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160.畑を見ながら寝ていたい

 のんびりと、俺たちを乗せた牛車が道を進んでいる。窓から外眺めると、程々に広がった畑の作物……多分麦とかそのあたりがそよそよ風にそよいでいる。街中に広い畑作れないのは当然だから、ここらへんは街の人とかまだ出入りしている範囲のようだ。

 そのせいか、ジランドたちが言うより牛車は揺れないよな、と思う。いや、自動車とか電車とかに比べたらガタゴトすごいんだけどさ。これの前が船だったから、まだましという感じ。


「最初の街ボートランまでは、三日ってとこっす。二日ほど野宿なんで、嬢ちゃんたちは気をつけてくだされや」

「気をつけまーす」


 いや、こっちが気をつけるっつっても襲撃は向こうからやってくるもんだから。

 そんなことを脳内で考えてたら、ミンミカがはい、と手を上げた。


「よるはおにーちゃんとミンミカでみはりするですから、いまねていいですか」

「ぼくも、ちゃんとみはりはしますから」


 あ、これ夜の見張りにかこつけて乗り物酔い防止に今寝る気だな。いや、起きてても案外やることないしいいんだけど。

 そう考えたのは俺だけじゃなく、ジランドもだったらしい。


「おう、寝とけ寝とけ。どうせ、あまりやるこたねえだろ」

「それに、お前たちは酔うからな」


 シーラがぼそりと突っ込んだのに、アムレクが肩をすくめる。ま、昼間はシーラもいるし、大丈夫だろ。

 牛車の主の許しを得たのに安心したのか、早速ウサギ兄妹はくるんと丸まった。この辺、地味に獣っぽいんだよな。寝るときの枕代わりにもなるぞ、こいつら。


「はーい。それじゃ、おやすみなさいです」

「おやすみなさーい……コータちゃま、クッション代わりどうぞー」


 い、が終わらないうちに寝息立ててる二人、めちゃくちゃ寝付きがいいな。その分、何かあるとすぐ目が覚めるんだろうけれど。草食系は、地味に苦労してるだろうしなあ。

 で、本人がOK出してきたのでアムレクを背もたれ代わりにしてやる。うん、いいなあウサギ獣人、もふもふで。


「いかがなさいました? コータちゃん」

「んー。畑すごいな、と思って」


 カーライルに声をかけられたので、まだ外に見えている畑の方に話を振ることにする。ジランドとコングラ、という部外者がいる以上、うっかり変な話できないしな。


「ああ。街の周囲はどこもこのようなものですが……そうか、街道沿いに広がっているところは今まで、あまりなかったですね」

「ないの?」

「収穫の際に運び出すのは楽でしょうね。ですが、盗賊とまでは言いませんが畑の持ち主より前に収穫して持っていく輩がいる、という話をよく伺います」

「それはそれで泥棒ですね」


 そういうことか。食料泥棒ってことになるから、洒落にならねえよな。

 それで、あまり街道沿いには畑を作らない、と。見張りをつけたりするって手もあるけど、これだけ広いと無茶だよなあ。あ、柵とかは基本中の基本だぞ。今見えてる畑も、がっつり柵作ってあるし。

 村で見張り、か。してたかもしれないのが一人いるし、聞いてみよう。


「そういえば、シーラお姉ちゃんは畑の見張りとかしたんですか?」

「いえ。そもそもナーリアの村は所在自体が山奥だったので、人の畑のものに手を付けた愚か者には相応の処罰が下ったかと。具体的にはフルボッコ、というやつですが」

「あー」


 そりゃまあ、山奥だと小さな畑しか作れそうもないもんな。そこの作物持っていったら、そりゃフルボッコだわ。

 それよりシーラ、お前さんがフルボッコなんつー言葉使ったのがすごいと俺は思う。そういう砕けた言葉も使えたんだ、ってさ。


「マール教でも、見回りなどに力を入れているのですがねえ。それと、盗人を発見して連行してもらえれば相応の賞金をお支払いする、と決めている教会も多くありますわ」

「なるほど」


 ファルンが口を挟んできたのは、マール教もそういう問題に対処してるぞって主張だな。金が出るなら頑張る、人もいるってことか。

 いろいろあるもんだなあ、と思っていると、コングラが声を上げた。


「親方、山からやな気配が」

「俺も感じた」


 ジランドの返事とほぼ同時に、牛車が動きを止めた。カーライルが「盗賊ですか」と御者台に尋ねる。


「ココらへんにいた奴ら、いっぺん叩き潰しといたんですがねえ。こりてねえな、こりゃ」


 ……なあ、ジランドのおっさん。指バキボキ鳴らしてるの、おっさんめっちゃやる気ってことじゃないかなあ。

 シーラ、今すぐ出番はなさそうだな、うん。

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