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第五十二話 「助っ人参上! その名はジャスティン馬場」

 僕たちの目の前には、変なカタコトで話す男がいた。


 どう見ても怪しすぎる男に、僕らはあたふたしている。


「懐カシーデスネ! アナタタチハ、センスがアリマース」


 一人ずつに、握手をして肩をたたかれる。


「あの……」


 金本はなにか言いたそうな顔で、男を見ている。


「オー! 失礼シマシタ、ワタクハこういう者です」


 名刺を取り出して、金本に手渡す。


 ーー有限会社フェアリーノーツ。


 名刺には社名が書いてあり、横に名前があった。


 「ジャスティン馬場……さんですか」


 奇抜な名前に、ますます怪しさを感じる。僕らは、後ろで輪になると、ヒソヒソと話し始める。


「なんですか……あの人、絶対にやばい人ですよ」


 僕は小さな声で、金本たちに話す。


「ああ……間違いない! あれは、変な人だ」


 チラチラとジャスティン馬場という男を見ながら、僕らは話し込む。


「うーん」


 話し込んでいる中、和田はなにかを考えている。


「どうしたんですか? さっきから考えているみたいですけど」


「いやあ、なんかどこかで聞いたことがある会社と名前で」


 名刺を見ながら、和田はなにかを思い出しているようだった。


「曲のことは、なにか知ってそうですよね? どうしましょう」


 曲を聴いて懐かしむくらいだ、もしかすると詳しいかもしれない。


 話をしてみるのもアリかなと、金本たちに尋ねる。


「そうだな、他にあてもないしな」


 覚悟を決め、僕らは尋ねてみることにした。


「ジャスティン馬場さん! このCDについて、なにかご存じですか?」


 そう質問をぶつけると、突然笑い始めた。


「あははは! ご存じもナニモ、コノ曲はデスネ」


 僕らが、口から出る言葉を待っていると、和田が大声を出す。


「あー! 思い出した!」


「うるさいぞ和田! せっかく、話を聞けるのに」


 話の腰を折られた金本は、にらみつけるように、和田を見ている。


「この人! すごい人だぞ」


 興奮しているのか、和田の手はバタバタしていた。


「ええー! ギャルゲーを作ってる人なの?」


 僕らは、和田からそう聞かされ、おどろく。


「そうだよ! フェアリーノーツって、ギャルゲーの中でも老舗だよ」


 ギャルゲーが世に広まったあたりから、すでに有名なゲーム会社。今はあまり知名度がなく、コアなファンがいるとかいないとからしい。


「それって、すごいんですか?」


 そういう情報を知らない僕は、金本たちに尋ねる。


「すごいに決まってるじゃないか! 君は、今までどんなゲームをしてきたんだ!」


 いきなり、和田の怒号が飛び出す。

普段と違って、僕は腰が抜けそうになった。


「ハハハ! そこまでスゴクナイですよー、和田ボーイ」


 僕らのやりとりを聞いていた、ジャスティンさんは笑いながら話していた。


「ココではアレダカラ、場所を変えまショウ!」

 

 ジャスティンさんに連れられ、僕らは近くの喫茶店に入った。


「なぜユーたちは、この曲を道路で流していたんデスカ?」


 席に座り、ジャスティンさんは僕らに尋ねてくる。


 僕らは、これまでのことをジャスティンさんに伝えた。


「ライブでやるために、まずは曲が使われたゲームを知ろうとしてたんです」


 金本が話し終えると、ガクッと首を落とす。


「けど……全然、見つからないんですよー。気になって気になって」


 黙って話を聞いていたジャスティンさんは、その口を開いた。


「ゲームが見つからないのは、当たり前デスネー」


「え? どうしてですか?」


 すかさず、僕は聞き返した。


「ほとんど、私の会社にあるからデース」


 このゲーム会社はいざ作ってみたものの、製作者がびっくりするほど売れなかったらしい。


 ゲーム自体が原因で、会社は倒産。その後、フェアリーノーツに譲渡した形になったという話だった。


「当時の開発スタッフはバラバラ、ホームページもないんデスヨ」


 再販する気もなく、在庫だけが残ってしまったと、淡々と話す。


 ーーガタッ!


 金本は席を立ち、床に手をつく。


「お願いします! 僕らに、そのギャルゲーを売ってください」


 金本の土下座に、喫茶店内がざわつく。


「いきなりなにしてるんだ! みっともない」


 荒木は土下座をやめさせようと、金本をひっぱる。


「んげっ!」


 金本は荒木の頭を床にうちつける。


「せっかく、ゲームが手に入るかもしれないんだ! おまえも土下座しろい!」


 ーー金本先輩……どんだけゲームが欲しいんだよ。


 もはや執念としか思えない光景に、僕と和田は言葉が出ない。


「なんとグレートな、ボーイたちでしょう!」


 ジャスティンさんは、感動したように、金本の手を握る。


「アナタたちの熱意に、ワタシは感動デース」


 そう言った後、どこかに電話をかけ始める。


 ーーピッ!


 電話を終え、ジャスティンさんは僕らに伝える。


「会社に連絡して、手配シマシタ! 全員分をご用意シマース」


 その言葉を聞いた金本は、喜んで飛び上がる。


「いやっほーい!」


 その様子を見ていたジャスティンさんは、どこか懐かしむ顔をしていた。


「どうかしたんですか?」


 気になった僕は、声をかけてみる。


「主題歌を歌っていたKORUKAさんも、あんな風に喜んでイマシタ……」


 そう話しかけているが、彼の顔はどこか、寂しげな表情だ。


「キミがそのCDを手にできたのは、きっと奇跡ダネ」


 本来はゲームを買った人が出す、はがきのお礼で配ったCD。

今では手に入れることが、不可能だと教えられる。


「きっと彼女も、自分の曲を演奏してもらえて喜んでいるデショウ」


「……は、はあ」


 言葉の意味がわからなかった僕は、そう一言しか言えなかった。


「よーし! ゲームをプレイしたら、さっそくバンドでコピーだ!」


 金本が僕らに声をかけると、ジャスティンさんが思いがけないことを言う。


「それなら、ワタシも協力するデース!」


 それは僕らにとって、驚くべきことだった。

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