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第五話 「とある岩崎くんの解決方法」




「同好会でバンド活動をして、生徒会を納得させる!」


 それが一番シンプルで、わかりやすい解決方法だ。


 僕は金本たちにそう提案したが、猛反対されてしまう。


「バンドを組んでライブをするって? そんなことしたって、どうにかなるわけではないだろ?」


 和田は呆れたような顔をして、ため息混じりにそう話す。


「僕らの活動は、あくまでアニメやゲームの情報を発信することだよ」


 和田はなにやらカチカチさせると、僕にパソコンの画面を見せた。

 画面には和田が作ったとみられる、同好会のホームページが表示されている。


 ーーへぇ。ホームページなんかも作ってるのか。


 僕は画面を見ながらそう思っていると、あることに気づく。

 ホームページは長い文章ばかりで、なにが言いたいのかさっぱりわからない。


「……え? ひょっとして、これを生徒会に活動報告として提出していたんですか?」


 まさかと思って聞くと、全員がうなずく。


 ーーマジかよ。こんなの出されたら、誰だって活動報告とは思わないだろ。


 こんな感想文みたいなのを書く金本たちに、僕は呆れてしまう。


「我々は、ネットを利用してサブカルチャーの良さを広めているんだ! 今さら変える必要はない!」


 つまり、金本たちは今のままで良く、変わる必要がないと言いたいのだろう。

 変なプライドだけはある金本たちに、自分の思ったことを口にする。


「そんなだから、ろくでもない同好会だって思われるんですよ! 生徒会や軽音学部からバカにされる理由がわかりますよ」


 ーー楽器の演奏はできるのに、なぜそれを利用するとかを考えないのだろうか?


 ふと、そう思った僕は尋ねてみる。


「なんで皆さんは楽器がうまいのにバンドを組むとか、ライブをしようとか考えないんですか?」


 僕の言葉に、荒木は真顔で答える。


「前にも言ったけど、それは単にその手の音楽が好きで弾いてるだけだよ? 弾ければそれでいい」


 荒木の話に、僕は納得できずにいた。


「なはは! 岡山なんて、ダイエットでドラムを始めたくらいだからね」


 金本は岡山に、指を指しながら笑う。


「うっ、うるさいなあ。金本だって、ギャルゲーの曲が弾きたくてギターを始めただけだろう?」


 つまり、金本たちはアニメ、ゲームの曲が弾いてみたくて始めたようなものだ。岡山に関しては、もはや言葉もない。


 ーー楽器を始めたのって、そんな理由でかよ。


 もはや、金本たちに期待することはないと思った僕はため息をつく。


「はあ……もういいですよ。先輩達にはガッカリだ、勝手にパソコンでオタクの感想文でも書いてください」


 僕は席を立ち、帰り支度を始める。教室の扉まで歩いた僕は、振り返って金本たちを見る。


 ーーこいつらとは考えがまったく違う、せめて僕がなんとかしないと。


 そう思った僕は、最後に彼らに向かって話す。


「僕だけでも、生徒会を納得させる活動をやります! 先輩たちには頼りません」


 僕は勢いよく扉を開け、最後に彼らに言い放った。


 金本たちは黙って、言い返したりもしてこない。


「先輩たちはなにもせず、そこで待っててください! 僕が軽音学部の要望を阻止しますから」


 そう言って僕は、教室を後にする。


「ちくしょうめ! こうなってしまったら、僕がやるしかない」


 なにをすべきかはすでに考えている。


 そのために僕は街のレンタルビデオ屋へ向かうことにした。


 店に入った僕は、すぐにアニメやゲームのコーナーに行く。


 棚に並べてあるDVDやCDを、手に持っているカゴに入れていく。


 自分でもびっくりするくらい、大量にポンポンと入れている。


「こうなればヤケだ! 覚えれるだけ覚えてやる」


 ぶつぶつと独り言を言いながら、レンタルしたものを持って自宅に帰る。


「まずは……アニメを見て勉強だ」


 自分でもなぜ、アニソンやゲームの歌を借りたかはわからない。


 金本たちが話していた内容に、少しだけ興味を持った僕は、ひたすらDVDを見る。


 何話かを見て、気に入ったシーンの音楽を聴いては、巻き戻しの繰り返す。


「楽譜がないな……どうしよう」


 アニメに使われている曲に楽譜はなく、覚えようにも難しい。


 パソコンを使い、検索してみてもなかなかヒットしない。


「うーむ、さすがにネットにはないよなあ」


 いろいろなサイトを探してみるが、それらしいものを見つけることができなかった。


 ーーそういえば、動画投稿サイトによく弾いてみたの動画があったな。


 動画投稿サイトに目をつけた僕はダメ元で探してみる。

 すると、数は少ないが該当する動画を見つけることができた。


「あるじゃないか! アニメのBGMを弾いてる動画が!」


 僕はとりあえずその動画を見ることにした。


「へえ、うまいな」


 曲に合わせて弾いているだけだが、うまく聴こえる。


 僕は動画を見ながら、その手の動きなどを確認しながら見ていた。


「なるほどなるほど、そうやって弾いているのか」


 ギターを持ち、真似るようにコードを押さえては弾く。


 フレーズのコード進行をメモしながら、その動作を繰り返していた。


 気がつくと、時間を忘れて寝る時間になってもやめることはなかった。


 その日から、学校へ行く時も曲を聴きながら登校だけでなく、授業中も教師の目を盗んではスマートフォンで動画を見たりしている。


 同好会にも顔を出すことがなく、放課後に自分のクラスでひっそりと練習をしていた。


 こういった日を、毎日のように繰り返すとあっという間に時間が過ぎていった。


「よし! だいたい、こんな感じでいいだろう」


 自宅で練習を終えた僕は、ギターを手入れして明日の準備をする。


「明日は、気合いを入れてやるぞ」


 とある計画のため、僕は早めに眠るのだった。

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