱり丸投げか、俺。海も空も、となるとだ。
「海がネレイデシアで、空がアルタイラ。地上はバングデスタだよな……そっちも全部任せてたのかな、俺」
「そうだった、と記憶しております」
ああ、やっぱりかー。いやまあ、各自そのエリアのエキスパートだから丸投げしちゃったほうが楽だしちゃんと戦えたんだろうけどさ。
にしても獣王バングデスタ、か。まだ会ったことないけど、強いといいなあ。シーラは見たことあるのかな?
「獣王バングデスタ様の戦姿は、空の上から数度拝見したことがございます。遠吠えにて無数の敵を怯えさせ、力強い四肢にて敵を踏み砕くという少々野蛮な戦でございましたが」
「そりゃまあ、そういうのが得意なやつもいるだろうさ。お行儀のいい戦ばかりなんて、あるわけもない」
「おっしゃる通りにございます」
四肢、ってことは四足の獣。普段からそういう姿をしてるのか、変身してるのかは分からないだろうなあ。シーラ、部下じゃなかったわけだし。
そのへんは、メイヒャーディナルの峠まで行けば少しは分かるかもしれないけどな。あと、実は本人がいますよパターンもありそうだし。




