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099.留守番中にいただきます

 のんびり温泉を巡ったり村のあちこちを見物してたりするうちに、七日が経った。さっきドートンさんが、「シーラさんの剣ができました」って呼びに来てくれたんだよね。

 で、シーラはファルンとカーライルを連れて受け取りに行くことになった。最終的な細かいチェックをするから、こちらから出向いたほうがいいらしくてさ。


「では、行ってまいります」

「行ってらっしゃい。カーライル、ファルン、付き添い頼んだよ」

「はい、お任せくださいませ」


 俺たちは宿舎にいるつもりなので、アムレクとミンミカで護衛は大丈夫だと思う。耳も鼻もいいしな、ふたりとも。


「アムレクさん、ミンミカさん。コータ様をよろしくおねがいしますわね」

「もちろん、まかせてください!」

「ミンミカとおにいちゃん、コータちゃまといっしょにきちんとおるすばんしてるですー」


 ……訂正。小さい女の子とウサギ兄妹でお留守番なので、大丈夫だと思う。さすがにマール教の教会にくっついてる宿舎だし、ここに突っ込んでくる馬鹿はよっぽど困ってるやつかマーダ教か、だろうし。

 マーダ教の女だったら俺が吸う。男だったら兄妹がぶっ飛ばすか、教会に助けを求めに行けばいい。ひどいな俺、マーダ教主神だろ一応。


「それじゃ、シーラさんお預かりしていきますねー」

「いってらっしゃーい」


 ドートンさんを先頭に、一同がぞろぞろ出ていく。ばたん、と扉がしまったところで俺はふうと息をついた。

 身体がこのくらいのサイズだとさ、枕結構大きいんだよな。普通の枕でも、ぎゅうと抱きしめて抱き枕にできそうなくらい。

 あー、今日はこのままぐーたら寝ててもいいかもしれないな。最近、吸ってないからかもだけど。


「コータちゃま、おそといかなくてよかったですか?」

「大体毎日行ってるし、一日くらいのんびり寝てても良いんじゃないかなあと思って。それに」


 ミンミカの疑問はもっともだ。昨日までは、何だかんだ言いつつあちこち行ってたからなあ。中にはシーラの剣の調整に付き合って出たり、ってのもあったけどさ。

 でも、のんびりしたいっていうのもあるけれどもう一つ、あるんだよな。ドンガタの村、人多いから。


「さすがにこの身体だと、うっかり手が離れたら迷子になっちまうんだよなあ」

「コータちゃまはちっちゃいですからね」

「だろー。みんなからでも探すの大変だろうけど、こっちからでも周り見えなくてな」

「ぼくやミンミカはにおいやおとであるていどわかりますけど、コータちゃまはそうはいきませんか」

「いかないなあ。残念」


 そういうことなんだよね。要するに、俺自身がまた迷子になったりして皆に迷惑掛けたら大変だな、ってこと。

 アムレクやミンミカみたいに、音や匂いで皆を探せればいいんだろうけれど。ボディ自体は獣人系なのに、男だった時の感覚と今とで五感はほとんど変化ないんだよな。そんなもん必要なかった、といえばそれまでなんだけど。言っても神様だし、俺。


「ぼく、おとこべやでゆっくりしてます。なにかあったら、よんでください」

「うん、分かった。ありがとう」

「おにいちゃん、あとでねー」


 アムレクがそういって、隣の部屋に引っ込む。神様と妹とはいえ、女の子といつまでも同じ部屋にいるとまたシーラにしばかれるとか、カーライルに叱られるとか、そういうのが染み付いたらしい。いいんだけどさ。

 兄の退出を見計らったのか何なのか、ミンミカが俺が転がってるベッドの端に腰を下ろした。身体ひねってこっちを見ながら、垂れ耳がいつものようにぴるぴると震えている。


「コータちゃま」

「何」

「おなかすいてますか」


 んあ。

 吸ってない以上、当然そっちの意味で腹は減っていく。まだまだ腹ペコ、までは行ってないけれどせっかくなら吸いたいなあ、程度には腹は減っている。

 ミンミカがそれに気づいていたのか、それとも吸われたくてそんなこと言ってるのかは分からないけれど。


「空いてるな。いいか?」

「もちろんです」


 餌が向こうからさあ食え、とやってきた以上俺に拒否する理由は全くない。アムレクの目もないし……あいつ、分かってて部屋出たのかな?


「では、いただきます」

「はいです……んむ」


 そんなわけで、ベッドの上でゴチになることにする。変な意味でじゃないぞ、ちょうどそこにいたからだ。

 だから、ミンミカが俺にのしかかってくるのもちょうどそこにいるからだ。あと、ウサギ獣人の毛はふかふかして気持ちいい、しな。

 うん。

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