表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクがバンドを組んでなにが悪い?!  作者: 獅子尾ケイ
進化! 僕らのバンド編
79/173

第七十三話 「部活の女友達と喫茶店に行ったら修羅場になった件」

 新しいボーカルを迎え、バンドの練習が本格化する。


 何日もたつと、馬場さんを響子と呼ぶまでになっていた。


「なんで、あたしがなわとびをしなきゃなのよ」


 部活が始まってすぐ、全員で大なわとびをするのが日課になっていた。


「そっ、それが。同好会の、新たなメニューだ」


 ぴょんぴょんと跳びながら、金本がそう話す。一体感を生み出すため、響子も例外でない。


 そう考えたからこそ、彼女も跳ばなければならない。それが、金本の考えなのだろう。


「あのパパ、ろくでもないわね!」


 しかし、大なわとびの効果はバンドの練習で発揮されたりする。


 全員で合わせて弾く時に、前よりもタイミングのずれがない。きちんと、互いの音を聴いて弾いているのだ。


「なんとなく、グループ感を出せているよね」


 ギターを弾いていた和田が、そうつぶやく。


「ああ! よく弾き、よく跳んだってこだな!」


 この場にいる全員が、それを実感している。


「バンドは、練習あるのみ! ひたすら弾いて歌うしかない」


 アニメ、ギャルゲーの曲を、バンドを通して知ってもらう。作品自体を知る、きっかけになってほしい。それが、僕らのバンドをやる理由だ。


「よーし! 最初から、合わせてやってみよう」


 曲を完璧にするため、この日も練習が続く。そんなある日、響子がぽつりとつぶやく。


「思うんだけどさー、コーラスの構成を考え直さない?」


「岩崎君の入り方が、悪いのか?」


 全員で楽譜を見ながら、荒木がそう尋ねた。


 ボーカルの声に合わせてハモるのが、僕のパート。どこか間違えているのかと、僕は気になった。


「んー、悪くはないんだけど。たまに、あたしが音程をはずしちゃうのよ」


 ハモる音程が目立ってしまい、メロディが飛んでしまう。


 歌いにくさが少しあると、歌詞のところに指を指して話した。


「こことそこ、後はサビの終わりが怪しくなっちゃうのよねー」


「ああ、それはわかる。僕も、そこが聴き取りにくいかな」


 僕自身も、似たようなところがあったりする。たまに、ボーカルの声と同じ音程で歌ってしまう。


「でしょー? 歌のほとんどにハモらせるしさ、だから変えたほうがいいかなって」


 響子の考えに一理ある、しかしどう変えればいいのだろう。


「うむ、そこは二人で話し合って決めればいいさ」


 歌に関しては、ボーカルに任せる。金本は、そう答えた。


「無責任ですねー、仮にもバンドのリーダーでしょう?」


 結局、僕と響子で歌パートを話し合うことになった。


 部活が終わり、近くの喫茶店に足を運ぶ。


「んで、どうしていくよ」


 ボーカルとコーラスのバランスを、どうしていくかを話し合う。


「曲のイメージを考えたら、やっぱり原曲の通りに歌うのがベストでしょう?」


「でもさー、なんかアレンジも加えたいよな」


 いざ考えると、あれもこれもやりたくなっていく。お互いに案を出すが、なかなか決まらずにいた。


「パパは、コーラスをメインにしたほうがいいって言ってたのよね?」


 注文したドリンクを飲むと、響子は手を頭の後ろに置く。


「ああ、他のバンドにないことをしたほうがいいらしい」


 おもしろい構成ではあるが、ボーカルがいるとそうはいかない。


 原曲を考えるなら、ボーカルの歌がメインになる。


「聴く人からしたら、ボーカルが歌うのを聴きたいよなあ」


「そうよねえ……でも、パパのアイデアも悪くないしー」


 今までに見たことがないバンド。


 アニソンやギャルゲーの歌で、それを表現していく。それがジャスティンさんの、思惑なのだろう。


「とりあえず、あたしらが歌いやすいように考えますか」


 歌詞の書かれた紙に、蛍光ペンで印をつけていく。


「サビのところは、二人でハモる感じだな」


 僕も持っている紙に、メモを取る。しばらくして、なんとか形にできた。


「できたはいいけど、微妙ね……」


「なんか、おもしろさがないな」


 完成した構成を見つつ、僕らはそう口する。原曲を意識すると、CDで聴いた通りのボーカルとコーラス。


 僕のコーラスが、そこまで目立っていないのだった。


「なんだよ! リードコーラスボーカルって」


 そもそも、具体的にどう構成していいかわからない。コーラスを中心にしても、結局はボーカルがメインになってしまった。


「ジャスティンさんの意図が、わからねえ……」


 歌詞を見ながら、僕は頭を抱えた。


 ーーカランカラン。


 お店の扉を開ける音がすると、聞き覚えのある声がする。


「ふう! やっと部活が終わったわ、お茶でも飲んで……って、あれ?」


 店に入ってきた人物が僕を見つけて、こちらに向かってきた。


「あー! がんちゃん、なにしてんの? こんなところで」


「……あ?」


 顔を上げると、そこにひなたがいた。


「んだよ、ひなたか」


 僕は、面倒くさそうな声でそう話した。響子はポカンとした顔で、僕に尋ねてくる。


「ねえ、 誰? キョウちゃん」


「あ? ああ、同じクラスのやつで……」


 そう言いかけると、ひなたが割って入ってくる。


「どうもー! がんちゃんと同じクラスの、山岸ひなたですー」

 

 なぜか、対抗心があるような言い方で話すひなた。


 ーーなんだ?


 その様子に、僕はたじろぐ。


「そういうあなたは、どちら様?」


「あー、あたし? キョウちゃんと同じ同好会の、馬場響子」


 響子が言い返すと、ひなたがピクっとする。


「キョウ……ちゃん?」


「あのー、ひなたさん?」


 ただならぬ雰囲気に、僕はおそるおそる声をかけた。


「がん! ちゃんとは、どういう関係なのかな?」


 僕に構うことなく、ひなたは響子に話しかける。その顔はにこやかであるが、どこか怖い。


 そんなひなたの顔を見ながら、響子はにやりと笑った。


「えー、聞きたいの?」


 火花を散らすような二人に、僕はどうしていいかわからない。


「相席……してもいいかな?」


「どうぞ?」


 そしてひなたは、席に座った。

作者の一言。


ヒロインはいたほうがいいと思っていましたが、いまだに誰がヒロイン?状態です。


これはまずい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ