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第四十五話 「他校に行こう! 放課後ピクニック」

 同好会でライブハウスに出ることが決まった。


 しばらく、曲を決めたりしていた僕らだったが。


「岩崎君……」


 部室がいつもより、静まり返っている。


 そんな中、金本が僕を見ている。


「ははは……」


「ははは……じゃないよ! まったく話が進んでいないよ」


 ーーライブハウスで演奏をする。


 そう言っていたのは僕だった。


 何日も過ぎたが、曲を決めることしかやることがない。


「連絡とか来てないのかい?」


 和田はそう僕に尋ねる。事実、その通りであった。


 あれ以降、鏡香から連絡が来ていない。それどころか、会えていない状態が続いていた。


「いやあ、連絡先とか交換してなくて」


 苦笑いをしながら、僕は答える。全員があきれながら、ため息をついた。


「せっかく僕がやる気になったんだぞ! どうするんだ」


 怒る金本をなだめながら、僕は頭の中でいろいろ考えていた。


 ーーどうしよう、このままでは同好会のモチベーションが。


 どうにかならないか、ひたすら頭をフル回転させるも答えが出ない。


「くそう! 連絡くらい交換するだろう、普通は」


 そう愚痴(ぐち)をこぼしていると、和田はなにかを考えている様子だ。


「なら、こちらから会いに行けばいいんじゃないか?」


 和田はそう僕に提案(ていあん)してくる。


「相手の学校はわかるのかい?」


「え? そういえば、竹谷場(たけやば)学園の制服を着てたっけな」


 以前に鏡香に会った時に、その学校の制服を着ていたことを思い出した。


 地元では一番に有名であるから、間違いはない。


 僕が和田に伝えると、金本は立ち上がる。


「よし! ならば、その竹谷場学園とやらに行こう」


 金本の言葉に僕はおどろく。


「マジですか? え、先輩たちも?」


「当たり前だろう! 僕は会長だよ? 一言、あいさつをしなければ」


 金本は鼻息を荒くして、そう答える。


「とか言いつつ、気になるから会ってみたいだけだったりしてな」


 小さく荒木がつぶやく。


「金本も人間の男だしな、どんなにアニメが好きでも……なあ?」


 岡山に荒木はそう話しかけている。


「やっ……やっぱり、現実の女の子と話してみたいよね」


 ーーこいつら、どんだけ女の子と話してないんだよ。


 やりとりを聞いていた僕は、そう思った。


「ええい! やかましい、とにかく全員で行くぞ」


 金本はカバンを持って、部室のドアへ向かった。


「今からですか? もう、部活が終わりますよ?」


 時計を見ると、すでに部活が終わる時刻になっていた。


 向こうの学校の時間がわからない僕は、金本を止める。


「むう、ならば明日だな! 授業が終わったら向かうとしよう」


 正直な話、あまり金本たちと会わせたくないのが僕の本音だった。


 暴走列車のような金本を止めることができなく、この日の部活が終わった。


 ーー明日か……。


 なにもおこらなければいいと思いながら、僕は自宅へ帰ることにした。


 自室に入って、僕はすぐにパソコンを立ち上げる。


「ライブハウスのマナーで、検索!」


 こういった知識がない僕は、インターネットで調べることにした。


 同好会での練習がストップしている今、こんなことしかできない。僕はパソコンを使い、関連するサイトに目を通す。


「当たり前なことだけど、あいさつは大事か……」


 いくつかサイトを見るが、内容はどれも同じだった。


 ーー同じ出演者や、スタッフさんにはあいさつを忘れない。


 過激なライブパフォーマンスをしない。


 一般的な常識を持って、楽しくライブをやろうと書かれていた。


「過激なパフォーマンスか……」


 僕はすぐに金本のことを思い浮かべた。


 これまでの行動を思い返せば、嫌でもそう思うだろう。


「ライブハウスで、暴走しなくちゃいいけどな」


 そんなことを思いながら、僕は引き続き情報を集めることにした。


 ーー次の日。


 授業を終え、僕は玄関へ急いだ。


 着くとすでに、金本たちが待っていた。


「よーし! みんな集まったな」


 全員が来たことを確認すると、金本はそう話した。


「先輩、本当に行くんですか?」


 鏡香がいる学校まで、全員で行く。


 ライブハウスの件で話を聞くために向かうのだが、僕は乗り気ではなかった。


 他校に行くこともそうだが、わざわざ全員で行く必要はないと思ったからだ。


 そんなことはお構いなしに、金本は先陣を切って歩き出した。


「あきらめよう……岩崎君」


 僕の肩をポンとたたいた和田は、あきれた顔をしている。


「なんでこんなことになったんだろう」


 ため息をついた僕は、先に歩く金本を追いかける。


「ところで、相手の学校ってどのへん?」


 しばらく道路を歩いていると、荒木は僕にそう聞いてくる。


 詳しい場所まで僕も知らなかったので、スマートフォンを取り出す。


「えっと、マップだと……」


 アプリを使い、僕は学校までのガイドを表示させた。


「マジかよ! 徒歩で一時間もかかるの?」


 到着までの時間を確認した荒木は、嫌そうな顔をしている。


「たかが一時間じゃないか! すぐだよすぐ」


 先頭で歩いていた金本は、そう話しかける。


「だりーよ、タクシーとかで行ったほうが早くないか?」


 持参した楽器を持っている僕らは少し疲れはじめていた。


「ベースって、意外に重たいんだよ! なんで楽器を持って行かなきゃなんだよ」


「仕方ないだろう! 学校に持ってきたんだから」


 練習がない日とわかってはいるが、習慣で持ってきてしまう。


 この日は、全員が楽器を持っていた。


 荒木はベースを持ってきてしまったことを後悔している様子だ。


「よし、この道を進もう」


 一人だけ冷静な和田は、スマートフォンを見ながら道を確認している。


「ははっ! やっぱり、歩くと疲れるよね」


 そう話す岡山は、パンをモグモグしながらゆっくり歩いていた。


「パンばっかり食べてるんじゃねーよ! それにおまえは、疲れる要素ないだろ」


 荒木はイライラしているようで、岡山に強くあたる。


 ーー岡山先輩はドラムスティックだけだしな……気持ちはわかる。


 そんなやりとりをしながら、歩くと目的の学校へ到着した。


「はあ、やっと着いた」


 疲れた僕らは、門の前で座り込んだ。


「はあはあ、疲れた……って、ええー?」


 突然、金本がおどろいた顔をしてさけんだ。


「うるせーな、なんだよ」


 荒木がそう言うと、金本が指を指している。


 僕らは金本の指先を見る。


「なんじゃこりゃー! でかすぎだろ」


 そこには、広くでかい校舎がそびえ立っていた。


 僕たちが通う学校の倍以上はあるであろう広さに、おどろく。


「こんな学校に通ってんのかよ、鏡香は……」


 あまりにも別次元な空間に、僕はそう口にする。


「やっ……やっぱり帰ろうよ、場違いだよ僕ら」


 学校に入ることにビクビクしている岡山が話しかけた。


「びびるな! これはあれだ、RPGによくある魔王城に挑む勇者一行だ」


 金本は頭が混乱しているのか、わけがわからない話をし始める。


「行くぞ! 敵は本能寺にあり」


 そうさけび出す金本は、震えながら門へ向かっていった。


「おい! せめて、普通な高校生の態度で入ってくれ」


 一人進む金本に、荒木はついて行った。


「僕らも中に入ろう」


 和田は僕に声をかけ、二人を追いかける。


 そして僕らは、鏡香がいるであろう学校に入っていった。

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