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173.活動範囲に定宿が

 ジランドは牛車を器用に操って、ボートランの大通りを街の外れ近くまで進んでいった。そこには宿屋が一軒あって、横に牛車が入れるサイズのでっかい門があった。


「ここが、俺らの定宿っす。御一行様には、上の部屋が確保されてると思いまっさ」


 その前で牛車を止めて、ジランドは俺たちを振り返る。さすがに人がいるかも知れないんで、言葉遣いは外面仕様だ。


「ジランドおじさんたちは、いつもお部屋が準備されてるんですか?」

「ああ。牛車の手入れなんかもあるんでな、奥に離れみたいな感じであるぜ」


 ロリっ子のある意味特権、おっさんに腰持たれて降ろされながらの会話。中身はいい年のはずなんだけど、空飛ぶ感じでいいなあ。


「ついでに荷物送ったり、手紙の配達受けたりするんすよ。行き先さえ合ってりゃいいんで」

「そうなんですか」


 ファルンの手を取って降車補助しつつ、コングラが言葉を続ける。

 そういえば、前の世界と違って専門の郵便牛車とか見かけなかったな。乗り合い牛車の御者さんが預かったりはしてたみたいだけど。


「専門の人、いないんですか」

「大都市同士を往復したりするんなら、手紙や荷物専門でも儲かるかもしれんけどな。いつどういうモノ運ぶか、なんて分からんだろ」

「お貴族様や商人さんならだいたい、お抱えの牛車隊持ってます。あとは乗合牛車に荷物乗っけてもらうとか……修行する僧侶様がちらほらいる関係で、人は結構動くんで」

「それもそうだ」


 尋ねてみたらジランド、そしてコングラからきっちり答えが返ってきた。専門でやるほど手紙のやり取りとかがないというか必要性を感じないから、ってことらしい。

 俺たち全員と荷物を降ろしたところで、コングラが次の予定を教えてくれた。ジランドは牛の背中をなでてやっている。おつかれさま、とかそういう感じだろうか。


「明日の昼前には出ますんで、そこら辺はよろしく。次のサヴィッスは近いんで、明後日の夕方には着けますぜ」

「承知した。まだ出だしではあるが、ご苦労であったな」

「いやいや、そちらこそ。んじゃ、牛車しまって買い出しがあるんでー」


 シーラにサラッと答えて、コングラはひらひらと手を振りながら去っていった。と思ったらどうやら、牛の誘導に入った模様。さっき見たでかい門の奥から、家畜系特有のぷんとした臭いが漂ってくる。あっちに牛の寝床とかもあるんだな、なるほど。

 さて、地味に一緒にいるボロニアたちなんだけど。多分、俺たちの頭数には入ってないよな? 宿、どうするんだろ。


「ボロニアお姉ちゃんたちはお宿、どうするんですか?」

「おねえちゃんっ」

「落ち着いてください姐さん!」


 ……あ、何かめっちゃ効いてる。あとオマケの皆さん、姐さん呼ばわりなのか。ベタだけど。


「……ボロニア。気持ちはよく分かる」

「シーラ様もですか」

「自分もだが、実はレイダ様がな」

「何と」


 何の話をしてるんだ、お前ら。特にシーラ、どがつくレベルの真剣な表情で、言ってることが微妙におかしいぞ。

 詳しく言ってるわけじゃないが、レイダの名前が出てきた時点でわかるっつーの。


「あ、えっと。あたしたちはこの街なら別に定宿があるんで、そっちで寝るんだよ。だから、心配しなくていい……です」

「よかったです!」


 おお、ちゃんと自分たち用の宿があるんだ。そりゃ、いくら盗賊やってるからってずっと街や村の外で生活してるわけでもないだろうしな。盗ったものとか売ったり、生活物資買ったりしなくちゃいけないんだから。


「コータちゃま、おへやはいりますよー」

「はーい、今行くー」


 さっさと宿の建物に移動してたミンミカに呼ばれたので、行くことにしよう。久しぶりに布団で寝られるのは、やっぱりいいもんだしな。

 いや、ミンミカを布団代わりに寝るのも乙なもんだけどさ。

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