153.全く無理は……してないな
海鮮バーベキューで腹はいっぱいになったけれど、それでいっぱいにならない腹も俺にはある。
好きでこんな身体なんじゃないが、こっちの空腹を満たす手段は好きだ。
「んー、むんっ」
「んふう、ん、ん」
レイダと別れて宿に戻った後、ミンミカの精気をゴチになる。いつものようにいただきます、をした後で唇を重ねると、さっき食ったほうれん草の味がちょっとだけした。これはこれで良い味付けだな、と思いながら程々に吸って。
「ごちそうさまでした」
「おそまつでしたー」
何ていうか、すっかり恒例になってしまったな。ゴチになったんだからちゃんと挨拶するのが当然だろう、と思うのは俺だけだろうか。
つかミンミカ、精気吸われたのに元気だな、おい。
「わーい、コータちゃまにすってもらいましたー」
「いや、しんどくないか?」
「ねむくなるので、よくねむれます!」
「あ、そうなの……」
俺の『食事』は、ミンミカにとっちゃ寝る前の風呂か何かか。
突っ込むのをやめた俺に対して、何故かファルンが「そうですわね」と同意してきた。どうやらミンミカに、だな。
「コータ様に精気を吸っていただくと、程よく疲れが出るというか」
「昔と違い、一晩休めば回復する程度にしかお吸いにならないので、自分は心配です」
シーラ、どこ心配してんだよ。
元の俺、一回あたりどれだけ吸ってたんだろうな……下僕量産してたみたいだし、吸い殺しはあんまりないと思うけど。
というか、前は基本的に男ばっかり吸ってたんだっけ。アムレクやカーライルなら、体力もミンミカよりはあるだろうけど……うーん、やっぱり女の子のほうが良いに決まってる。グレコロンのアレは緊急避難だ、うん。
「いやまあ、元の状態なら足りなかったりするんだろうな。いろいろ、術とか能力とか使ってたんだろうし」
とりあえず、今のところ必要な分だけ吸えてる。以前より吸わなくなってる理由を、俺は推測して言葉にした。
要は皆に丸投げしてるから、俺大して何もしてねえよというわけだ。ロリっ子便利。
「けど、今の俺は身体のサイズだってこうだし、さほど能力なりなんなりを使えるわけでもないからな。その関係で、消費が少なくて済んでるんだと思う」
「なるほど」
ロリっ子便利、を言葉を飾るとこんな感じになった。シーラも納得してくれたようで、助かった。
「まだ配下も少ないし、ちゃんとした拠点もない。マール教にバレたら多分、叩き潰されるなり何なりして終わりだ」
「それじゃコータちゃま、あんまりあばれるわけにはいかない、ですね」
「そういうこと。せっかく見つけたお前らを失くすわけにはいかないし」
だーもーかわいいなあミンミカは、ある意味俺専用もふもふって最高。大丈夫か俺、一応邪神だけどこんな堕落したことやってて。
そんなぐうたらなこと考えつつ、一応言葉は選ぶ。ファルンあたりにはバレてそうだけど、いいか。
「ぼちぼち増やしていかないとな。配下も、下僕も」
「下僕はあちこちの街にいますけれど、コータ様の精気供給源というわけではありませんものねえ」
「そういう意味ではファルン、お前も違うだろ」
「わたくしは、表向きコータ様の保護者でその実隠れ蓑、ですものね」
……こいつ、どこまで正気なんかな。
なんとなく怖くなってきたので、これからもう一度俺の気を吹き込んでおこう。シーラ、手伝え。