161.意外なとこから湧いてきた
窓から外を覗いてみる。ああ、もうだいぶ進んでたんだ。
さっきコングラが山って言ったのは、いつの間にやら低い山がすぐ近くまで来ていたからで……山というか丘というか、まあ手入れされてない森っつーか藪がびっしり生えてるこんもりした小山なんだけど。
で、その藪をかき分けるようにして十人ほど、古典的なゲームに出てくるタイプの軽装の盗賊がぞろぞろと出てきていたわけだ。
ただし。
「おうおう、元気そうじゃねえかこわっぱども」
「げ」
「じ、ジランドの旦那……」
とっても楽しそうに指鳴らしてるジランドを見て、全員腰が引けている。駄目じゃん。
シーラが窓から確認して、ちっと舌を打った。「大した連中ではありません」って俺に言ってきたから、そうなんだろう。
彼女の出る幕、なさすぎってか。
「まっとうな道に進むんじゃなかったのか? ボロニア」
「仕方ねえだろ! 俺らにろくな働き口があるとでも思ってんのかよ!」
ジランドが呼びかけた一人、ボロニアって名前らしいそいつは短刀を両手に構えて、僅かに後ずさりながら構えている。
つか、台詞回しがチンピラっぽいしバンダナで髪隠してるし服装だって他の奴らと大して変わりないけどあれ、女の子だ。多分、十代そこそこの吸ったら新鮮で美味しそうな。
……基準がだんだん邪神化してるなあ、俺。
「あらあら。どうなさったんですの?」
不意に牛車の扉が開いて、ファルンがのこのこと出ていった。いや、確かにジランドや、最悪シーラがいるから大丈夫そうだけどでも、無防備だな俺の下僕。
しょうがない、と呟きつつシーラと、そしてカーライルも腰を上げる。俺は……。
「いくですか? コータちゃま」
「ぼくたちもいますから、もうしばらくまちましょう」
起きてたんかい、ウサギ兄妹。
まあ、お前らが起きてるなら戦力も問題ないし、しばらく様子見か。
そんなことを考えてたら、どこか妙な会話が耳に飛び込んできた。
「あ、僧侶! 旦那、まだマール教運んでるんですかい!」
「仕方ねえだろ。この世界、マール教にくっついてなけりゃ、まともに生きてけねえんだからな」
「しー、しー!」
最初に叫んだのがボロニア、それにジランドが答えて、しー、とか言ってるのはコングラだ。
と言いますか、ファルン見て僧侶と反応して、マール教に対してあんなセリフ吐き出してるみなさんとか、シーと言ってるコングラって、要するに。
「何だ、そういうことか。アムレク、ミンミカ、出るぞ」
「わかりました、コータちゃま」
「いっしょにでますー」
ここまでご都合主義だとマール教の罠か、って思うけれど。
それならそれでいいさ。どうやらこの世界、俺の信者たちは思ったほど少なくないらしいからな。