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171.のんびり進んで話しして

「いやいや、参ったね」


 何事もなかったかのように動き出した牛車。その御者台で、ジランドは肩をすくめて呟いた。……本人にしてみればひとりごとをぼそり、のつもりなんだろうけれど、こっちまで聞こえんだよねえ。


「つーか、何度思い返してもサブラナ・マールには腹立つっすね」

「そうか?」

「いやだって、コータ様もむかつきません? もともとの力とかすこーんと失くしちゃったの、サブラナ・マールのせいなんでしょ?」


 こちらは客車、俺の向かいに座っているコングラだ。なお、俺の両隣にはシーラとカーライルがしっかり座っている。背後は例によってミンミカだけどな。ふかふかウサギの背もたれは気持ちいい、いろんな意味で。

 で、コングラがムカついてる理由なんだが、つまりは俺の信者が俺の現状を知って嘆いているんだよね。グラマーエロ美邪神だったらしいのが、すっかり獣人ロリっ子かつ精気吸う相手を男から女に宗旨変え、だし。


「こう言っちゃ何ですが、今のコータ様可愛いのはいいんすよ。そこだけは感謝してます、サブラナ・マールには」

「可愛いのはいいのか」

「もちろんっす」


 即答しやがった、コングラめ。いやまあ、俺だって拝んでる神様が可愛い子ならいいけどさ。この場合、自分自身のことなんで……うーん。


「それで、勢力を復活させるために四天王様や他の配下の方々を探しに世界を回っている、とそういうことなんですね」

「なし崩しにだけど、そういうことになるな。ネレイデシアを復活できた、ってのがでかくてさ」

「なるほど。他の四天王様も同じように復活できるだろうと、そうお考えなんすね」

「そういうこと」


 俺のことは置いておく。一緒に乗ってもらってるボロニアからも口を挟んでもらって、それに答える形で自分のこれまでを整理してみる。

 俺、すなわちアルニムア・マーダは存在してる時点で、多分今の世界をまるっと敵に回している。それに対抗するにはどうしても、四天王とかシーラみたいな配下とか、とにかく力が必要なんだよな。

 今回マール教の教育部隊を一つまるっと下僕にできたのと、マーダ教信者の盗賊団をこれまたまるっと配下にできたのはその第一歩、……じゃない第何歩めだ、まあ数はともかく申し分ない。

 と、気になったので一応言っておこうか。


「ジランド、コングラ、ボロニア。あんまり言葉遣い、かしこまらなくていいぞ。つか、俺の呼び方、さっきまで通りでいい」

「えー」

「マジすか」

「いいんですか、コータ様」


 この三人は、なんだかんだで思いっきり砕けた口調のままなんだけどね。ただ、俺の呼び方がどうもまずい。人前に出る前に修正しとかないと。


「いや、だって。育ちの良くなさそうな獣人の子供相手に敬語使ってたら、さっきのお前さんたちじゃないけどそりゃおかしい、って思うだろ」

「あー、それは確かに。あたしたちの間じゃともかく、マール教共に変な疑い持たせたくないですねえ」


 すぐに理解してくれたのはボロニア。彼女、さすが盗賊のかしらだけあってそれなりに頭の回転は良いみたいだな。

 まだまだ仲間とか配下とか下僕とかが少ないんで、マール教の上層部にバレるまでにはもうちょっと増やしておきたいし、そうなると変な動きでさとられないようにするしかないし。


「なんで、頼むな。俺の方も気にしてねえし……元の記憶がまるっとないせいかもしれないけどさ」

「承知、嬢ちゃん」


 御者台のジランドからは、さらっと元通りの呼び方での返事が返ってきた。ボロニアはどうしよう、と戸惑っているようだ。

 で、コングラはあっさりと尋ねてきた。


「先輩方は、何てお呼びしてるんすか」


 先輩て。俺に仕えるのが先だったから先輩、ってことか。

 あと俺の両隣及び後ろの三名、サラッとそこら辺流して答えてくれた。


「ミンミカたちは、コータちゃまとよんでるです」

「人前ではコータちゃん、ですね」

「自分やファルンもそうだな」

「分かりました。じゃあ、コータちゃんで行くっす」


 ……それで良いのかコングラ。

 ま、コータちゃんって呼ばれ方はもう慣れたし、いいけどな。

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