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180.神の力の丘の町

「正面に、サヴィッスの街が見えますよ」

「お」


 ジランドに言われて、その肩越しに牛車の進む方向を見てみる。


「……あ。街のあたりだけ、ぼこっと高い」


 視線の先で、ぼこっと小高い丘ができている。その上に石積みの塀があって、そこに作り付けられている門めがけて道が続いている。途中まではほぼまっすぐ、そこから丘の上の門まではくるっと丘を一回りしていくような感じだ。

 最初からある丘の上に作ったのかな、という俺の推測は、コングラの説明であっさり粉砕された。曰く。


「あれ、サブラナ・マールがやったことになってるそっす。アルニムア・マーダの祠を封じ込めるために」

「あれって、地面盛り上がってるのが?」

「そっす」


 マジか。サブラナ・マールってそんなことできるのか……できるんだろうな、神様だし。

 いや、俺その神様の敵である神様だけど。てことは、力とか記憶とか回復したら、俺もできるのか?

 ……程々にしとこう、うん。


「元あった街が焼き払われた、ってのは言いましたっけな。その上に土盛ったのがサブラナ・マールだという言い伝えがあります」

「だから、生活用水とかは深い井戸から汲み上げて使ってるらしいですね。最近は水が足りなくなったんで、遠いけど川からも引いてるそうですが」


 ジランド、そしてボロニアの説明。……連中、自分たちで焼き払った街を埋め立てたわけか。

 あ。


「それで地下かよ」

「……そういうことですか。なるほど」


 ふっと俺が口にした言葉に、カーライルが続いた。多分、こいつも同じことを推測したんだろう。


「サブラナ・マールだかマール教信者だか知りませんが、焼き払った街ごとコータ様の祭壇を封じ込めるために、どこからか土を持ってきて埋めてしまった。さらに、その上に大量の土なり石なりを持ってきて盛り上げて、それを土台にして今のサヴィッスの街を作り上げた、ということですね」

「そういうことか……ならば、祈りの祠も地下になるはずだ」


 カーライルの解説、つまり俺の推測は割と間違ってなかったようで、ジランドたちから反論は出なかった。そして、シーラが『地下』の意味を確認している。元の街を埋めた時点で、たとえ地上にあったとしても祠の場所は地下、ということになる。


「最初から場所が分かってるから、文字通りその上に自分たちの教会を作って罠を張った、ってことかあ」


 ボロニアが、呆れたようにがりっと髪を掻く。手入れする習慣とかコンディショナーとかあんまりないようで、結構ばさばさなんだよな。適当なところでファルンあたりに手入れさせよう。

 サヴィッスの街の風呂屋とか、目的地である教会に多分あるだろう風呂で。


「僧侶はもう、二人共下僕にしてしまうつもりだけど。他にも、例えば教育部隊とかいるかもしれないからな、注意してくれ」

「承知しました」

「わっかりましたー」


 常駐が二人ってことは分かっているので、両方共吹き込んでしまえば教会全体がこちらのもの、と言っていいだろう。

 だけど、サングリアスみたいな教育部隊がふらふらうろついてるらしいから、そいつらに見つからないように全員に注意を促す。で、ミンミカ、お前ちゃんと分かってるか?

 そうそう。もうひとり、しっかり注意しておかないと。


「シーラは、ルッタが出てきたからってうっかり戦闘態勢にならないこと。マール教の幹部なんだから、敵対心持ったら即マーダ教だってバレるからな」

「ぐっ……しょ、承知しました」


 一瞬息を詰めたのは、それなりに自覚があったってことだろうか。けどほんと、いきなり斬りかかりでもしたらその時点でマーダ教認定だぞ。実際そうだけどさ。

 で、シーラ以外の皆にも声をかけておく。うっかり殺気立ったり、何かのはずみで一悶着起こされても面倒なんだから。


「他のみんなも、気をつけてくれな。罠なんざ造り付けてあるってことは、マール教は殺る気満々ってことだから」

「……私やアムレクはともかく、女性に関しては違う意味でヤる気満々かもしれませんね」

「ぼくはおすだから、きょうしゅにはすかれないですねー」


 ……全力でボケてるのか本気なのか分からないアムレクは置いといてカーライル、お前そういう冗談言えたんだな。

 ちゃんとした大人の男、だったわけだ。残念イケメンだけど。

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