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195.祠で何をしていたか

 扉の奥に直結してる階段は、明かりをかざしてみるとちゃんと底が見えた。途中で折り返してるんだけど、そこまでで多分ビル一階分。

 土を掘って、踏むところに石を敷いているシンプルな構造の階段。折り返しは一回だけで、前半と同じくらい降りている。……ビル二階分か。


「あまり深くないんですね」

「もともとの祠が、高台にでもあったのではないですか?」

「なるほど」


 ファルンも同じことを考えたようで、疑問を口にする。カーライルの推測が、恐らくはちゃんとした答えなんだろう。もしくは、全体的にさほど埋めたわけじゃないとか。

 元の街を丸ごと埋めたとして、祠が高台にあったのなら現在の地表からの距離はそう遠くないよな。今のサヴィッスの街は、結構平らだったし。

 そうして、割とすぐに底に到着した。少し廊下があって、その先に広い空間が現れる。多分、上の教会にあるお祈りの間とそんなに変わらない。


「……これは」


 中に入ったところで、カーライルが絶句した。シーラもファルンも、言葉もなくその空間を見つめている。

 石のタイルを敷かれている床は、その石が打撃でも受けたように砕かれて散らばっている。下の土がところどころ見えているのは、その上のタイルが吹っ飛んでしまったからだろう。

 壁、多分土壁だったと思うんだけど、古い日本家屋みたいに骨組みがむき出しになっている。カーテンみたいに壁にかけられている布もズタボロだ。

 天井だけは何とか耐えているらしく、上を見てみると……あ、でも重量で骨組みがしなって来てるな。これ、補強しないと教会やばくね?


「……で、カーライル。ここは」

「かなりぼろぼろになっていますので断言はできませんが、マーダ教の神官が礼拝儀式を行った跡だと思います」


 多分、こういう建物には神官であるカーライルが詳しいと思うので聞いてみる。と、即座に答えてくれた。


「礼拝儀式、ですの?」

「要は、コータ様に祈りを捧げる儀式ですよ。マール教でも毎日、上にある教会などでやっていると思いますが」

「ええ。七日に一度の休日礼拝には教会に人が詰めかけますが、普段の日も家で祈りを捧げておりますわ」


 マール教の僧侶であるファルンとのやり取りを聞いてると、マール教でもマーダ教でもやることってあんまり変わらないらしいな。

 いやまあ、俺もサブラナ・マールもヤることあんまり変わらないけれど……いや、そこじゃない。


「……ちなみに、生贄とかは」

「大掛かりな儀式を手がけるならともかく、毎日のことなんて確保にも処理にも後始末にも手間かかりますからね。作物や料理などを捧げるくらいですよ」

「それもそうか」


 ばっさりとカーライルに切られた。ま、そりゃそうだよな。

 実家にいた頃は仏壇にお供えしてたけど、確かに炊いたご飯とお水くらいだもんな。お盆とかお彼岸に、季節の果物なり何なりお供えするくらいで。

 そりゃ、毎日生贄とか差し出してたら面倒でしょうがないよな。さすがの元俺も、そんなのは望んでないだろうし……というか、殺して差し出すなら生きたまま出せとか思うだろ。生きてるほうが吸えるし。


「大きな儀式は、せいぜい一、二度行われた程度でしょうか。血の匂いはしますが、これは最近のものですね」


 くん、と軽く鼻をひくつかせてシーラが言う。血の匂い……俺は気づいてないけど、敵対したやつとか放り込んでたりしてるなら当然しててもおかしくない。というか、確実に最近だよな。


「俺が現役張ってた頃の血なら、とうに匂いなんて消えてるはずだもんなあ」


 まったく、地味に何やってるんだろうな。サヴィッスの領主一族。

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