151.生活圏で違う感覚
レイダと相席することにした俺たちは、食べるものをいろいろ取ってきた。魚のフライとか、ある意味目的の一つだったサザエのつぼ焼きとか。
ウサギ兄妹も海鮮サラダなどをしっかりゲットして、満足そうにもぐもぐ食べている……んだが、それだけ頬張るとウサギというよりはリスだ、お前ら。
「へえ、シャチ獣人のご家族」
今日はそれなりに人も多く、よって結構周囲は騒がしい。その騒音に紛れるように俺たちは、レイダにシャチ女三代家族のことを伝えた。今まで俺が配下と出会ったパターンから、彼女たちの誰かがメイデリアである可能性も少なくはない、ってことも。
ただ、レイダが答えたのはまずそこではなく、お婆さんが陸に上がって暮らしているという点だった。
「確かに、年取ると陸で余生過ごす、ってのは多いねえ。あたしら魚人でも、浅瀬で暮らす者もいるし」
「そうなんですか」
「獣人じゃない海獣とかにとっちゃ、年取った魚人や海棲獣人は格好の餌なんだよね。アイツラでも弱いもの守るんだから、あたしらなら当然守るよ」
……獣人じゃないシャチもいるし、多分トドとかそういう系統の動物も海の中にはいるんだろう。そいつらにとってみれば、年をとって動きが鈍くなった動物は取りやすい餌で、その動物には当然獣人や魚人も含まれるってことか。
「後ね。仲間内とかが似たような獣に食われると共食いって言われんだよねえ。どうも腹立つ」
「え」
「カーライル、そういう反応が多いのは主にあんたみたいな人間だね」
彼女の言葉に対する反応にそう返されて、カーライルは一瞬きまり悪い顔になった。直後にはレイダが苦笑を浮かべたから、本気で怒っているとかそういうわけではないようだ。
「あたしらが魚食ったり、魚があたしらを食ったりするのが共食いって言うならさ。獣人や人間が肉食うのも共食いってことになるんだよ」
「自分が鶏肉を食すのも、共食いということになりますね」
「そうだね」
レイダのセリフと、それに頷いたシーラの言葉に何か納得がいった。要はあれだ、混ぜるな危険ってことだ。
タコとタコ魚人は似てるけど別、ってことにすればいいんだろう。ひとまず俺はそうすることにしよう。他の奴は好きに考えればいいさ、うん。
「ま、あたしも陸に上がってからだもんね。そういう認識の違いがあるって分かったのは」
殻の中から引き抜いたサザエの中身をもりもりと食べながら、レイダは少々昔のことを思い出すような顔になる。あれか、昔は逆にこっちのことを共食いだーとか思ってたんだろうな。まあ、哺乳類が哺乳類食ったり鳥が鳥食ったりするわけだし。
「だから、コータちゃまやシーラと話をできるのは嬉しいんだよね。自分と違う種族の考え方を知れるわけだし」
「ありがとうございます、レイダお姉ちゃん」
「あーもう相変わらず可愛らしいんだからー」
話できて嬉しい、って言われてお礼を言った俺は悪くないよな。たこっぱいにぱふぱふされてるのは、その褒美だよな、うん。
レイダがロリっ子好きで、こういうときはほんとよかったと思う。何しろ、たこっぱいが向こうからモフってくるんだからな。
「あの。一応人前ですから、あまり押し付けすぎるのはどうかと思うのですが」
「いいじゃないか。久しぶりに会った親戚のお嬢ちゃんを構ってるだけ、みたいなもんだろ」
さすがにファルンがたしなめるけど、レイダはこうだからなあ。もっとも、押し付けられてる俺は何の問題もないけどな。
「レイダさまとコータちゃま、なかよしですねー」
「レイダさま、コータちゃまのこと、だいすきだもんね」
例によって例のごとくマイペースにサラダを食いまくってるミンミカとアムレク。お前らは、とっても癒やしだよ。