152.やっぱり無理はさせたくない
「コータちゃん。大ホタテのバター焼きをお持ちしました。どうぞ」
不意にカーライルが声を上げた。ああ、もしかしてレイダのたこっぱい押し付けを見てられなくて席を外してたか。ごめんな、残念イケメン神官よ。
「……でっか!」
で、『大』ホタテというだけあって殻のサイズが俺の頭まるっと隠れるくらいの大きさだった。メインである貝柱、そのまま焼いて輪切りにしてハンバーガーに挟んでもはみ出るぞ、これ。
「ここまで大きいのは、私も初めてです」
「皆で取り分けて食べたほうが良くないですか?」
「それが良いかと、自分も思います」
取ってきたカーライルが、苦笑しながらそんなこと言うし。ファルンの意見には、シーラ同様俺も賛成だ。これ全部、一人じゃとても食えないって。ひもとか噛み切れるのかな?
「この辺では大きいのが採れるんだけど、その中でもかなり大きい方だねえ」
「……かい、たべられるかな」
やっとこさ俺を放してくれたレイダが、楽しそうに切り分け用のナイフを手にする。と、アムレクが首を傾げているのに気づいたのか、カーライルがもう一枚持っていた皿を差し出した。あ、この匂いは確かにウサギ獣人向けだ。
「ああ、アムレクとミンミカにはほうれん草のバター炒めがあります。どうぞ」
「ほえ。ありがとうですー」
「ミンミカ、バターのいいにおいはすきです」
だよなー。どうやら草食系向けらしく、ほうれん草以外に混じっているのは全部野菜系だった。ベーコンとか一緒に炒められてるのも、アレはアレで美味いんだけど。
「んで、まあそれはともかく」
結局、大ホタテはウサギ兄妹除く五人で取り分けてもなかなかの分量になった。ひもも細かめに切ってくれたので、もぐもぐと顎の訓練がてら食っている。
で、切り分けてくれた当人は長めに切ったそのひもをぺろんと食ってしまってから話題をもとに戻した。
「そういうことなら、明日でもお邪魔してみるかね」
「よろしいのですか? 自分やレイダ様のようにしないと、最終的な確認はできないのですが」
つまり、シャチ三代のことである。結局は俺が吸ってみなけりゃ、例の白いもやっぽいのが入っているかどうかは分からないわけで。
シーラが言ってるのはそういうことだよな。見て分かる判定方法があるならいいんだけど。
「何、ちらっと見るだけさ。あたしの配下だったわけだし、何となくでも分かるんじゃないかなって思ってね」
レイダはというと、せっかく配下が生まれ変わってきてるっぽいから見に行きたい、という雰囲気がむんむんしている。お婆さんかお母さんならまだいいけど、俺よりちっこい娘さんがビンゴだった場合どうするんだろう、こいつ。
「……ちっちゃい子がそうっぽいなら、言ってくれ。さすがにさ、あんな小さい子まで巻き込みたくはねえからなあ」
「うーん」
一応釘を刺してみると、いや分かってるんだけどね、という表情になる。まあ、主神たる俺が外見ロリっ子なんで、ちっちゃくても戦えるんだろう、と考えてるのは分かるんだが。
「……あいつは結構強かったから、ちっちゃい子でもその力が出てくるなら大丈夫、とは思うんだけど」
ほらな。
だけど、戦闘力としてはあまり考えたくない。何しろ、俺がせいぜいイヤボーンな衝撃波くらいしか使えてないわけだからな。
「レイダ様」
「分かってる。コータちゃまのご意思は絶対さ」
だからカーライルがたしなめてくれて、レイダもそう言ってくれて。
本当は一人でも配下は多いほうがいいんだけど、でもやっぱりなー。さすがになあ。
「ごめんなさい、レイダお姉ちゃん」
「いやもう、いいんですってえ」
「……はいはい」
ひとまず、ロリっ子愛でるのは俺で勘弁してくれな、ネレイデシア。