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019.途中の宿でひとやすみ

 夕方前に、宿屋に到着した。軒先に吊るされている看板には『山宿』なんて分かりやすい名前が書いてある。

 さすがにこんなところで肩車もあれなので、ちょっと前にカーライルからは下ろしてもらって付いて歩く。何というか、ちょこちょこって感じになってしまうのがろりボディクオリティってか。


「男一名、女三名で」

「ありがとうございます。お部屋ご案内いたしますねー」


 カーライルが手続きを済ませ、フロント……でいいか、フロントにいたほんわりした感じの女性が二階の部屋まで案内してくれた。今はどうやら暇らしく、扉が開けっ放しの客室が多いな。


「部屋が空いておりますので、こちらとこちらをお使いくださいませー」

「助かります」


 シーラが礼を言うと、女性はペコリと頭を下げて戻っていった。奥まったところにある、並びの二部屋を使っていいようだった。


「二部屋、ですね」

「どう分けるんだ?」

「そりゃ男女でしょう」


 カーライル、お前さんそういうところきっちりしてるのな。ナーリアの神殿でも、自分だけ別の部屋使ってたし。部屋というか、物置片付けてだけど。

 しかし、道端にぽつんと建ってる宿屋って危なくないのかね。


「ていうか、こういうところって危険なことないのか?」

「危険って何ですかあ?」

「山賊とか、獣とかでしょうか」

「まあ、だいたいその辺り」


 ファルンがぽやんとした反応であるところを見ると、何か仕掛けなり何なりありそうだな。シーラの指摘は、つまりそういうのしか出てきそうもない……つまり想像できないってことだ。


「こういう場所には、たいてい常駐の用心棒さんがいらっしゃいますから。わたくし一度、お一方にお会いしたことがございますけど、普段はお優しそうな方ですよ」

「はー」


 ま、そうだよねえ。ファルンが言う通り、少なくとも用心棒なり何なりがいないと危ないよな。

 しかし、俺たちが入ってきた時はいなかったよな。そういう人。


「普段は、てどこにいるんだ?」

「建物の周り見回ってたり、夜の警備に備えて寝てるかもしれないですねー」

「ああ、夜か。そうだよな」


 獣も夜行性が多そうだし、山賊なんて真っ昼間に出てくるようなもんじゃないだろうしな。そりゃ、昼間は寝てるか。一人だけってこともないだろうし……ないよな?

 それはともかく。ひとまず部屋で、ゆっくりするか。


「カーライル殿。もし寝込みを襲われたりした時は、容赦なくはしたない声を上げて構いませんよ」

「ははは、まさか」


 シーラに言われて、カーライルが顔をひきつらせる。残念な中身だけど外見はイケメンだから、そういうこともあるのかもしれない。おのれイケメン。


「まさかが本当にあることもありますからねえ。ね、コータちゃん」

「そうですね」


 ファルンが、わざと人前での呼び方で俺を呼ぶ。ああ、別の客が来たのか。俺もロリっ子のふりしてやり過ごそう。


「お、おやすみなさい」

「おやすみなさいませー」


 カーライルにあてがわれた部屋の向かいに入った、商人の夫婦っぽい客をうまくやり過ごす。で、俺とファルン、シーラは一番奥の部屋に入った。


「で、コータ様」


 扉を閉じたところで、シーラが声を落として話しかけてきた。ファルンはしっかり鍵をかけて、それから周囲を確認してるな。


「実際来たらどうするんですか?」

「来たらって、カーライルのところにか?」

「はい。よその種を手に入れるため、という名目で夜這いを仕掛ける者もおりますので」


 うへえ。冗談かと思っていたら、まじでそんな事があるのかよ。

 でもまあ、カーライルがいいならいいんだけど……まあ、嫌なら嫌って拒否するだろうな。それで、もし追い出せなかったりしたら。


「カーライルが嫌がって、かつ女性ならありがたく吸わせてもらおうかな。だけど、男なら任せる」

「ほんとに変わられましたねえ、コータ様。昔は逆でしたもの」

「らしいな」


 シーラ、昔の俺知ってるからってそこまで驚くことかよ。

 ……昔の邪神様な俺、そんなに男をゴチになりまくってたわけか。あーあ。

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