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107.意外なところで調子が出たぞ

「はああっ!」

「ふんぬっ!」


 がん、という金属音に重なるようにどん、という圧力がやってくる。シーラが振り下ろした剣を、おっさんがあっさり自分の剣で受け止めていた。そのままぶうんと大きく振ると、シーラは勢いに任せて自分から距離を取る。空中に、だ。さすが鳥人。


「あ、すごい。シーラお姉ちゃんと力で張り合ってる」

「あいつがボスでした。シーラさんが、自分じゃないと手に負えないから逃げろって言ってくれまして」


 とはいえ、ちゃんとシーラと戦ってる人を見るのがほぼ初めてだったこともあって独り言を呟くと、ドートンさんが教えてくれた。やっぱりあいつ、ボスだったのか。つか、シーラ自身が相手にならないとやばい相手、だったわけね。


「だからぼく、ミンミカつれてにげました」

「つれられてにげました」

「それが最善の策、だったということですわね」


 ファルンはともかく、当事者なウサギ兄妹がのほほんと答えるのは……いつものことだけどさ。でもまあ、シーラの指示にきっちり従ってくれたのはありがたい。ウサギだし、ヤバけりゃ逃げろってのがしみついてるのかな。


「鳥め! サブラナ・マール様に真に仕えし我らに、敵うと思うか!」

「仕える神の写し身すらも守らない愚か者が、神の恩恵受けると思うな!」


 がん、どん、がっ。

 シーラは上から、おっさんは下から、どんどん打ち合う。いや、この状況普通シーラが有利じゃないのか? 何で普通に戦えてるんだよ、おっさん。

 ……これがサブラナ・マールの恩恵だったりしたら、いやだなあ。どんな信仰の仕方してても、守るのかな。

 俺も一応神様だけど、その辺はよくわからない。恩恵の与え方も知らないしなあ。

 そうなると、今の俺にできることといえばこれだけである。ドートンさんの目もあるので、獣人ロリっ子にできることに限られるため。


「シーラお姉ちゃん、がんばれ!」

「がんばります!」


 即答された! あと何か、シーラめっちゃ嬉しそうな笑顔全開!

 トドメに剣同士のぶつかる音がガンガンガンガンとひどくテンポ早くなった上にシーラが押し始めたし!

 ……ああいや、これは俺の応援でシーラがテンションぶち上げただけだな。きっとそうだ、そういうことにしろ。


「チビ助に応援してもらったくらいで、勝てると思うな! 鳥めが!」

「その小さな子に声をかけて連れて行こうとしたのは、どこの誰だ!」


 おーいシーラ、どっちが悪役かわからなくなってきてるぞー。でも確かに、彼女の言ってることは間違ってないし。

 と、ドートンさんが不思議そうな顔をしてこっちを見てきた。ああ、多分カーライルだな、見てるの。


「やったんすか」

「やったんですよ。コータちゃんとミンミカを連れて行こうとしまして」

「それで衛兵さんに連れて行かれたというのに、もうお忘れなのかしら」

「うわあ」


 カーライル、そしてファルンに事情を教えてもらってドートンさんは苦い顔になる。猫獣人だもんなあ、自分の身内がそうなったときのことでも想像しちゃったんだろうか。あ、尻尾がへにゃんとしおれてる。


「ミンミカ、なんどもねらわれてたのか?」

「よくわかんないですー」


 こちらは相変わらずマイペース過ぎるウサギ兄妹。って、ミンミカ持っていかれてたのってマジでそういうことか。おっさん、ケモナー……とは違うのかな。よく分からんし、分かりたくもないし。ただ、ミンミカのもふもふは良いぞ。柔らかいし暖かいしな。

 で、こっちの話を聞けていたらしいシーラがは、とおっさんを鼻で笑った。飛び蹴りくれたりしてるし、俺が応援してからえらく余裕が出まくってるな。それでいいのか、『剣の翼』ルシーラット。


「なるほど。つまり獣人の女性が好みということか」

「違うわっ! 単に獣人なら言うことを」

「簡単に聞くと思うなこのタワケがああああ!」


 獣人のほぼ全員が頷くような答えをおっさんにぶつけながら、シーラは大上段から振り下ろした剣をまっすぐ、おっさんに叩きつけた。最終的に地面にぶつかるまで、止めることなく。

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