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216.どうやら後ろにやつがいる

 庵主様の集落を離れて二日。俺たちはのんびりと、道端の草原で野宿をしている。まだ雨季が来ないので楽だ、とはコングラの感想だ。

 さすがに、道の上で牛車止めたまま寝るなんてわけにも行かないからな。この世界に道交法はないと思うんだが、単純に牛車がぶつかったり牛同士や人間同士が喧嘩になっても面倒だろうし。

 晩飯食ってふう、と一息ついたところでミンミカとアムレクが、垂れ耳をぴくりと震わせた。


「てきです」

「ひとりだね」

「そのようだな」


 焚き火の周囲に集まっている、俺たちにだけ聞こえるくらいの小さな声。最後に同意したのは、シーラだった。……そういや鳥目じゃないんだなあ、と今更ながらに気がつく。いや、サヴィッスでも明るくないところで平気だったよな。しっかりしろ、俺。


「ここは自分が行く。皆はコータ様を頼む」

「……ってことは、ルッタ?」

「はい」


 残った串肉をぼちぼちと食しつつ、ひそひそ話で情報をもらう。素直にシーラが頷いてくれたのでよし。

 ルッタは多分ランブロードの話を聞いて、だいたいこっちを通るだろうって当たりをつけてきたんだな。それで、俺たちが野宿してるのを監視中、と。

 ……ボロニアたち、結局俺は会ってないけど大丈夫なのかな? もしかして、今晩あの集落で泊まりとかかもしれないけどさ。

 それはそれとして、ルッタが来たのなら。


「じゃあ、俺も行ったほうが良くないか」

「いえ。今の状態では、コータ様が危険です」

「つまり、殺る気満々かよ……」


 俺が行ってルッタを吸えば万事解決なんだけど、吸う距離にまで近づけなさそうだというこった。

 いや、向こうからしたらマーダ教信者のシーラが俺たちを人質に取って大手を振って旅行中、というムカつく状態なのは分かるけどさ。

 一応俺には衝撃波があるけどさ、できれば奥の手というか何と言うか、そういうことにしたい。……それで吸ったシーラには悪いけど。


「シーラ様お一人で大丈夫なんすか? いえ、俺たちゃ知らねえことになってるわけっすが」

「最悪、人質ということにさせてもらう。では」


 同じくひそひそと問うてきたコングラにそう言い置いて、シーラはすっくと立ち上がった。で、何をするのかといえば。


「周辺を見回ってくる。皆は程々にして休みなさい、小さな子もいるのだから」

「小さくないですよう」

「そういうことは、井戸水を一人で運べるようになってから言いましょうね」

「うぐっ」


 ルッタが見ていることを見越してのベタベタ芝居、である。小さな子って、俺以外にいねえし。

 ついでにファルン、ざっくり俺をえぐって来やがった。いや、確かに幼女ボディなこともあって井戸水は一人じゃ運べなかったけどな! くそうおのれサブラナ・マール!

 ……いやいや、そこじゃないだろう俺。


「頼んますぜ、姐さん」

「いってらっしゃーい、ですー」

「早めに戻ってくださいね」

「ははは、気をつけるよ」


 のんきなジランドに、ミンミカはまあいつものことで。

 で、最後に声をかけたカーライルに少し笑って見せてから、シーラは道から見て奥へと入っていく。ま、戦闘するなら人目は避けたいよな。


 ……さて、どうしようかな、俺。

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