表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/432

191.好みじゃないこの街

 ずるずると床にへたり込むジオレッタから離れ、一息ついた。サヴィアと二人分で、結構精気を補充できた気がする。

 ぼんやりと俺を見ながら耳をぴるん、ぴるんと震わせているジオレッタに、そっと尋ねてみた。


「ごちそうさまでした。大丈夫か?」

「……はい、大丈夫です」

「そっか」


 なんとなく、懐いた子犬みたいな顔しながら頷いてくれたのでホッとした。うんまあ犬獣人だからな、間違いないだろ。

 そんな事を考えているところへファルンが進み出てきたので、尋問は彼女に任せるとするか。


「では、先ほどのお話、お聞かせ願えますか?」

「街の外部の『飾り』、とサヴィア様の一族がお呼びしているもののことですね。はい」


 今度はすんなり頷いてくれたけれど、それはそれとして室内の温度が一気に下がった、気がする。

 そっかー、あれ飾りなんだー。脳内でだけだけど、思いっきり棒読みで言ってしまった。

 領主一族にとっては、支配の象徴の飾りなんだろうね。うわあ、いやだいやだ。


「あれらのほとんどは、領主一族に反感を持っていたり対立していた者たちです。中にはもちろん、マーダ教信者もいたかもしれません。ですが、そういうことであったとして彼らは『飾り』とされました」


 あ、やっぱりそっちか。ったく、何でもかんでもこっちに押し付けてくるんじゃねえよ。

 善良なマール教信者に失礼だろうが、お前ら。まったくもう。


「ガチで一族独裁都市、みたいなもんか。マール教を後ろ盾にして」

「はい。ですから、ほとんどの住民は本気であるにしろないにしろ、領主一族を崇拝しております。ご息女であるサヴィア様が僧侶の地位にありますので、余計に」

「ふむ」


 カーライルがすっごく難しい顔になった。もしかして、こいつの故郷もそんな感じだったのかな。マーダ教信者である身内の中から裏切り者が出て、一族全滅だし。……残ってる連中は、ここの住民みたいにマール教バンザイ、とかか。残ってたら、の話だけど。


「マール教側は、何も言わないのだな」

「領主一族より多大なる献金がされている、と聞いております。また、対立勢力の女を貢ぐこともあると」

「……やっぱそれか」


 シーラのひとりごと、とも思える呟きにも、ジオレッタは素直に答えてくれた。やっぱりベタにそこ行くか、お前ら。

 というか、自分ちの娘を差し出す……てのは回数使えないし。


「たしかに、一人娘だったりすると教主以外の男に貢ぐってのはないか」

「領主などの娘は基本的には家にいるか、もしくはマール教の僧侶として修行に励むのが一般的ですわ」

「僧侶にうっかり手を出すとマール教が怖いし、だからか」


 ファルンの説明に納得して、それで出てくるのはため息ばかり。


 だから、対立している勢力をマーダ教とみなして排斥。そこに含まれる女性を賄賂なり商売道具なりとして貢ぐ、と。

 それで黙るマール教もアレなんだけど、観光都市ってことだしなあ。最悪切り捨てても、まあなんとかなるだろうとは思ってるんじゃないかな。

 例えば農村が潰れたら上納される食料が減るわけだけど、サヴィッスはそうではなくよそから輸入してるわけだ。その取り分がなくなるんで、むしろ自分たちのところに来る分が増える可能性だってあるし。

 ま、そんな簡単な話じゃないとは思うけどな。

 それにしても、女を貢ぐ、か。


「……男女逆だと、マーダ教もやってたんだろうな」

「否定はしません」


 シーラがあっさり頷いた。やっぱりやってたのか、俺。

 だよねー……というか、昔の俺、アルニムア・マーダが男を引っ張り込みまくってたから、張り合ってサブラナ・マールが女を引っ張り込んだってことみたいだし。

 ……なんというかこの世界の人類その他、ごめん。やっぱ悪いの俺だわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ