143.こっそりしないとまずいから
「アムレクとミンミカは、おとなしくしててくれ。シャチの人がいたら、レイダやカーライルにこっそり教えること」
「なんでですか?」
ウサギ兄妹にそう伝えると、アムレクが軽く首を傾げた。ああうん、ちゃんと説明したほうが良さそうだな。
「多分、そのままだと俺たちのことは覚えてないからな。シーラもレイダもそうだったんだけど、多分サブラナ・マールの力で記憶とか封じられてるから」
「そういえばレイダさま、コータちゃまがもやひっぱりだすまでわすれてましたっけ」
「……」
ミンミカ、ずばりと言ってやるな。レイダがすごーく気まずそうな顔になってるぞ。シーラも、明後日の方向見てるんじゃない。結局思い出してちゃんと配下やってくれてるんだから、それでいいじゃねえか。
あと、こっそりの理由をひとつ追加。これはお前たちなら分かるだろ、アムレク、ミンミカ。
「それに、マーダ教の関係者だって思われたら大変だ。分かるよな?」
「わかりましたです」
「きがつかなくてごめんなさい、コータちゃま」
うん。すんなり受け入れて頭を下げてくれて助かる。ウサギ獣人たちも、こっそりマーダ教信者をやってるからな。外にバレないように。
要は、同じことだ。今の世界で、マーダ教を信仰してるって外にバレるのはかなり致命的、だからな。
その主神である俺が一番やばいしな! てーか復活してるのバレたら、何というかいろんな意味でピンチな気がするんだ! サブラナ・マールと教主の趣味とかやってることとか!
うん、絶対負けない。少なくとも、もっと配下増やすまでは頑張って隠れる。
と、隠れるといえば、この街にいると目立ちそうなレイダはどうするんだ。聞いてみるか。
「レイダはどうするんだ? この街、魚人少ないから目立つだろ」
「わたくしは、海から探すことにしております。もし向こうが喧嘩を売ってきても、間違いなく勝てますし」
「戦われるのですか?」
ああうん、そうだった。海王なんだから、そりゃホームグラウンドである海だよなあ……と思ってたら、ファルンが不思議そうに尋ねてくる。ああ、勝てるってことは当然、その前に戦うわけだしな。
その問いに対してレイダは、「当然」と頷いた。
「わたくしやルシーラットと同じ状況であれば、現在彼女はマール教信者でしょうしね。一発殴っておいた方が、思い出した後で本人の気が済みます」
「……それは、自分も同じ思いです。ですのであのとき、コータ様に衝撃波でぶっ飛ばされたのはいい薬となりました」
「あ、そうなの?」
シーラがさっきから視線を明後日の方向に向けてるの、それもあったのかな。
なお、シーラをふっとばしたのはほんと偶然だからな。あそこでイヤボーンが都合よく出てくれるとは思わなかったし、というかできるなんて思わなかったし。
「私にもう少し力があれば、助力できるのですが」
「カーライル殿は、コータ様のお守り役が適任ですし」
おいカーライル、ファルンにしれっと言われて微妙に凹むなよな。そもそもお前さんが来てくれたのがきっかけで、こうなってるわけだしさ。
「で、でしたら私がコータ様を抱っこしてもよろしいのでは!」
「ああ。済まなかったな、神官殿」
……凹んでたのそっちー!?




