表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/432

119.近いところで見た感想

「ただ今戻りました」


 幸い、カーライルは無事に戻ってきた。領主とその取り巻きが俺たちの部屋から見えなくなって、少しばかり後になって。

 で、部屋に入って扉を閉じて、開口一番。


「領主殿の視線、背筋がぞわぞわして気持ち悪かったです!」

「あー」


 何故か、全員が納得してしまったのは自分でも何でだろうと思った。いやまあ、こいつがあの領主に惹かれてふらふらふら、なんて光景がまるで想像できないからなんだろうけど。

 ともかく、カーライルは「気持ち悪かったんですが」と言葉を続けてくれた。いつもの調子で、ホント安心する。


「……何となくですが、ファルン殿が同行していたら、おそらくあちらに惹かれていた可能性は高いかと思われます。そのくらいに、人を引きつける存在であることは分かりました。さすがは領主ですね」

「まあ」

「もともとマール教だもんなあ、ファルン……」


 ああ、そういうことはわかったんだ、カーライル。それでも、自分は行かなかった、と。さすがというか何というか。

 あとファルンを一緒に行かせなくてよかった、とはファルン自身も思っていたようだ。


「では、わたくしは領主様の見物に出なくてよかったのですね」

「ええ。街の人たちはみんな、性別も種族も関係なく領主を見てうっとりとしていましたからね。私のように旅行客も混じっていたようですが、ほぼ例外はありませんでした」


 うへえ、そこまでか。種族関係ない、ということはサンディタウン在住の獣人や鳥人たちも反応は同じ、と。

 ……そこら辺が、住民とそうでない獣人や鳥人との区別ってことなのかな。反応、違うのかもしれないし。

 そんな事を考えてる俺をよそに、アムレクが不思議そうに首を傾げた。ああ、お前結局ちゃんと見てないもんな。


「そこまで、すごかったですか? りょうしゅさん」

「ええ。ちょっとしたことでマーダ教だとバレないように、私も周囲に合わせて一応うっとりするフリしてたんです。ですが、それもあって気持ち悪かったんですよ……」


 げんなりした顔でそう吐き捨てたカーライルに、俺は心の底からおつかれさんを言ってやりたい。演技してたのか……ま、確かに反応しないやつがマーダ教ですよ、なんてことだったりしたら問題だもんなあ。

 いや、本当にごめんな、カーライル。お前かファルンしか、今日は外に出られないからさ。

 ……しかし、性別も種族も関係なく、あの領主には惹かれていたっていうのか。なんかすげえな。その中で無事だったカーライルも。


「というかカーライル殿、よくあちらに魅了されなかったものだ」

「私はコータ様の忠実な配下ですから」


 同じことを考えたらしいシーラの問いに、えっへんと胸を張って答えるカーライル、さすが残念イケメン神官。この残念がなけりゃ、もうちょっとモテたのかもしれないなあ。今んとこ、女の子俺も含めて四人も一緒だけど誰もなびく様子ないし。

 もっとも、ひとまず問題は終わった。そうすると、カーライルの苦労に報いるためには……やっぱ飯か?


「ま、ほんとおつかれさん。……飯でも食いに行くか?」

「おひるごはんですか? コータちゃま。ミンミカも、たべたいです」


 はいはい。一応、カーライルの意見聞いてからな、と思って視線を移すと、何というかホッとした顔をしている。


「……よろしいのでしたら、さっぱりしたものをいただきたいです」

「さっぱりか。……領主、濃かった?」

「あの気配と言いますか、存在自体が、ですね」


 だよねえ。お前通して間接的に見た俺でもアレだったんだから、直接見たお前さんには濃かったろ、ほんとに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ