211.飯は食ったが後はどうする
「ごちそうさまでしたー」
「はい、お粗末様でした」
結局、みんなでいろいろ手分けしてできた夕食を平らげたのは……多分一時間以上、二時間くらいは経ってたかな。
まあ、メニューが野菜と干し肉のポトフ、それと焼き魚だったからな。魚焼くのは割とすぐできるけど、ポトフは煮込むのに時間かかるから。……ただし、基本煮込めばいいんで面倒な手間があまりかからないからそうしました、とは指揮を執ったファルン談。はい、すみませんでした。
「あー、ポトフってこんな美味かったんだー」
「味付けがお塩以外に干し肉をいただくことができましたから、スープにいい味が付きましたし」
「なるほど」
ファルンの説明で、ポトフが美味かった理由に納得する。
干し肉戻すついでに、出汁取って使ったわけか。他に調味料は塩くらいしかなかったようだし、干し肉すごいな。
……香辛料、ほとんどないんだよね、ここ。塩と酢と、あと砂糖がちょっとあるくらい？ 街だと普通にスパイスとかもあったから、流通から外れてるんだなあと思う。
「ミンミカたちも、あったかいやさいいただいてぽっかぽかですー」
「パリパリもいいけど、ほにゃほにゃもおいしいです」
ウサギ兄妹は魚は食わなかったんだけど、煮込んだ野菜だけでまあまあ腹は満たせたようだ。ま、芋とか根菜とかちゃんと入ってたしな。
「普段あまり野菜は食べないんだが、これはいけるな」
「芋の中まで味がしみて、大変美味しかったです」
シーラとカーライルもほにゃーん、とすっかり顔が崩れている。いや、二人とも美形だけどさ。
確かに芋、味がしみてて美味かったな。じっくり煮込んでたのと、切れ目とか入れてたのが効果あるらしい。
ともかく、何とか自分たちでの夕食は終わった。よかったよかった。
……んなわけねーわな。料理したら後片付け、当然である。
でまあ、当然というかこちらもファルンが指揮を執ることになる。ですよねー。
「カーライルさん、食器洗い手伝っていただけますか」
「あ、はい。もちろん、やらせていただきます」
ポトフ煮込むのに大きい鍋使ったからな。カーライルに手伝ってもらうのは問題ないと思う。
……性格上、シーラだと何となく壊しそうで。
で、小柄な俺は非力なので、できることをやる。
「じゃあ、井戸で水汲んでくるよ。使うだろ」
「ミンミカも、いっしょいきますー」
「はい。コータ様、ミンミカさん、よろしくおねがいしますね」
実はこの小屋、荷物運び用らしい台車があるんだよね。なので、井戸水とかを運ぶのは俺でもできるわけ。
ミンミカも来てくれれば、水運びは特に問題なくできる。俺で身長足りない部分は、彼女にやってもらえば良いからな。
ちなみに俺が率先してやるのは、外見上ただのロリっ子獣人である俺が僧侶様や大人たちのお手伝いをきちんとやれば、周りからの評判が良くなるだろうと考えてのことだ。
実は神様なんですよ、なんて言えないこともあるけれど、評判を良くしておくに越したことはないし。
「ああ、では自分も」
「いえ。シーラさんとアムレクさんには、夜具の準備をお願いしますわね」
同じく同行を申し出てくれたシーラは、あっさりファルンに引き止められた。
夜具って、ベッドとか布団とかそのへんか。多分、物置とかクローゼットとかにしまい込まれてる、のかねえ。ちょいと人数多いし。
「ねるじゅんびですねー。シーラさま、ふかふかおふとんのじゅんびをしましょう！」
「……そ、そうだな。了解した」
アムレクの方はベッド大好きだもんなあ、思いっきり本来の意味で。
その準備をできるのが嬉しいようで、すっかりシーラも勢いに飲まれているようだ。さすがは空気読めない・兄。
それと、シーラにその要件を振った理由がちゃんとファルンにもあるようで。
「シーラさん、一応追われているお立場なのですから。あまり外に出られると、目撃者が増えて大変ですわよ」
「そうだった。すまない」
そうでした。シーラはルッタに、マーダ教信者として追っかけられている立場なのだった。
ルッタの部下たち、ちゃんと追いかけてきてるかな？ その後ろのボロニアたちもだけどさ。
