表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/432

181.神の力を示すモノ

「サヴィッスの街自体は、警備というか入場審査は結構ゆるいんです」


 わたしでもほいほい出入りできるから、とボロニアは斜めになった牛車の座席で笑う。坂道を上り始めたから、みんな斜めなんだよな。


「ただし、捕まったらあとが怖いってのはそこらへんでやらかしてるんで、それでも入ってくるやつはかなり度胸がある、っていうか」

「やらかしてるって」


 何か不思議なこと言うやつだな、と思いつつ尋ね返してみる。ファルンとカーライルは今ボロニアの言った内容に心当たりがあるらしく、少し難しい顔になっていた。

 コングラも眉をひそめていたけれど、そのうち窓の外を指さした。とっても嫌そうに。


「もうすぐ見えるっすよ……あ、あった、あれなんかそっすね」

「え」


 思わずコングラの指先に視線を移して、その先に見えたものが何か、一瞬俺には分からなかった。前の世界で見ることのなかったようなもんだから、そもそもそういう連想ができなかったんだろうな。


「……あれは」


 小高い丘の上にあるサヴィッス。その丘を通っていく道の山側、枯れた木とか打ち込まれた杭とかに、ズタボロになってぶら下がっているのは……骸だったり、骨だったり、朽ち果てて衣服しか残っていなかったり。


「……マーダ教信者、か」


 その中の一つが、俺の紋章をかたどった首飾りをぶら下げていたようだ。シーラはそれを見つけたようで、吐き捨てるようにそう呟いた。

 ボロニアの「そうです」という短い答えの後に、コングラが説明を続けてくれた。


「教会の地下に閉じ込められて出てこられない、ってのはまだいいほうで。地下に入ろうとしてとっ捕まったり、街中でうっかり捕まったりするとああなる、ことがあるんす」

「見せしめか」

「そうですわね。これはサヴィッス特有の悪習だと伺っておりますわ」

「悪い習慣、だと分かっていてやっているのか」

「反対意見を申し上げた者が吊るされる、という噂もございますの」


 ファルンの話を聞いてカーライル、すごーく嫌な顔になってる。もしかして、殺された家族もあんなことに……ああ、やめておこう。俺が聞いても仕方のないことだし、取り返しはつかない。

 いくつかぶら下がっている中の一つに、ミンミカが反応した。


「ふぇっ、おにーちゃんっ」

「ミンミカ、だいじょうぶか?」

「ミンミカ、どうした……あ」


 アムレクにしがみついて垂れ耳をぴるぴる震わせているミンミカ。彼女が見たものは、長い耳を風に揺らされながら吊られている、ウサギ獣人の姿だった。さすがに、知り合いかどうかは分からない……だろうな。顔見えないし。


「……ただ、こう言っちゃアレなんですけどコータ様も昔は似たようなことやっていた、って記録があるんすけど」


 ここでコングラが、何か言ってきた。何、アルニムア・マーダもやったことがあるのか、あれ。

 記録だけなら良かったんだけど、ここには生まれ変わってきた証人もいてな。ルシーラット、っていうんだが。


「その……実は自分、見たことがあります。アルタイラ様が、かつてのコータ様に害を為そうとした愚か者を多く吊っておりました」

「マジかー……」


 彼女自身は、自分の直属の上司だったアルタイラの行為として見ていたようだ。しかしまあ、俺もやってたんだろう、と思う。

 ……そりゃそうだよな。そうでもなきゃ、いまさらマール教があんなことやるわけもないし、多分。

 けど、あれでマーダ教信者がビビるかというと、逆なんだろうなあとは思う。怒って、余計にマール教への敵対心を募らせる。


「見せしめってやつの必要性は認めるけど、程度にもよるんだよな。今後はさすがに、ああいうのは控えたいな」


 ついでに、サヴィッスの街も潰せりゃいいけど……それは、もうちょっとこちらの戦力が揃ってから、にしよう。うん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ