第八話 「お慈悲に感謝!さあ決めよう」
その日、僕ら音楽研究同好会は、校舎裏のボロい物置小屋にいる。まさかこれが新しい部室になるとは、思いもしていなかった。
金本からバンド結成が宣言された日、掲示板にこう書かれていた。
ーー音楽研究同好会が使用する教室は今後、軽音学部が使用することを認める。
翌日、全員で書かれていた張り紙について生徒会に乗り込んだ。
「あの張り紙はどういうことですか?」
もちろんこれに対して、抗議をするために僕らは生徒会室に向かう。そして、会長に説明を求めた。
「君たちが見た通りだ、音楽研究同好会は活動の改善がないと生徒会は判断した」
「そんな! せっかくバンドを組んで、これからだってのに」
生徒会長の言葉に納得できない僕は、そう口にする。
「これまでの活動を審議した結果、成果もなく生徒からのクレームが大半だ」
生徒会はそのような問題を起こす同好会に、広い教室を使わせる理由はないと結論付けた。
学校側とも話がつき、軽音楽部に使用させるということが決まった。
そして早急に、教室を片付けるように指示を受ける。それに対して僕らは何度も反論するが、生徒会長の決定をくつがえすことはなかった。
「あー、もしかして僕のやったことが決定打だったのかな」
生徒会の教室を出た僕は、廊下を歩きながらそう口にする。
「そうかもしれないな、ある意味でそれが原因だったかもしれない」
和田がそう嫌味ぽく言うと、すかさず金本がフォローをする。
「まあ……仕方ない! けど、別の場所を提供してもらえるんだからそれだけでもありがたい話じゃないか」
マイペースにそう言うが、新しい部室になる場所が問題であった。
「焼却炉の隣にある物置小屋って、ちょっとひどくないですか?」
生徒会から与えられた部室。それは、完全に校舎から隔離されたボロい小屋だった。
「まさに、臭いものにはフタをするってことだな!」
うまいことを言ったつもりの荒木は、笑いながら岡山と呑気にしゃべっている。
「文句を言っても仕方ない! 今後の活動を明日から決めていこうではないか!」
そして今現在、ボロい物置小屋にいたわけであるが、なにをするかを決めれずにいた。
「うーむ……バンドをするとは言ったけど、なにをすればいいんだろう?」
金本は腕を組みながら悩んでいる。
「え? だから、普通に練習してライブをするだけの話では?」
なにをそんなに悩む必要があるのかと、僕は金本にそう答えた。
「といってもこんなボロい小屋で、練習って言われてもな」
荒木は、ボロい物置小屋を見ながら話す。
「たっ、確かに。この小屋って……狭すぎだよね」
岡山の言う通り、小屋は五人がやっと入れるくらいの広さしかない。
「というか、本当にバンドを組んでくれるんですか?」
「もちろんだとも! やるのはアニソンと、ギャルゲーソングだ!」
半信半疑な僕の問いに、金本は穴息を荒くして答える。
ーー金本はいいとして、他の三人はどうなのだろうか?
僕は荒木たちに同じように尋ねた。
「先輩達はいいんですか? あんまり、乗り気じゃなかったはずじゃ」
パソコンを使っていた和田が、少し照れくさそうに話し始める。
「確かにバンドなんてやる意味はないと思っていたさ、けど……」
そこで和田が言葉をつまらせる。
「君があんなに必死で、恥ずかしげもなく演奏する姿を見たら協力したくなるじゃないか」
荒木と岡山もうなずいている。
恥ずかしそうに和田が言う姿を見た僕は、つい笑ってしまう。
「あはは! 結局、皆さんも楽器を弾いてればバンドがやりたい気持ちになるってわけですね」
理由はどうあれ、こうしてバンドを組めるだけでも感謝しなければならない。
和田の言葉に感謝しつつ、僕は心からそう思った。
「そこ! 話してばかりいないで、なにをするかを考えてくれよ」
金本から注意された僕らは、話を元に戻す。
「この小屋でまともに楽器弾けはしないだろうし、曲を決めるとかは?」
和田がそう提案すると、岡山も意見をする。
「きょっ、曲を決める前にバンド名とか先に決めたほうが、 モチベーション上がるじゃないか?」
互いに意見が飛び合う中、僕は一番大事なことに気づく。
「バンドを組んで、なにを目標にするかを決めましょうよ」
ライブをするにしろ、誰のなんのためにをはっきりしないと意味がない。
僕がそう話すと、金本は紙になにかを書き始めている。
「目標はすでに決まっている! 見たまえ!」
金本が紙を僕らの前に突き出した。僕らが紙を見ると、こう書かれていた。
ーー打倒、全校生徒! ギャルゲーソングで頂点に立つ!」
「いやいや、まったく意味がわからないですよ! なぜ、ギャルゲーで頂点を目指すんですか」
「岩崎君、金本はこういうやつなんだ……すまない」
金本は目をキラキラさせながら、僕を見ている。
「うっ、うるさい!」
僕はギャルゲーソングで頂点に立つことを聞いていた。
どういう意図か聞くと、金本は話す。
「岩崎君のギターは下手だ! それは、どうしようもないくらいに。だが、選曲は悪くなかった」
「いやいや……それは嫌みですか? そんな話じゃなくて」
いきなり僕のギターをディスり始める金本に僕は反論する。
しかし、話を聞かずに金本は自分の話を続けてしまう。
「そこで、僕らはギャルゲーソングをバンドでやる! 完璧にして最強のな」
僕はその言葉にポカンとしていまう。
ーーえ、完璧? 最強?
意味が理解できないのは、荒木たちもそうだろう。
「最強バンドになり、ギャルゲーソングで全校生徒をギャフンと言わすのだ!」
その言葉を聞いた僕は、頭を抱えてこう思うのだった。
「大丈夫かよ……この同好会」
とにかくこうして、僕ら音楽研究同好会のバンド活動が始まる。