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101.見えるだけなら見えるらしい

 ミンミカが連れて行かれて、どれくらい経ったか。

 宿舎の中はしんと静まり返っていて、誰かがいる気配はない、と思う。


「……そろそろ、いいか」


 恐る恐るベッドの下から這い出すときに、軽くがつんと角をぶつけた。出てしまってからぶつけたところを見てみると、木が削れている。俺の角の勝ち、か。じゃなくて。


「うえぇ」


 ベッドの下の空間に入っていた俺の身体には、あちこちにホコリと蜘蛛の糸がこびりついていた。お約束である。参ったなあこりゃ、と思いながらとりあえず見える分と頭についてるのは何とか取った。尻尾にもついてるよ……毛に絡みつくなよ、ああめんどくさい。


「参ったな……ったく」


 つい独り言を言ってしまうのは、こっちに来てから基本的に誰か答えてくれる環境だったからかも知れない。最初からカーライルがいたし、すぐにファルンとシーラも仲間にしたからな。

 アムレク、うまく逃げられたかな。ああもう、念じてみたら見えるくらいのことできないのかよ、俺。一応神様だろ。

 どこだー、とアムレクの名前を頭の中で呼びながら目を閉じてみた。


「………………ん?」


 思わず目を見開いたぞ。今、一瞬茶色の垂れ耳が見えた気がする。

 気のせいかと思いつつ、もう一度念じてみよう。しっかりと両目を閉じて、アムレクどこ行った。


「……シーラ?」


 今度は目を開かなかった。よし俺、偉い。

 さて、見えたもの。茶色の垂れ耳と、その向こうにシーラが見えた。今度は結構はっきり見えてるのでありがたいな、と考えつつ周りを確認してみよう。

 まあ、想像通りというかガイザス工房の中だ。ファルンと、カーライルもいる。ふたりとも焦った顔になってるのは……多分、アムレクから事の次第を聞いているからだろう。

 シーラの腰、サッシュベルトに引っ掛けるように、真新しい鞘がちらっと見えた気がした。おーい、と呼んでみたけれど声は届かないんだな。向こうの声も聞こえないし。


「これがマジもんなら、あっちには情報は届いたと」


 一通り見たところで、再び目を開ける。今の映像がマジなのか俺の妄想なのかは分からないんだが、実際のものであることを願おう。

 それなら、アムレクは無事だしシーラたちも事情を知ったことになるからな。

 ところで今のやつ、他の人にもできるんだろうか?


「……やってみっか」


 と言ってもシーラ・ファルン・カーライルとアムレクは今まとめて見たわけで。要するに、今速攻で状況見たいやつは一人しかいない。もちろん、連れて行かれたミンミカだ。

 ミンミカはどこだ、頼むから見えてくれと意識を集中してみる。ややあって、まぶたの裏にぼんやりと風景が見えてきた。


「ん、ここの教会じゃねえか」


 行ったことあるから、あの簡素な内装はすぐに分かる。マジでそっち行ったな、あいつら。

 ミンミカ連れてった連中らしいむさいおっさんどもが、えーと十人ほど。地人族はいないな……人間がメインで獣人が混じってる。鳥人はいないっぽい。

 ぱっと見は普通の旅行者っぽいちょっといい服を着てる。ドンガタの村だと住んでる人間は少ないから、こっちのほうがおかしく思われないわけだ。なるほど。


「武器、新品だな」


 それが目を引いたんだよね。使い込んだ武器だと、どうしてもあちこち汚れたりすり減ったりするもんなんだけど、それがない。

 こいつら、ガチで武器購入の客としてやってきて、それをその場で使ってるわけか。マジで何やってんだ、てめえらは。

 それはそうとして、ミンミカ。ぽいと放り投げられた彼女、しっかりガッチリ縛られております。自由にしといたらどうなるかは想像つくから、念の為だろうなあ。

 彼女以外にお世話になった僧侶さんとか、他は信者さんとかだろうな……女の子がおっぱい強調する縛り方で転がされている。おのれ、それはそれで目の保養だがふざけんな。


 マール教だろうがマーダ教だろうが、俺のミンミカとあと可愛い女の子たちにひどいことするんじゃねえ。許さん。

 ……あまり、人のことは言えないけどな。

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