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138.支配人なら詳しいだろう

 とりあえず。


「んむ、んふ、んんんっ」


 明日からの観光に備えて面白いところを教えて、ということで呼び出した支配人をシーラに抱きとめてもらって、しっかりとゴチになった。いや、熊だっていうから俺だと力負けしそうだし。

 ウサギ兄妹は相変わらず爆睡中で、おかげで途中邪魔されることもなくたっぷりと吸って、そして吹き込んだ。


「お前の主は、たった今からこの俺、コータだ。いいな」

「承知いたしました。何でもお申し付けくださいませ、コータ様」


 そうして下僕になった支配人は、なぜか俺の足元でスリスリしております。猫の臭い付けか何かか、あんた熊だろというツッコミはやめておこう。


「基本的には、普段どおりの生活を送ってくれればいい。お前が俺の下僕だということが、周囲に知られないように気をつけろ」

「はい」


 会話だけ見てると真面目なんだけど、外見ロリっ子の足元に黒髪えろお姉さんがひざまずいてすりすり、なんだよなあ。何だこの絵面。あといい加減くすぐったい。


「コータ様、大丈夫ですか?」

「貴様、いい加減にしろ」

「きゃん」


 おっと。カーライルに抱っこされて、支配人はシーラに軽く脳天チョップで突っ込まれた。今度は犬か、その反応は。

 ともかく、話だ話。一応、呼びつけた理由は間違ってるわけでも何でもないんだよな。


「目的地の一つにメイヒャーディナルの砦があるんだが、他にマーダ教に関係する場所はないか? 遠い昔の戦で、勇者がアルニムア・マーダの配下を封じた、なんていう話がある場所がいいな」


 何と言っても、今の俺たちには仲間が少ない。俺が下僕にした連中は……仲間と言うには、どうもなあ。いつ覚めるか分かったもんじゃないからな……それなら、ガチの仲間というか俺の配下を探した方がいい。

 で、マーダ教はマール教に負けてるので、その戦場跡とかを探したい。レイダみたいに、自分が封じられた近辺で生まれ変わってる可能性があるからだ。


「そういったところは、大体が観光名所になっております。主神たるアルニムア・マーダの最期の地だけは、どういうわけか伝承が残っておりませんが」

「へえ」


 俺の問いに、支配人はそう答えた。後半は……まじで伝わってなかったのか。要するに、俺が起きたあの場所のことなんだろうけれど。

 ……カーライル、良く見つけたなあ。マジマジと、俺を抱っこしている神官の顔を眺めてみた。いやまあ、俺の神官なんだからマール教が知らないことを知っていた、としてもおかしくはないんだけどさ。

 ふっと、「そういえば」と支配人が声を上げた。何か思い出したかな。


「このメイメイデイにも、あまり知られていない封印の地の一つがございます。詳しいことはマール教からも知らされておりませんので分かりませんが、海王ネレイデシアの配下共を封じ込めた洞窟です」

「配下?」

「ネレイデシアということは、配下は魚人ですわよね」


 ファルンが、以前会ったネレイデシア……レイダのことを思い出しながらだろう、そう尋ねる。確かにこの街って港町なんだから、魚人絡みのモノがあってもおかしくはないのか。


「はい。中でも『水の舞』と呼ばれた魚人メイデリアを封じたことで、この街はメイメイデイという名になったとも言われております。また、多くの魚人が封じられたためにこの街には、その封を嫌ってあまり魚人が近づきません」


 あー、確かに見なかったなあ、魚人。獣人がやたらと多いな、とは思ったけど。

 にしても、『水の舞』か。シーラは『剣の翼』ルシーラットだけど、レイダにもそういうのがいたんだ。再会できたときにもしまだいなかったら、一緒に探しに行こうって言おう。

 あと、街の名前もそこから来ていたのか、とちょっと感心した。ただし。


「……ネーミングセンス、どこも微妙だな」

「それを言ってしまってはおしまいです、コータ様」

「少し変えただけですものねえ」

「……なぜメイデリアからメイメイデイになったのだろう……」


 割とみんな、複雑なんだな。俺だけじゃなくて、ちょっとだけ安心した。

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