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197.夜に現る鳥の名は

 さすがに上まで骸を持って帰るわけにはいかないだろうから、彼は部屋の隅っこに寝かせておいた。そうして、階段を登って帰る。

 ちっ、少しはなにかあるかと思ったんだけどなあ。翼王アルタイラ関係なら部下だったシーラが反応するはずだけど、全く何もなしだったし。


「よくお戻りくださいました」


 扉はちゃんと開かれたままで、サヴィアもそのまま待っていてくれた。ああ、一応俺が吹き込んだのは効いているみたいだな。

 特に何か起きた、ということもないようだけど一応、口頭で確認はしておこう。


「見張りしてくれていてありがとう。何も問題はなかった?」

「はい。この時間になりますと、地下からマーダ教信者の怨嗟の声が聞こえてくるなどという噂がございますので、近寄る者はほとんどございません」

「あ、そっち……」


 サヴィアの答えを聞いて、こっちの世界でもそういうことあるんだーと何か納得してしまった。

 そうか、ある意味心霊スポット扱いなんだ、この教会。だから、普通の人たちは夜にはやってこない。やってくるのは肝試しするような馬鹿どもか、俺たちみたいなマーダ教信者。いや、俺、神だけど。

 それで敵対者とかの振り分けもやってるってことか、納得。


「……そんなことを言っていると……観光地は大体、マーダ教信者の恨みの声が賑やかなのではありませんか?」

「言われてみれば、その通りですね」


 カーライル、野暮な突っ込みはよせ。たしかに、今この世界の観光地ってマーダ教がマール教に負けた場所だけどさ。

 あと、サヴィアも納得してどうする。


「おっと。そういうことであれば、あまり長居をするわけにはいかないのでは?」

「ああ、確かに」


 シーラのこの突っ込みは的確だった。そうだよねー、夜中に教会に来てる時点で基本、怪しいもんねー。

 サヴィアは俺たちに頷いてくれて、「今のうちに、お宿へお戻りください」と促してくれた。


「サヴィア殿。何から何まで、気を使っていただいてありがとうございます」

「いえ、我らがご主人様のためですもの」


 ファルンとサヴィア。どっちも俺が吹き込んだ下僕だけどさ、こうやって会話してるのは普通の僧侶同士の会話なんだよね……内容を除けば。うん。




「サヴィア様!」


 出口の方へ向かいかけたところで、ジオレッタが駆け込んできた。あ、よく分からないけれど耳がピリピリしてる感じ……何かあったかな。


「どうしたの?」

「あの、ルッタ様が突然……」

「失礼する」


 え、今ルッタって言った? なんて考えてる暇もないうちに、ジオレッタの後ろから背の高い女性がずい、と入り込んできた。

 少しきつめの美人で、白い髪を首の後ろで一つにまとめている。背中に髪と同じ白い翼がどん、と存在を主張しているから、シーラと同じタイプの鳥人であることは間違いない。前に見た教育部隊と同じような、かっちりとした鎧を着込んでいる。


「ルッタ様!?」


 サヴィアもその名前を呼んだから、彼女が例のルッタで間違いないらしい。ああやべえ、シーラが対抗心燃やす……と思ったけれど。


「……」

「シーラさん?」

「どうしました?」


 ファルンとカーライルが声をかけても、シーラは動かない。呆然とルッタを見つめて、そうして。


「……アルタイラ、さま」


 その名前を、呼んだ。

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