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オタクがバンドを組んでなにが悪い?!  作者: 獅子尾ケイ
進化! 僕らのバンド編
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第六十二話 「レコーディングスタジオに行こう!」

 僕らはジャスティンさんに会うため、待ち合わせ場所に向かう。みんなで談笑しながら歩いているが、金本たちは妙にハイテンションでいた。


「とりあえず、サイン用紙とか買ってきたけどさ! なんて書いてもらおうか?」


 すっかり声優さんに会う気でいる金本に、僕はため息をつく。


 ーーんなわけないだろ、なに勘違いしているんだ。


 ジャスティンさんと電話で話した時、そんな会話はなかった。ただ、レコーディングスタジオに来てくれと言っていただけ。


 どういう意図があるかはわからない。ただ間違いなく、声優に会わせるわけではないと思った。僕がそう考えながら歩いていると、待ち合わせ場所に着く。


「まだ、来ていないのかな?」


 辺りを見回すが、ジャスティンさんの姿はない。時計を確認すると、まだ約束していた時間になっていなかった。


「あれれ? 早く来てしまったか、どうしよう」


「とりあえず、待っていようか。ベンチもあるし」


 僕らは駅から少し離れた広場で、待ち合わせをしていた。


 ベンチがあるとこまで行き、 金本たちは腰かける。


「都市部まで来るのなんて、久しぶりな気がするよなあ」


 キョロキョロと周りを見渡しながら、金本はそう口にする。


 ここは、僕らが住んでいる町よりも都会であった。オフィス街やおしゃれなお店が、多く立ち並ぶ。僕らには場違いな所であった。


「オタクっぽい人が、まったくいない……」


 広場を歩く人たちを見ながら、僕はつぶやく。


 センスがいいファッションに身を包み、充実した生活をしているように思えてくる。


「それに比べて……」


 金本たちに目を向ける。


 アニメのイラストがプリントされたシャツ。

 それをピチピチのジーンズにインしているのが、なんとも言えない。


「失礼だな! これのどこが、いけないと言うんだい?」


「どう考えたって、オタク感が丸出しですよ! 痛々しい」


 金本が着る服に、僕はいちゃもんをつけた。すると、金本は僕を見るなり言い返す。


「君こそ、なんだそのシャツは! 前のドクロよりひどいじゃないか!」


 僕が着ているのは、とあるバンドのシャツだ。ギターを持つ、悪魔が印象的なナイスなシャツである。


 にもかかわらず、それが気に入らない顔をする金本。水と油のように、僕らは言い争っていた。


「君も、僕らと同じ志を持つオタクだろう! 」


「ギャルゲーの曲は好きですけどね! 自分がオタクとは、思っちゃいないっすよ!」


 話は平行線、お互いに一歩もゆずらない。


「はーい! ミナサン、お待たせしましたネー」


 そこへジャスティンさんが、遅れてやってきた。


「チョット仕事があって、遅れてしまいマシタ……って、なにかあったのデスカ?」


 僕らの言い争いを見たジャスティンさんが、和田に尋ねる。


「いいえ。二人はほっておいて、行きましょう」


 そう言って、和田たちはジャスティンさんと歩いていく。


「あっ! 僕らを、おいていくなー」


 僕と金本は、先に歩いていったみんなを追いかけた。


 しばらく歩くと、ジャスティンさんは立ち止まった。


「ハーイ、ここデース!」


 そう言われて見た先には、小さな建物がある。


「……え、ここ?」


 コンビニエンスストアにしか見えない

建物に、僕はそう口をこぼす。


「違いますヨ! ここが、レコーディングスタジオ」


 ジャスティンさんは、そのまま中に入っていく。


「いやいや、んなわけないでしょうよ」


 僕は建物を見ると、疑いながらつぶやく。


 だが、金本たちは違うことを考えているようだった。


「ここに声優さんが……よーし、行くぞ!」


「えええ……」


 もはや、レコーディングスタジオがどうこうの話ではなく。単純に声優のことしか頭にないようだった。


 ジャスティンさんを追うように、金本たちもあとに続く。


「でも、レコーディングスタジオでなにをするんだろう?」


 どういう目的かわからないまま、僕も中に入ることにした。ドアを開けて中に入ると、僕はおどろいた。


 待ち合い室のような部屋が目の前にあり、ギターなどの楽器が飾ってあった。


 とても清潔感があり、レコーディングスタジオには見えない。


 僕はキョロキョロと、室内を見ている。金本たちは、はしゃぎながらソファーに座り込んでいた。


 そこへ、ジャスティンさんが声をかけた。


「ボーイズたち! ご紹介シマース」


 そう言うと、一人の男性が現れる。


「初めまして、君たちが馬場の言っていた子たちだね」


 とてもさわやかで、明るい雰囲気を出している人は、そう話しかける。


「私は、本田と言います。ここで、レコーディングエンジニアをしています」


「どっ、どうも! 僕らは……」


 僕はその雰囲気に、少しとまどいながらあいさつをする。


 ジャスティンさんとは違い、まともに見える本田さん。


 ーー本当に、ジャスティンさんの知り合いなのだろうか。


 そんな疑問を持ちながら、僕は本田さんの話を聞いている。


「彼とは長い付き合いで、よくゲームの曲も作ってもらってマスネ」


「レコーディングだけじゃなくて、作曲もしているんですか?」


 僕がそう尋ねると、本田さんは恥ずかしそうにうなずく。


「さっそくだけど、コントロールルームに来てみるかい?」


 本田さんは僕らに話しながら、部屋のドアを指差した。


 どんな部屋が気になる僕は、おそるおそる中に入る。部屋にはとても大きな機材が、たくさん置いてある。


 オーディオスピーカーが置いてあったり、テレビのようなものまであった。


「ここでは録音したり、それを編集したりするんだよ」


 一つ一つ親切に話しかけてくれる本田さんに、耳をかたむける。


 こういった場所で、僕らが聴く音楽が作られているんだなと勉強になる。


「フッフッフ! 実は、ボーイズたちにここで……」


 ジャスティンさんが、なにかを話し始めたと同時に金本が話す。


「すごいのはわかりました! んで、どこにいるんですか?」


 金本の問いに、ジャスティンさんと本田さんはポカンとしている。


「金本ボーイ、なにがいるんデスカ?」


「またまたー! 声優さんですよ、会わせてくれるんでしょう?」


 金本はニコニコしながら、サイン色紙を手に持つ。同じように、荒木たちも持っている。


「……え?」


 まるで時間が止まったように、固まるジャスティンさんたち。


「今日はここで、バンドの練習をするんじゃないのかい?」


 本田さんは苦笑しながら、僕に尋ねる。


「え、そうなんですか?」


 なにをやるかを知らされていなかった僕は、そう聞き返した。


「ジャスティンさんからは、レコーディングスタジオに来ないかって……」


 僕は、これまでの事情を説明する。


 やっぱりかと、話を聞いた本田さんは笑っている。


「馬場は思いつくと、すぐ行動するやつだからねえ」


 そう言い終え、本田さんは手をパンッとたたいた。


「すまない! 残念だけど、アフレコはないんだ」


 金本たちに声をかけ、本田さんは謝る。


「ええー! なら何のために、僕らは来たんだ!」


 今にも爆発しそうな金本に、本田さんは優しく話しかける。


「はは……ところで、君たちはギャルゲーソングを弾くんだって?」


 話しかけられた金本は、そうだとうなずく。


「じゃあちょっと、弾いて見せてくれるかい?」


 それを聞いた本田さんは、そう頼んできた。


 とてもステキな、笑顔と共に。

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