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オタクがバンドを組んでなにが悪い?!  作者: 獅子尾ケイ
激闘! ライブハウス編
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第八十一話 「訪問、突撃ライブハウス......?!」

 ーーライブハウス。ウイスキー・ア・モンスター。


 市内にあるライブハウスの一つで、数多くのバンドマンがライブをしている。有名なプロのバンドから、無名のアマチュアバンド。


 プロ、アマチュアと関係なくどんなバンドもライブができる場所。


「そう、ネットには書かれていますね」


 ライブハウスの目の前に立っている僕は、スマートフォンを見ながら話した。


「へー、かなり有名なライブハウスなの?」


「いや、ここよりも他に人気があるライブハウスがあるみたいですよ」


 ネットに書かれているカキコミを荒木に伝える。荒木はあまり興味がなさそうに、僕の話を聞く。


「ねーねー、とりあえず中に入ってみようよ」


 響子はそう言うと、入り口のドアを開けようとしている。


「こういう場所って、なんだか緊張するよね……未知の世界というか」


「僕も行ったことがないんで、ちょっとソワソワしていますよ」


 いざ目の前にあるライブハウスが、異様に怖く感じる。勝手なイメージだが、ガラの悪そうな店員がいるものだと思ってしまう。


「会長が言ってたように、危ない人とかいるんじゃないか?」


 僕と荒木はそう話しながら、中に入るのをためらっていた。


「なにやってるのー? 置いていくよー」


 そんな僕らに構わず、響子は中に入っていった。


「……行くしかないか」


 恐る恐る、僕はドアを手にかける。


 ーーバタンッ!


 ドキドキしながら、僕らはライブハウスの中に入っていった。


「岩崎君……本当にここって、ライブハウスなの?」


 中の光景を見ながら、荒木はそう尋ねてくる。


「そのはず……なんですけど」


 想像していたのと違ってた店の中に、僕はおどろく。


「わー! なんかカフェみたいな感じだね」


 響子は目を輝かせながら、店内を見回していた。彼女が言ったように、入ってすぐにテーブルとイスが置いてある。


 奥にはカウンターテーブルがあり、見るからにオシャレなカフェみたいだッた。


「いらっしゃいませー」


 僕らが立ち止まっていると、一人の男性がそう声をかけてきた。


「今日はパンケーキセットがおすすめだよ、メニューはカウンターにあるから」


「え? あっ、はい」


 そう言われたまま、僕らはカウンターに向かう。


「いらっしゃい、なんにする?」


 タバコの煙を口から出しながら、カウンターにいる中年の男性が僕らに聞いてくる。


「あたしは紅茶と、パンケーキ!」


「じゃあ……僕は、アイスティーを」


 荒木と響子は、なにも気にすることなく普通にオーダーする。


「いやいや! 違うでしょ、カフェに来たわけじゃないよ」


 僕は二人に話しつつ、店員に尋ねた。


「あの、ここってライブハウスですよね?」


 疑いながらそう言うと、店員はキョトンとしている。


「ああ、そっちのお客さんか! うん、そうだよ?」


 あっさりと答えられた僕は、眉をひそめる。


「どこに、そんな要素があるんです? ライブをする空間がないですよ」


 店内を見ても、ライブスペースがどこにもない。ギターなどのインテリアが置かれてはあるが、どこから見てもカフェ。


 信じられずにいる僕に対して、店員はさらに答える。


「そりゃあ、ここにはないよ。場所はだね……」


 ーーキィ、バタン!


 どこからかドアが開いた音を聞くと、店員は話すのを止めた。


「おー、おかえり! お客さんが来てるから、頼むわ」


「えー、また? いいかげんに、アルバイトを増やしたほうが……って、あれ?」


 なにか気がついたのか、声の主はこちらを向いている。僕も声がするほうを振り向くと、そこには知っている顔の人物がいた。


「え? おまえは……」


「ああ! 前に学校に来てた、たしか鏡香ちゃんの知り合いだっけ?」


 以前、鏡香の学校に行った時に見た顔の女の子がそこにいた。


「えっと……たしか、野中さんだっけ?」


 鏡香たちのバンドにいる、メンバーの一人だったはず。


「そうそう! どうしたの? こんなところに来て」


「いや、ライブハウスを下見に来たんだけどさ……というか、なんで野中さんが?」


 なぜかエプロンを着けている野中さんに、僕は理由を聞いてみる。すると彼女は、不思議そうな顔をしていた。


「なんでって、ここはわたしの家だからよ?」


 野中さんの言葉に、僕はおどろく。


「ええー! 家って、ライブハウスが自宅なの?」


 ライブハウスが自宅だなんて、聞いたこともない。僕はあまりのおどろきに、声が大きくなってしまう。


「あー、酒井君から聞いてなかったっけ?」


 そう言うと、野中さんは話し始める。今回のライブは、彼女の親が経営するライブハウスでやること。


 野中さんはここのカフェで、家の手伝いとしてウエートレスをしているらしい。


「普段はカフェで、夜はライブハウスとバーになっているの」


 ライブを演奏する人、それを見に来る人の他にバーを目当てでくる人がいる。


 バーで飲んでいる人も、ライブ中のバンドを映像で見て、気に入ればチケットを買って見に行ける。


 海外でよくあるライブハウスに似たやり方で、営んでいる。


「ライブスペースは地下にあるの、そこに階段があるでしょう?」


 野中さんが指差した先に、下に降りる階段がある。階段を下りた先が、ライブをやる場所のようだった。


「よかったら、見てみる?」


「……え、いいの?」


 今はライブをやる時間ではなかったが、そう言われた僕は思わず聞き返してしまった。


 野中さんは店員となにか話して、なにかを受け取っている。


「せっかく来たんだし、準備前でなにもないけど大丈夫?」


 実際に、ライブをやる場所を見られるチャンスだ。僕は、首を縦に振るう。


「じゅあ、行こうか」


 その言って、階段がある方へ歩き出す野中さん。僕らは彼女の後を追い、階段へ向かった。


 ーーカッカッカ。


 鉄でできた階段を降りたら、薄暗い空間が広がっている。少し歩いた先に、分厚い大きなドアが

目の前にあった。


「音がもれないように、防音対策をしてあるんだな」


 荒木はそっとドアに手を触れ、僕らに話しかけてくる。


「地下にライブハウスがあるのは知ってたけど、こんな感じなんだねー」


 僕らは初めて見る場所に、興味があるように話している。


「中に入るよー」


 野中さんはカギを入れてロックを解除する。ドアが開かれると、暗い中に入っていった。


「ついに、演奏するステージを見られるんだな……」


 緊張しながら、僕は中に入る。


「暗いぞ? なんにも見えない」


 荒木の声が、暗い部屋から聞こえてくる。


「みんなどこだ? 姿が見えない」


 視界は暗く、誰の姿も見えなかった。すると、ライトが光り出す。


「おお……」


 明かりがつき、目の前の光景に僕は息を飲んだ。憧れていたライブハウスのステージ。僕の目に、それは写り出されていた。

作者の一言。


こういうカフェとライブハウスが一緒になったところがあるといいなあと思って書いてみました。



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