115.教会塔のその意味は
さて。
サンディタウンでのお宿は、想像は何となくついてたけれどやっぱり、教会だった。
塔の一階が教会で、二階と三階が修行僧侶と同行者の宿舎になってるとのこと。もちろん他にも宿はあるし、そちらに泊まる人も多いんだけど俺たちはな、あんまり知り合いとかいないし。あとめんどくさいし、ということでこうなった。
「ナーリアよりお越しのファルン様、同行者のカーライル様、シーラ様、コータ様、アムレク様、ミンミカ様。確認いたしました」
「ありがとうございます。間違いございませんわ」
「お部屋の手配は整っておりますので、ご案内いたします。どうぞ」
今回のご案内は、金髪に俺よりは少し薄い浅黒い肌の大柄なお姉さん。よく見ると猫耳なので獣人らしい。多分猫じゃなくて、豹とかライオンとかの大型の方だろうけれど。
二フロア上がって三階、塔っぽいだけあって廊下が円形になっている。その外側に部屋がいくつも並んでいるのはすごいというか。高さがかなりあるから、根っこの部分であるこの辺を大きく取らないとうまく建たない、とかそういうことなんだろうか。
「教会塔の三階その五とその六、こちらのお部屋です。男性はその六を、女性はその五をお使いくださいませ」
「ご丁寧にありがとうございます。カーライルさん、アムレクさんはそちらですね」
「了解しました。アムレク、暴れるなよ?」
「しませんよう」
お、二部屋。男女別なのはあれだ、不純異性交遊禁止ってやつ。ぶっちゃけてしまうと僧侶は教主のもんだからなあ、マール教って。
それはそれとして、本当に三階までしか行けないのかね。聞いてみるか、行くぞ外見ロリっ子。
「この塔は、三階までが宿なんですか?」
「はい。四階以上は休める部屋がございませんので」
「部屋がない?」
シーラが不思議そうに首を傾げる。部屋がないのにどーんと建っている塔、その中身はどうなってるんだろう。
「最上階にサブラナ・マール様をお祀りしている祭事室がございまして、そこまでの階段と途中の休憩所のみとなっております」
「うわあ」
何それ、どこかのダンジョンかよ。ゲームでも途中で飽きそうだよ、休憩所でセーブしたら後戻りできなくて詰んだとかいう話じゃないか?
「外から見てすごく高い塔だなって思ったんですが、中ほとんどが階段なんですか?」
「そうなりますわね。さすがに全て階段で上り下りすると大変ですので、運び屋として鳥人の方を雇っております」
「ああ、真っすぐ飛んで上り下りしたほうが早いですよね」
あ、ショートカット手段あったんだ。そりゃそうだよなあ、この塔徒歩だけで最上階まで行くとかないわー。カーライル、自分が登るわけじゃないんだからそこまでホッとしなくてもいいんじゃないか?
つか、教会の塔が一番高いのはともかくとして、この街高層建築だらけだよなあ。何かあるのかね。
「サンディタウンに来たのは初めてなんですが、高い建物か多いですわね」
「古くは鳥人族や龍人族が住んでいたようです。今と違い移動方法が飛行メインだったので、高い建物の方が何かと便利だったとか」
ファルンの質問に、僧侶さんは、よく聞かれるんですよと笑いながら教えてくれた。へえ、鳥人や龍人……って、飛べたのか、ドラゴン系も。今どこにいるんだろうな、ドラゴンたち。できれば協力してほしいもんだけど。
「この教会も、そもそもはそういった方々のご寄進やご協力によって建立されたものですわ。塔内の階段は、人や獣人たちが祭事室に行けるようにと造られたものなのです」
あー、それで高い塔……そんな理由でいいのかね。まあ、戦闘ゲームとかで高いところに位置を取ったほうが有利、とかいう話はちょこっと聞いたことあるけど、そういうことなのかな。
「たかいところからみると、とおくまでみえるですからねー」
「そうですわね。我らが神サブラナ・マール様が民を見渡せるよう、塔を高く作ったとも言われておりますわ」
そっちの理由かよ。いや、別に理由がひとつだけってこともないか、うん。




