127.領主の屋敷でこんなこと
話が終わり、俺たちは領主のお屋敷の中にある客室に案内された。何しろ権力者の屋敷だから、教会付属の宿より広いったら。
なんたって俺たち六人、二人ずつで寝られる寝室があるからな。
「アイホーティまでの足と北の大陸に向かう船につきましては、早急に準備させていただきます。それまで、こちらでお過ごしくださいませ」
グレコロンはそう言って、俺たちに笑った。こっちとしては教会に戻ってもいい、って思ったんだけど、止められたんだよね。
「私のところにとどまれば、対外的には『いつものこと』として処理できます。教会の宿に戻れば、何があったのかコータ様がたも私も疑われますので、これが最良かと」
「なるほど」
そうか。今までと同じようにすれば、逆に何も疑われない。領主グレコロンがこの俺の下僕に成り下がった、なんてことがどこからかバレるか分からないもんなあ。何しろサンディ家、マール教とべったりだし。
それなら、今までどおり『獣人と鳥人はサンディ家にお客として招待されました、まる』で終わらせればいい。付き添いのファルンとカーライルに関しても、グレコロンがうまいこと言ってくれればそれで終わるし。
それはそれとして。
「船まで準備してくれるのか? そりゃ助かるけど」
「そこまでなら、何とかできますから」
北の大陸に行く、って言ったらそこまでの足は何とかしてくれる、とグレコロンは言う。それはものすごく助かるし、ぶっちゃけ世話になるつもり。でも、そこまでやってくれるもんかね、領主って。
「これでもそれなりに力のある領主ですから、お使いください。あいにく、北の大陸に渡ってしまえば遠すぎて、サンディ家から手助けすることはできませんから」
「そっか」
まあ、あくまで一つの街の領主、だしな。あっちまで送ってもらえるだけでもありがたい、と思わなきゃ。
だから俺は、素直に礼を言った。
「ありがとな。助かるよ」
「もったいなきお言葉……あの、できましたら一つ蹴っていただければ」
「あ、ああ、うん」
あ、やっぱりどえむが出た。もっとも、これで喜んでくれるんならいいか。
さすがに股間とか蹴るのは元男としてものすごく気がひけるので、四つん這いになったところを後ろに回ってケツを蹴ってみた。どうせロリボディじゃ筋力大したことないから、思いっきり。
「んはあんっ」
「うえっ」
あーあーあー。
イケメン領主が外見ロリっ子に尻蹴られてやばい声あげてるってどうよ。いや、蹴ったの俺だけど。
「最大の喜びをありがとうございます、コータ様!」
「あ、ああ」
しかもそれでお礼言われちゃってるし、なあ。
「……この街、よく治められていますわねえ……」
「多分、たまに使用人さんとかに蹴ってもらっているのではないかと」
「おにーちゃん。りょーしゅさん、おしりけられていたくないの?」
「みたいだね。ぼくもよくわからないけど」
「……コータ様。後でおみ足を消毒しましょう」
何しろこれ全部、こいつらもがっつり見てたからな。本当に大丈夫なのか、サンディタウン領主グレコロン・サンディってやつは。




