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158.便利な足を手に入れた

 教会が手配してくれた牛車は、五日ほどでやってきた。ちょうど近くの街にいたらしく、というか近くの街にいたのを捕まえてもらったらしい。多分、たくさん確保してあるんだろうな。タクシー会社か何かか、マール教って。


「ジランド、と言いまっさ。メイヒャーディナルの峠は実家の近くで、よく案内申しつかります。よろしゅう」

「助手のコングラっす。よろしくー」


 ぱっと見五十代くらいのマッチョおじさんがジランド、助手のコングラは軽い言い方のわりに鍛えてる三十代と見た。二人とも、カーライルとよく似た金髪の短髪で、肌は日焼けして浅黒い。

 とにかく腕が太いのは、牛車が結構丈夫そうなでかいやつなのともう一つ、連れてる数頭の牛がどう見てもバッファロー系だからだろう。制御するのに腕力と体力が必要そうだ。

 ま、ともかくきちんと挨拶だけはしよう。


「よろしくおねがいします。ええと……ジランド、おじちゃん?」

「おう、おじちゃんでいいぞ、嬢ちゃんや」

「はい、ジランドおじちゃん、コングラお兄ちゃん」


 俺の外見だと推定三十代でもおじちゃんだが、ここはお兄ちゃんと呼んで差し上げよう。単純だけど、コングラはあっさり浮かれてくれた。わかりやすくていいなあ。


「聞きました親方? お兄ちゃんだって」

「そりゃお前、若造がおじちゃん呼ばわりされたらただの老け顔だろうが」

「あだっ! だあもう、いつもいつも痛いんすよ!」

「おう、すまんすまん」


 うむ、あの太い腕でばっちーんと背中叩かれたら痛いよなあ、コングラ。しかも、毎度あんな感じらしいな。毎回アレで済ませてるみたいだし、なにげにコングラも鍛えてる。

 シーラとアムレク、ミンミカが荷物の積み込みをやってくれてる間にカーライルとファルン、そして俺がこの二人と話をしているわけだ。メイメイデイでそれなりに買い物はしたけど、荷物なんて基本的に次の街までの食料とか寝具とかだしな。


「うちの牛車は山道用なんで、丈夫なんすがだいぶ揺れるっす。途中の街で俺らも休日取らせてもらうんで、お客さんたちも休んでくださいや」

「専属での旅ということになりますと、資金繰りなど大変なのではないですか?」

「そこはそれ、僧侶様の修行に同行ってことになるんで、嬢ちゃんたちと同じ扱いですわ。マール教は、僧侶様が絡むとそこらの商人みたくケチくさいことはしないんで」


 ジランドの説明にファルンが尋ねてみると、ジランドは少し声を潜めてそんな答えを持ってきた。ああ、俺たちもファルンの同行者ってことでいろいろ支援してもらってるけど、それは専属の牛車にも及ぶわけだ。

 マール教、金持ってんなあ。グレコロンみたいな金持ちの信者、どんだけ教会につぎ込んでんだろうな。


「……もっとも、僧侶様絡み、ですけどね」

「え」


 カーライルのえ、という声がなければ俺は、今のぼそっと聞こえた言葉を空耳だと思っていただろう。

 カーライルでもファルンでも、ましてや俺でもないそのセリフは、コングラが口にしたものだった。

 ものすごく暗い、何というか怨念混じってるみたいな声で。


「コングラ」

「あ、すんません」


 ジランドにたしなめられて、コングラはぺろりと舌を出す。

 ……よく分からないけれど、あんまり深追いしないほうが良さそうだ。こっちだって、いろいろ探られても困るしな。

 お互い、メイヒャーディナルの峠までの付き合いだし。

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