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128.大きな街から次の街

 グレコロンを吸ってから四日後。

 サンディタウンの領主邸を、作りの良い大型牛車が出立した。ほとんど揺れない、静かに動く良いものだ。

 ……うん、中身は俺たち一行なんですけどね。ついでに言うと、次の目的地である港町アイホーティまで、グレコロン自身もついてきてくれることになっている。御者は、グレコロンが吹き込み済みの獣人がやってくれてる。


「送ってくれるとは思わなかったな」

「コータ様御一行は、私の大切なお客人という扱いになっておりますのでね。道行きで何かことが起こってしまっては、サンディ家当主として面目が立ちません」


 とまあ、そういう理由らしい。いや、助かったけどさ。

 何しろ俺たち一行のうちファルンとカーライルを除く四人、結局サンディタウンの教会からいなくなったって扱いのままらしいんだよね。もちろん、そのへんもどうにかしてくれたらしいんだけどさ。


「教会の方の手続きも、問題なく済ませてございますのでご安心を。普段どおりに、客人として迎えた由伝えましたので」

「ありがとう。そりゃ助かった」


 で、そのままグレコロンの客人としてアイホーティまで送ってくれる、というわけ。片道一日半くらいで、特に危険のない街道らしいけどまあいいか。


「りょーしゅさま、おっきいぎっしゃもってますね!」

「サンディ家にお客人をお迎えするときなどに、使用するものです。一家族をお迎えするときなどは、お子様がいらっしゃったりして皆で一緒に、と希望される方も多いので」

「みんなでのったほうが、たのしいですもんね」


 例によって空気を読まないミンミカがとっても楽しそうで、それを見ているアムレクも楽しいらしい。一応お兄さんなんだな、とちょっとだけ感心した。


「本来であれば、サンディ家が家族で移動するときなどに使うのですが。あいにく私はまだ、伴侶もおりませんでね」

「蹴ってくれそうな奥さん、見つからないのか」

「そうなんですよ。切実な問題なんですが」


 俺は冗談のつもりで言ったんだが、グレコロンにとっては真面目な問題だったらしい。こら、だからってシーラ見てどうする。


「何でしたら、シーラ様」

「自分には、コータ様をお守りする務めがある。残念だったな」

「確かに、残念ですっ」


 断られた瞬間、ぶるりと身体震わせてるのはアレか。軽くいっちゃいましたとかそういうやつか。ネッサよりある意味酷いかも、こいつ。

 もっとも、こんな会話してても外に漏れる心配がないのはありがたい。

 サンディ家の家族用に作られてる、ってくらいだから作りが頑丈だし、窓はあるけどレースのカーテンで外からは見えにくくなってる。椅子もクッション効いてるし、床はしっかりした絨毯が敷かれてる。

 片道一日半、だから途中一泊ってことになるんだけど、別にこのまま寝ても俺は問題なさそうだな、と思った。もっともそれは俺の身体が小さいからで、翼のあるシーラとかは大変だろう。うむ、やめやめ。


「アイホーティにはサンディ家の別荘がありまして、管理人として私の親族がおります。女性ですので、どうぞコータ様のお好きなようにしていただいて構いません。その方が、皆様方もお気遣いなく滞在できるでしょうから」

「分かった」

「コータ様、良かったですね」

「まさか、身内から承諾してもらえるとはなー」


 で、行った先での拠点も確保できる、と。カーライルの良かった、は基本的に俺の飯が調達できてよかった、のような気がするけれど。でも、お前らも宿取れてるんだから、素直に喜べ。


「サンディ家のお身内でしたら、マール教ともそれなりにつながっていらっしゃるのでしょうか」

「アイホーティ教会のバックアップを担当しておりますね。僧侶も出入りしますから、そちらもよろしければ」

「まあまあ。コータ様、お腹いっぱいになりそうですわね」


 ほんとだな、ファルン。

 海を渡る前に、ある程度吸いまくって腹一杯にしておくか。

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