106.意外なところに出てきたおっさん
どごん、がしゃがしゃ!
「っ?」
「何だ!?」
「シーラ、ミンミカ、アムレク!」
視界に入ってる教会の屋根が、ぼこっと開いた。木材やら何やらが雨のように飛び散って、周りで衛兵さんたちがあたふたして逃げ惑う。
俺は目を閉じて、シーラのところを見ようと念じる。おお、すぐに出た、と思ったら何か、白髪交じりのおっさんと剣をぶつけ合っている。後ろに、ひん剥かれかけたミンミカがひっくり返っていてアムレクが駆け寄っている。
……このおっさん、顔見たことある気がするんだが。はて、どこでだっけ。
「あ」
思い出した。うわ、マジか。何でいるんだと言うか、そういうことなら納得したぞ。けど。
「あのおっさん、衛兵んとこから出てこれたのか」
「あのおっさん?」
「ほら、俺とミンミカに声かけてシーラに殴れば良いのか、って言われた白髪交じりのおっさん。あいつ、今シーラと戦ってる」
カーライルもファルンも、あのおっさんを見てるはずだから説明する。つか、あのときシーラにビビってたのは芝居かよ。結構互角にやってた気がするぞ。
「なるほど。そいつも例の連中だったというところですか」
「というか、ボスっぽかった」
「あらまあ」
他のおっさんや獣人たちがあっさりやられてるところで、多分戦力としては一番高いシーラとガチでやり合ってるんだもんな。
おのれ、目の前にいたのにそういうやつだと気づけなかったぜ、ちくしょう。
……もっとも、向こうも声かけたロリっ子がまさか邪神だとは気づいてなかっただろうけどさ。
「変なことやって、衛兵さんたちの意識を自分に向けるためだったのでしょうね。その間に配下を動かして、準備を整えて」
「あー、そういうことか」
カーライルの説明に、一瞬だけ納得する。いやだって、ボスが自分を囮にしたってことだろ? どこから何がバレるか、わかったもんじゃないわ。おっと、木の欠片が降ってきた。カーライルの腕がぺん、と弾いてくれたけど。
「そこまで深く追求されないか、自身に何かあっても自力で解決できるだけの力を持っていた、ということではありませんかしら」
なんで尋ねてみたら、ファルンからそういう推測を出された。なるほど。
ま、ここで暴れなけりゃあのおっさん、ただの度が過ぎた女好きだもんなあ。
こちらがそんな呑気に会話している間に、教会は見事に崩れ落ちた。何やってるんだシーラ、と思ったけど多分相手のおっさんが悪い。そういうことにしておく。
で、土煙やら何やらの中から、数人が慌ててこちらにやってくるのが見えた。あ、ドートンさんとアムレクだ。アムレク、肩にミンミカ担いでる。服がはだけ途中で半ケツ見えてるぞ。……ウサギだけど。
その向こうで、がきんがきんと金属がぶつかりあう音がする。あー、おっさんとシーラ、まだやってるわ。てか、『剣の翼』ルシーラットとやり合えてるって何者だよ、あのおっさん。
っと、それより逃げてきた三人だ。何でかちょうどこっちに向かってきてるから、合流したほうがいいだろう。
「カーライル」
「はい。こっちだ!」
名前を呼んだだけでもう、俺の言いたいこと分かってくれるこの神官はありがたい。すぐに声を張り上げて、ドートンさんとアムレクに呼びかけてくれた。
「おお、皆さん!」
「コータちゃま! ミンミカひろってきました!」
「ほえ? コータちゃま?」
あ、コイツラの方も割と呑気だった。アムレクはいつもの感じだし、ホイッと肩から降ろされたミンミカも寝ぼけ顔だけど、普段どおりっぽいし。
「あ、じゅんけつはまもったですー」
「それはよかったです」
うん、まあ確かに良かったけど。




