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205.小芝居終わればご褒美よ

 さて。

 さっき言ってたランブロードでマーダ教がどうの、という話について、サングリアスに尋ねてみる。わざわざ来てくれたのは、これを伝えるためだろうし。


「サングリアス。ランブロードでのマーダ教騒ぎ、というのは本当か?」

「はい。ただ、騒ぎは本当のことですが、恐らくはただの食い詰め者のようです」

「よくある話ですわね」


 ファルンが小さくため息をつく。ああ、チンピラどもがマーダ教信者を名乗って暴れる、ってのは時たまよくある話……っていうと妙だけれど、そういった騒ぎ自体がそう頻繁にあることじゃないから。あと、ガチマーダ教の信者とかがバックについてるとかもあるし。

 ……しかし、鎮圧されるのが目に見えてるのによくやるよなあ、そういう連中。


「よくある話ですが、そのせいでこの先の道は警備が強化されております。どうやら、先に捕まった連中がこの後増援が来る、などと供述したようでして」

「それで、ランブロードに向かう者をチェックしてるわけか。なるほど」


 『ランブロードの街を出ていく者』じゃないのに検問してる理由は分かった。実際に来るのか、暴れた連中が嘘吹き込まれてるのか、それが分からない以上そうするしかないよね。

 しかしそうなると、ガチマーダ教軍団な俺たちはやばいよな。特に、ルッタに目をつけられているシーラは。


「そういうことですので、コータ様に置かれましてはランブロードを避けて、少し遠いですが直接クルンゴサをお目指しいただきたく思います」

「分かった。ありがとう」


 サングリアスが来てくれたのは、結局のところこれを言いたかったんだな。

 確かにそういう状況なら、やばいところには近寄らないほうがいい。ただでさえルッタの配下だろう連中が追いかけて来てるんだから、これ以上厄介事を増やすのはめんどうだし。

 さて、下僕としてちゃんと仕事をしてくれたんだから、こちらもそれなりに答えないと。


「サングリアス、これは礼だ」

「んむっ」


 というわけで、吸って吹き込み直し。少し多めに吹き込んでやると、一瞬だけ腰が砕けた感じになった。

 あぶねえあぶねえ。周囲を下僕たちが見張ってくれてるとはいえ、後続の部隊に見えたりしたらまずかった。


「過分なる褒美を、ありがとうございます」

「過分じゃねえよ。大切な情報を持ってきてくれたんだ、当然だろ」

「はっ」


 どろーんとした下僕っぽい……っていうとどんなだ、と思うけど何となくそんな感じの表情で、サングリアスは深く頭を下げた。

 今後もこういった感じで働いてもらわないといけないから、俺のエゴでやってるわけなんだけど感謝されてるし。

 ま、いっか。


「これからも、コータ様のために務めます」

「それでいい。ただ、教育部隊としての仕事も忘れるなよ」

「もちろんでございます。コータ様の下僕であることを、知られてはなりませんから」

「よし。じゃあ、行け」

「はっ」


 うむうむ、いい感じの下僕だ。

 サングリアスはそのまま牛車を降りると、外の配下たちに「問題ない。撤収せよ」と指示を出した。そうして御者台側に回り、ジランドとコングラに声を掛ける。


「問題ない、という確認は取れた。行って構わない」

「あいよ。任務おつかれさんです」

「お仕事、おつかれさまっす!」


 ごく普通の取り締まり部隊と何の問題もない一般人、と言った感じの会話を交わして、俺たちを乗せた牛車は再び動き始めた。

 後はうまくやってくれよ、サングリアス。

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