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012.ともかく相手は選びましょう

 慌てて村長から離れて、シーラの横につく。うへえ、靴舐めるなよなあ……あとで洗わないと。あーびっくりした。

 で、何か残念そうな顔して俺をとろんとした目で見つめてる彼女に、尋ねてみた。


「とりあえず。村長、名前は」

「ご主人様のお口からこの汚らわしい名を発していただくなど恐れ多い。どうぞ、犬でも豚でも獣人でもお好きにお呼びくださいませ」


 ……ま、どえむらしいのはさておこう。頬染めてるのは俺のせいじゃないよな、もともとああいう性格なんだろうし。

 この場合の犬、豚、獣人は要するに蔑称なんだと思うんだが、村長の中では同列なわけだ。

 俺の角としっぽ見てそれかよ、胸糞悪いな。いや、犬は役に立つし豚は美味しいし……こっちの世界でもそうなのかはさておくけどさ。まあ、同じような動物がいるんだと思っておこう。

 なんで、どえむにはそれにふさわしい言い方で名前を聞いてみる。


「お前はそれ以下だ。役に立つ者たちの名で呼ぶことのほうが失礼だよ。だから、名前を明かせ」

「はいい、獣人以下の最低な私はネッサと申しますっ」


 即答したし。しかもうっとりした表情で。

 カーライル、シーラ、うわあドン引きって顔すんな。俺が一番したい表情だよ、それは。

 ブランナは……あ、何か遠い目になってる。こりゃ慣れてるな、彼女。


「わ、分かった。ネッサ、表立っての態度は変えなくていい。怪しまれるからな」

「承知しました、ご主人様あ」


 一応命令はしてみたものの、これちゃんと守ってくれるのかな。村出るときに俺たちのことは忘れろ、とでも言っておくか?

 ああ、そうだ。村を出ることになるんだから、必要なものがあったっけ。聞いてみるか。


「ところで、この世界に地図ってあるのかな」

「大きなものでしたら、マール教で配布しておりますわ。修行の旅に出る者のために作られておりますので、教会の位置などは細かく書かれております」

「この近辺のものであれば、我が家に手書きのものが数枚ございます。恐れ多いとは思いますが、お役に立つのであればぜひ提供させてくださいませっ」


 ブランナとネッサが、それぞれ答えてくれた。そういやそうだ、修行で旅立つ僧侶がいるんなら地図あるよなあ。

 ネッサの方の地図は、多分この辺りのことが詳細に載ってるんだろう。ブランナのが世界地図、ネッサのが日本地図……まではいかないか。都道府県、いや市町村くらいの地図ってことかな。

 今の俺には、どちらも必要だ。


「わかった。両方もらうよ」

「承知しました。用意させていただきます」

「どうぞ、いくらでもお持ちくださいませえ」


 ……ブランナは落ち着いてるからいいとしてネッサ、よくこれで村長やってるな……大丈夫かこの村?




 すぐに地図をお持ちしますわっ、と教会を出ていったネッサを見送る。あー、何かどっと疲れた。


「大丈夫ですか? コータ様」

「……あれがもうしばらく続いてたら、大丈夫じゃなかったかも」


 ファルンが持ってきてくれたお茶とお茶菓子で、全員一息ついた。もしかしてお前さん、ネッサが来たことに気づいて台所から出てこなかったな? 俺たちと違って、彼女があーなの知ってたはずだから。


「申し訳ありません。私が抑えておくべきだったのですが」

「あれはねえ……山奥の村だから、あれで済んでいるのだと思われるのですが」

「まさか、コータ様に対してあんな風にひざまずくとは思いませんでした……」


 カーライルがえらく凹んでるけど、あのネッサに反応できなかったのはお前さんのせいじゃないと思うぞ、うん。

 ブランナもさすがに顔ひきつってるし、シーラはなんというか遠くを見る目になってるし。

 俺も疲れたんで、考えてたことを口にしようか。


「……しかしまあ、あんまり下僕増やすのもあれだな」

「そうでしょうか」

「基本ちゃんと動いてくれるけどさ、命令するのめんどくさいしなあ。それに」


 不思議そうに首を傾げるシーラに、理由を答える。それからえーと。


「ネッサとかだとさ、ここを離れたあと正気に戻るかもしれないし。あとネッサ怖い」

「それはよく分かります」


 そこ、三人同時に頷くな。特にファルン、ブランナ、自分たちのことも言われてるの分かってるのかな。

 気を吹き込んで下僕にした人たちは……あれ、そういえば大昔の俺がやらかした時はどうなったんだろう?


「昔はどうだったんだ? シーラ、知ってる?」

「コータ様が封じられた後で、ほとんどの者は正気に返ったようです。一部影響が残った人間は、残らず処刑されたという記録が……ファルン」

「ええ、残ってます。今考えるとエグいですね」

「……エグいな」


 あーあーあー、魔物や獣人じゃねえから処分してもいいとかそういうことかよ。邪神より外道でどうすんだ、サブラナ・マール。

 つか、俺が負けたら正気に戻るくらいの考え方でいいのかね。いや、当時より能力落ちてる、と考えたほうがいいな。

 やっぱり、あんまり増やすのはやめとこう。そのうち、パワーアップと言うか能力が回復してくるようなことがあれば、まあ。

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