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102.実はちょっぴり強いかも

 ひとまず、宿舎を出る。部屋から廊下に耳を澄ませると、まだ何人かうろちょろしてるのは分かった。足音も話し声も、隠すつもりはないらしい。ま、そりゃそうか。

 おっさんたちに対してはアムレクやミンミカと同じようにはいかなかったので、頑張って耳を澄ませながらこそこそと移動することにしよう。出会い頭にばったり、なんてことにならないように扉の開け締めとかはしたくないから……あ、ちょうどいいところがあった。


「やっぱり」


 宿舎とトイレをつなぐ、渡り廊下。屋根とそれを支える柱、床しかないということは壁がない、よってするっと外に出られる。

 外にほとんど人はいないし、トイレの匂いを宿舎側に流さないよう草木がしっかり植わっている。つまり、背の小さい俺にとっては隠れやすい。小さくかがんで外に出て、低木の影に隠れつつゆっくり移動。目指すはできればガイザス工房、途中でシーラたちに会えればラッキー。


「ん?」

「げ」


 一瞬意識がそれたところで、短刀ぶら下げながら出てきた緑髪のおっさんとかち合ってしまった。うわあ、と思ったけど今の俺は外見上獣人ロリっ子。よし、びくっと怯えてみよう。尻尾、頑張ってへなへなとしおれろ。


「チビ助、どこから出てきた」

「ちょ、ちょっと迷っちゃったんですう」

「そうか」


 よし、ごまかされてくれた……のかな? まあいいや、少なくとも警戒心は薄れたみたいだし。


「……おお、お前メスだな」

「女の子って言ってください」

「獣人なんだから、メスでいいんだよ」


 おっさんは俺を上から下まで何度か品定めするようにガン見して、それから吐き捨てるようにそう言いやがった。

 わあ、よくあるパターンか。獣人差別は分かりやすいな、ちくしょう。

 そういえばミンミカもメスって呼ばれてたな……こいつらと一緒に行動してる獣人たち、そういう扱いでいいのかよ。


「ま、呼び方はどうでもいいさ。使えんだろ」

「つか……?」

「ガキ産めるんだろ? 獣人は繁殖期入るのが早いっつうし」


 そっちかい! 思わず尻尾の毛が逆立ったぞ。

 うわあ、洒落になってないな。いや、もともとのアルニムア・マーダなら喜んでほいほいと行くんだろうけど、俺はそうじゃないし。


「メス集めてこいってことだしな。さあ来い」

「ひっ」


 うん、今のひっは本音。おっさん気持ち悪すぎるし、こんなのにのしかかられてたまるか。ふざけんなこんちくしょう、

 ああもう、今すぐここから逃げ出してシーラたちと合流したいのに。お前邪魔なんだよ、来るんじゃねえよ、マジでうぜえ!


「くんなあ!」

「ごっ!?」


 あれ。今、声と一緒に身体の中から何かが……って、この展開は前にもあったよな。

 思い出した。そうだ、こっちに来てすぐ、シーラふっとばしたとき。それと同じように今、おっさんは吹っ飛んで後ろの木にぶつかって目を回している。

 もしかして、イヤボーン再びか。しかも、あのときより威力落ちてるし……いや、ここで復活直後のアレレベルだと、木どころか建物吹っ飛んでそうでやばいんだけど。

 それに、変な物音がしたわけで。当然、次の展開としてはこうなる。


「今の音、何だ?」

「あっちだ!」

「おう、やべえやべえ」


 慌てて声とは反対の方角に行きかけて、気がついた。俺、子供の身体だけど獣人なんだよね。種類も分からないけれど……まあ、神様だから種類もへったくれもないか。

 だから、もしかしたら体力とか、思ったより高いのかもしれない。というわけでチャレンジ。


「せーの、よっ!」


 数歩助走して思いっきり飛び上がる。お、渡り廊下の屋根の上に上半身が引っかかった。そのまま、片足を上げて何とか登り切る。そうして屋根の上、匍匐前進のノリで向こう側へと乗り越えた。

 ……周囲の配下たちがいたから、こんなことやらなくてもよかったんだよな、俺。要するに過保護にされてたってことか。いや、悪くないけど。


「おい、サリク?」

「何寝てんだ」

「周囲に気をつけろ、誰かいる可能性がある」


 あのおっさんのらしい名前を呼びながら叩き起こそうとするおっさんに、周囲を警戒している若い兄ちゃん。小太りの中年親父は偉そうなセリフを吐いてるけど、俺に気づく様子はない。全員人間だから、鈍いのかもな。これで獣人が一人でもいたら、やばかったかも。

 さて、このまま屋根伝いに表に出るか。行くぜ、アルニムア・マーダ。

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