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130.港を見下ろす部屋の中

 二階に客間がいくつかあって、そのうち見晴らしのいい部屋を俺や女性陣に割り当ててくれたようだ。スラーニア、つまり眼鏡の使用人が俺とシーラの荷物を持って、その部屋へ案内してくれた。


「このお荷物は、お嬢さまのものでよろしいですか?」

「はい。ありがとうございます」

「使用人として当然の務めですので」


 お嬢さま、ってこの場合俺のことらしいので、ロリっ子のふりして素直にお礼を言う。スラーニアも当然のように言葉を返してきて、それから荷物を部屋の隅に置いてくれた。

 さ、まずは彼女からだな。


「シーラ」

「はい」

「きゃっ」


 俺が名前を呼ぶと、ほぼ同時にシーラがすばやく足を踏み出した。荷物を置いたスラーニアの手首をつかむと、彼女も反射的に腕を振ってほどこうとする。あ、シーラが一瞬持っていかれかけた。結構パワーあるんだ、スラーニア。


「な……振りほどけない」

「なるほど。人にしてはなかなかだが、相手が悪かったな」


 それでも持ちこたえたせいで、シーラは余裕の笑みを浮かべる。次の瞬間、膝が相手の腹に入った。「ぐっ」とくぐもった声が漏れて、スラーニアが崩れ落ちかける。

 持ったままだった手首をすばやく彼女の背中側に回して、シーラは彼女をこちら向きに抱え込んだ。よしよし、さすが俺の配下。やりやすい体勢、わかってるなー。


「コータ様、どうぞ」

「では早速、いただきまーす」

「……え」


 何となくだけど、目を閉じずにそのままスラーニアの唇を奪った。

 すう、とまずは彼女の精気をいただく。ん、なんてーか、肉食ったような濃厚な感じ。こういうのもいいかな、と思いつつ俺の気を吹き込む。ふう。


「ふうっ」

「ん、んふ、んんんんっ」


 じたばたしたいんだろうけれど、シーラにしっかり捕まってるから無理ー。そのままスラーニアは、すぐに俺の気を喜んで飲み込んだ。ぼんやりした顔が真っ赤になって、眼鏡が軽く曇ったのはご愛嬌かも。


「ごちそうさまでした」

「あは……レフより、すてきい……」


 シーラが手を離すのを確認してからいつものように挨拶すると、返事がなんか変だった。あれ?


「……レフて」

「もうひとりの使用人がレフレティ、でしたね」

「あー」


 シーラが指摘してくれて、やっと理解した。レフレティだからレフ。で、そういう呼び方して彼女より素敵、ってことは。

 なるほど。使用人の二人、そういう関係なわけね。

 邪魔して悪かったかな、とちょっとだけ思った。ちょっとだけな。どうせ、レフレティも下僕にするし。

 あ、そうだ。どうせなら、スラーニアに協力させよう。よしよし。


「スラーニア。今からこの俺、コータがお前の主だ。いいな」

「はい……全てはコータ様の、仰せのままに」


 はっはっと、まるで犬が暑がってるみたいに口で息しながらスラーニアは、俺の前にひざまずく。これで獣人系だとしっぽがパタパタとかするんだろうけれど、あいにくスラーニアは普通に人間だなあ。眼鏡メイドが興奮しながら俺の下僕になってるんだから、これはこれでいいけれど。

 で、下僕になっての初仕事を命じる。ちょっとは邪神ぽく命令できるかな、俺。


「レフレティ、彼女を抑えろ。お前と同じにしてやる」

「はい。お任せください」


 従順に答えてくれたスラーニアを見下ろしながら、シーラが少し不思議そうな顔をしてこちらを見てきた。


「コータ様。初仕事にそれをお命じになりますか」

「悪くはないだろ?」

「ええ、とても良いことだと自分は愚考します」


 そう答えてくれてシーラが笑ってくれたので、多分俺は着々と邪神になってきてるんだと思う。

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