表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
190/432

189.物言いが好みじゃない

「ごちそうさまでした」

「あは、はっ、おそまつさま、でした」


 えらくぴりぴりする味の精気をそこそこ吸って、代わりに俺の気を吹き込む。そうしてやってから解放すると、僧侶さんはだらしなく床にべたんと座り込んだまま答えた。


「お前の主は今からこの俺、コータだ。わかったな」

「はい、ご主人様あ。このサヴィア、ご主人様の下僕としてお仕えいたしますう」


 ふーん、サヴィアっていうのか。この街サヴィッスって名前だったはずだけど、何かゆかりでもあるのかね。

 なんてことを考えていると、そのサヴィアが足元までにじり寄ってきた。こっちは外見ロリっ子なのに、その男に媚びるようなどろんとした目はどうかと思うぞ。てか、僧侶がそれって大丈夫か、こいつ。


「ご主人様。ジオレッタも下僕になさいます、よね?」

「ジオレッタ?」

「わたくしの同僚の僧侶ですわ。か、かわいらしい犬っころですのよ」


 犬っころ。そうか、獣人の僧侶さん、犬獣人なのか。しっぽ短い種類なんだな、なるほど。


「もちろん、そのつもりだ」

「良かったですわあ。わたくしだけしていただくなんてそんなこと、不公平ですもの」


 俺が頷くと、サヴィアはとっても嬉しそうに笑って足にすりすり。あ、へんたいだったらしい、このひと。

 しかし、どうも言葉の使い方が良くないな。一応突っ込んでおくか。


「ただ、同僚の僧侶を犬っころと呼ぶのはどうかな。獣人も等しく、お前たちの神の加護を受けているんだろ?」

「犬など、犬っころでかまいませんわあ」

「……ふうん」


 断言しやがった。獣人とか差別してる系か、そりゃまあいるだろうけどさ。

 しかしこいつ、目の前にいる俺の角に気づいていないわけでもなかろうに。アムレクとミンミカ、そして鳥人であるシーラもいるっていうのにな。


「かんでいいですか、コータちゃま」

「コータちゃま、ぼくもこいつ、ひっかいていいですか」

「アムレク、ミンミカ、落ち着け。シーラも、殺気を抑えろ」

「は。失礼いたしました」


 案の定、当の三人は怒ってる。シーラなんか、既に剣の柄に手がかかってるしな。

 でもまあ、昼間から僧侶相手に刃傷沙汰はまずい。めっちゃまずい。

 外にはこいつの同僚さんのえーと、ジオレッタもいるし、多分他の観光客とかも来てる。そこで僧侶斬ったらとてつもなくまずすぎるんだって。


「今しばき倒したら、俺たちが怪しい連中だってバレちまうだろうが」

「……そう、ですね」


 おずおずと、シーラが剣から手を離す。うん、それでひとまずは大丈夫だと思う。ウサギ兄妹も、引っ掻いたり噛んだりしたい気持ちはわかるけどな。


「ですが、このまま放っておきますの?」

「今はな」


 ファルンが首を傾げながら、サヴィアをものすごーく白い目で見下ろしている。うわあ、仕草だけ見りゃ可愛いのに視線がえげつない。それに気づかず俺の足元でえ、え、と不思議そうにキョロキョロしているサヴィアも大概だけどな。

 いやもう、引っ掻いたり噛んだり斬ったりするだけじゃ収まらないわ。ちょっと、エグいやり口を考えてやろう。


「俺たちが街を出るまでは、普通の僧侶として働け。その後の指示は、出るときに与えてやる」

「はい、ありがとうございます」


 なので、ひとまずは今のままでいてもらうことにする。どうせ俺の正体がバレるにしても、少しでも時間を稼いでおきたいし。


「……いかがなさるおつもりですか」

「痛い目を見てもらうのと、時間稼ぎをできる方法を考えるさ」

「承知しました」


 カーライルにひそりとささやくと、彼は納得した様子で表情を崩した。ついでに足元にいたサヴィアを俺から引き離すのを忘れずに、ずるずると。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ